JAXA月探査機「SLIM」4回目の越夜後は通信に応答なし 翌月に再挑戦へ
sorae.jp / 2024年5月31日 11時23分
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年5月28日(日本時間・以下同様)、X(旧Twitter)の小型月着陸実証機「SLIM」プロジェクト公式アカウントにて、4回目の夜を越したとみられるSLIMからの信号受信を試みたものの応答はなく、今月の運用を終了すると発表しました。JAXAは翌月に再度運用を試みるとしています。【最終更新:2024年5月30日12時台】
【▲ 参考画像:小型月着陸実証機「SLIM」から放出された探査ロボット「LEV-2(SORA-Q)」のカメラで撮影された画像。大きく傾きつつ接地した状態のSLIMが右奥に写っている。画像は試験画像で、もう1機の探査ロボット「LEV-1」経由の試験電波データ転送により取得されたもの(Credit: JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学)】SLIMは2024年1月20日0時20分頃に日本の探査機として初めて月面へ軟着陸することに成功しました。ただ、2基搭載されているメインエンジンの1基で着陸直前に生じたトラブルによって想定外の速度や姿勢で接地することになったため、機体は太陽電池を西に向けて逆立ちしたような姿勢で安定しています。
着陸直後に電力を得られなかったSLIMは一旦休眠状態に置かれましたが、太陽光が西から当たって太陽電池から電力を得られるようになった2024年1月28日以降は「マルチバンド分光カメラ(MBC)」による岩の観測が行われ、着陸地点が夜を迎えることから1月31日に再び休眠状態に入りました。
MBCは月のマントルに由来するかんらん石(橄欖石)を含んだ岩の分光観測(電磁波の波長ごとの強さであるスペクトルを得るための観測)を目的としてSLIMに搭載された観測装置です。月と地球のかんらん石を比較することで月の形成と進化の謎に迫る鍵が得られるかもしれないと期待されていますが、MBCの観測によってかんらん石を示すデータが得られたことが2024年の日本地球惑星科学連合大会(5月27日開催)で発表されたと報じられています。
その後は2024年2月25日に1回目の越夜(夜を越すこと)に成功(3月1日未明から休眠)、3月27日には2回目の越夜に成功(3月30日未明から休眠)、4月23日には3回目の越夜に成功(4月29日未明から休眠)したことがそれぞれ確認されています。越夜後は着陸直後にシステムから切り離されたバッテリーや温度センサーの一部に不調が出始めていたものの、状況確認と並行して航法カメラで撮影された月面の画像がその都度公開されてきました。
【▲ 参考画像:3回目の越夜成功後にSLIMの航法カメラで撮影された月面の様子(非圧縮データ)。JAXAがXのSLIM公式アカウントを通して2024年4月26日に公開(Credit: JAXA)】JAXAによると、4回目の越夜を終えてSLIMの電力が回復していると想定される2024年5月24日夜から27日夜にかけて復帰のためのコマンドを送信したものの、SLIMからの電波は確認されませんでした。着陸地点周辺の日が暮れて発電量も低下することから、27日夜をもってSLIMの5月の運用は終了しています。
もともとSLIMは越夜を想定して設計されてはいないことから、永久的な故障が発生した可能性もあるようです。また、2024年5月は大規模な太陽フレアが連続して発生し、地球では世界各地で低緯度オーロラが観測されましたが、SLIMから応答がなかったこととの関係は不明とされています。ただし、一時的な故障が起きた可能性も考えられることから、着陸地点の夜間に電源がオフになることでシステム全体がリセットされて再起動することに期待し、5回目の越夜を終える翌月に再度運用を試みるということです。
SLIMについては新しい情報が発表され次第お伝えします。
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Source
小型月着陸実証機SLIM (X) NHK – 探査機「SLIM」月面観測データから月の起源探る重要な岩石確認文・編集/sorae編集部
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