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「JuMBO 24」が連星の自由浮遊惑星であると確認 なぜ存在するのかは謎

sorae.jp / 2024年2月27日 22時0分

どの恒星の周りも公転していない「自由浮遊惑星」はどのように生成されるのでしょうか?従来の理論では惑星系内の破滅的なダイナミクスの結果であると考えられていますが、その場合には自由浮遊惑星は単独で存在することになります。

メキシコ国立自治大学のLuis F. Rodríguez氏、Laurent Loinard氏、そしてLuis A. Zapata氏の研究チームは、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」の観測で2023年に発見されたばかりの連星関係にある自由浮遊惑星の候補、全42組を「VLA (カール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群)」で観測しました。その結果、唯一「JuMBO 24」の観測に成功し、連星関係の自由浮遊惑星であるという追加の証拠が得られました。このような連星関係の自由浮遊惑星の生成は従来の形成論ではうまく説明できないため、興味深い観測対象として注目されています。

【▲図1: 連星の自由浮遊惑星「JuMBO 24」のイメージ画像。 (Image Credit: Gemini Observatory & Jon Lomberg) 】【▲図1: 連星の自由浮遊惑星「JuMBO 24」のイメージ画像(Credit: Gemini Observatory & Jon Lomberg)】 ■自由浮遊惑星に連星はない?

惑星と言うと太陽のような恒星を中心として公転している天体をイメージするかと思います。しかし実際には、恒星など特定の天体の周りを公転していない惑星と同程度の質量を持つ天体がいくつも見つかっています。これらは「自由浮遊惑星(Free-Floating Planet)」と呼ばれています。

自由浮遊惑星も元々は恒星の周りを公転する惑星として誕生したと考えられています。しかし、惑星同士が極端に接近して公転軌道が乱されると、一部の惑星は恒星の重力を振り切って放浪し始めると考えられています。このことから、自由浮遊惑星には「はぐれ惑星(Rogue Planet)」という別名もあります。

このような破滅的な重力相互作用を経験する惑星からは衛星や伴星が外されてしまい、自由浮遊惑星に連星は存在しないと考えられます。もしも連星同士の距離が近い場合には低確率で連星関係を保ったまま存在する可能性もありますが、そのような接近した連星を観測によって見分けることは現状では不可能と考えられています。これらの理由から、現状では自由浮遊惑星の連星を見つけることはできないと考えられています。

■多くの連星な自由浮遊惑星候補が見つかる 【▲図2: ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で観測されたJuMBOの一例 (JuMBO 32) 。見た目には連星であるように見え、木星の数倍程度の質量を持つことが示唆されていますが、実際に連星であるかどうかは決定的ではありませんでした。 (Image Credit: Samuel G Pearson & Mark J McCaughrean, arXiv (2023) 図3よりトリミング) 】【▲図2: ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で観測されたJuMBOの一例 (JuMBO 32) 。見た目には連星であるように見え、木星の数倍程度の質量を持つことが示唆されていますが、実際に連星であるかどうかは決定的ではありませんでした(Credit: Samuel G Pearson & Mark J McCaughrean, arXiv (2023) 図3よりトリミング)】

しかし、2023年にESA (欧州宇宙機関) のSamuel G Pearson氏とMark J McCaughrean氏は、連星の可能性がある自由浮遊惑星の候補「JuMBO(※)」を42組も発表しました。これらの候補は元々「ハッブル宇宙望遠鏡」によるオリオン座のトラペジウムの観測データの中に予備的な候補として存在していたもので、「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」で追加観測を行うことで発見され、有力候補に挙がりました。42組のうち2組は三重連星である可能性もあり、その全てが数十億km~数百億km離れた連星関係であると推定されます。

※…直訳すれば「二重木星質量天体」を意味する「Jupiter Mass Binary Object」の略です。

【▲図3: 今回観測を行ったカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群の写真。 (Image Credit: NRAO, AUI & NSF) 】【▲図3: 今回観測を行ったカール・ジャンスキー超大型干渉電波望遠鏡群の写真(Credit: NRAO, AUI & NSF)】

ただし、どの連星候補も現時点では発見が決定的とは言えないため、追加の観測が必要でした。そこで、Rodríguez氏ら3名の研究チームは「VLA」を使用して、これらJuMBOの追加観測を行いました。

その結果、唯一「JuMBO 24」についての観測データを得ることに成功しました。JuMBO 24は2つの自由浮遊惑星のそれぞれが木星の11.5倍程度の質量を持ち、互いに42億km(28au)離れていると推定されています。2023年の研究で挙げられた42組のJuMBOの中で、JuMBO 24は最も合計質量が重く、また地球からの距離が最も近いという性質を持ちます。この性質が唯一観測に成功した理由であるかどうかは、現時点では分かっていません。

【▲図4: VLAによるJuMBO 24の観測結果。青色が濃いほど電波が強く、わずかに縦長であることは、実際には2つの電波源に分離できることを示しています。白い四角はウェッブ宇宙望遠鏡によるJuMBO 24の位置。 (Image Credit: Luis F. Rodríguez, Laurent Loinard & Luis A. Zapata.) 】【▲図4: VLAによるJuMBO 24の観測結果。青色が濃いほど電波が強く、わずかに縦長であることは、実際には2つの電波源に分離できることを示しています。白い四角はウェッブ宇宙望遠鏡によるJuMBO 24の位置(Credit: Luis F. Rodríguez, Laurent Loinard & Luis A. Zapata.)】

VLAによる電波観測のデータを分析した結果、JuMBO 24の方向には2つの電波源があり、確かに2つの天体が存在することが示されました。このことから、JuMBO 24は連星関係にある自由浮遊惑星である可能性が高いことになります。先述の通り、連星の自由浮遊惑星の存在は従来の形成論では予言されておらず、JuMBO 24の存在は大きな謎です。謎を解明する上で、JuMBO 24は興味深い観測対象となるでしょう。

また、他の候補天体が観測できなかったのは、単に実在しないからという可能性もありますが、観測波長の違いが原因かもしれません。ウェッブ宇宙望遠鏡は赤外線領域で、VLAは電波領域で観測を行います。電波での観測は、他の波長と比べて解像度が低いため、電波ではノイズと区別ができずに見えないだけという可能性もあります。もしくは、VLAの性能が不十分であるか、観測した領域の環境と相性が悪く、観測ができなかったという可能性もあります。他の連星候補が観測できなかった理由については、後の追加観測で明らかになるでしょう。

■JuMBO 24にはさらなる多くの謎がある

連星であるという点以外にも、JuMBO 24には謎があります。例えば、JuMBO 24から放出される電波の強さは、赤外線放射から予測される自由浮遊惑星の電波放射よりもずっと高い値です。連星が強い電波放射の理由なのか、それとも他の性質があるのかは謎です。

また、VLAとウェッブ宇宙望遠鏡の間の観測波長であるミリ波やサブミリ波で観測する「ALMA」の観測データの分析では、JuMBO 24を含む全てのJuMBOが見つかりませんでした。これは単純に観測データの精度が不足しているのが理由である可能性があるため、将来の観測によって興味深いデータが得られるかもしれません。これからの観測が待たれるでしょう。

 

Source

Luis F. Rodríguez, Laurent Loinard & Luis A. Zapata. “A Radio Counterpart to a Jupiter-mass Binary Object in Orion”. (The Astrophysical Journal Letters) Samuel G Pearson & Mark J McCaughrean. “Jupiter Mass Binary Objects in the Trapezium Cluster” (arXiv) Corrina C. Jaramillo Feldman & Jill Malusky. “Astronomers Discover Jupiter-sized Objects Drawn into Each Other’s Orbit”. (National Radio Astronomy Observatory)

文/彩恵りり

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