火星のオリンポス山に降りた霜 ESA探査機の観測で初めて発見される
sorae.jp / 2024年6月16日 11時2分
こちらは火星の周回軌道から撮影された火星最大の火山「オリンポス山」(Olympus Mons、直径約610km・標高約21km)の姿。欧州宇宙機関(ESA)によると、山頂の巨大なカルデラの内部やその周辺を白く見せているのは水の霜です。“山頂が白く染まった山”と聞くと日本に住む私たちにとっては馴染みのある景色ですが、霜は降りないと考えられていた火星の赤道付近に位置するオリンポス山で水の霜が見つかったのは、ESAによれば今回が初めてです。
【▲ 火星探査機「Mars Express」の高解像度ステレオカメラ「HRSC」で2022年11月30日に撮影された火星のオリンポス山(Credit: ESA/DLR/FU Berlin; Acknowledgements: A. Valantinas)】発見を報告したのはベルン大学の博士課程学生だったAdomas Valantinasさん(現在はブラウン大学の博士研究員)を筆頭とする研究チームです。2016年に火星へ到着したESA主導の火星探査ミッション「ExoMars(エクソマーズ)」の火星探査機「Trace Gas Orbtiter(TGO、トレース・ガス・オービター)」に搭載されているカラー・ステレオ表面撮像システム「CaSSIS」の高解像度画像を2018年から分析してきたValantinasさんは、火星の北半球が冬から春へと移り変わりつつあった2022年11月25日に撮影された朝のオリンポス山(現地時刻は7時11分)の画像に写る青みがかった堆積物を発見しました。
冒頭の画像はCaSSISの撮影から5日後となる2022年11月30日に、ESAの火星探査機「Mars Express(マーズ・エクスプレス)」に搭載されている高解像度ステレオカメラ「HRSC」を使って撮影された朝のオリンポス山(現地時刻は7時20分)です。CaSSIS、HRSC、それにTGOの分光器「NOMAD」の観測データを分析した研究チームは、オリンポス山をはじめアルシア山(Arsia Mons)、アスクレウス山(Ascraeus Mons)、ケラウニウス・トルス(Ceraunius Tholus)といったタルシス地域の火山の山頂で水の霜を発見するに至りました。今回の研究では最初に霜が見つかった画像から数えて、最終的に3万枚以上の画像が分析されたといいます。
【▲ 火星探査機「Mars Express」の高解像度ステレオカメラ「HRSC」で取得したデータと数値標高モデルを使って作成されたオリンポス山の斜視図。縦方向は5倍に強調されている(Credit: ESA/DLR/FU Berlin; Acknowledgements: A. Valantinas)】霜の厚さは100分の1mm(10μm)と薄いものの広大な面積を覆っており、地表と大気の間を循環する水の量は1日あたり約15万トン、オリンピックサイズのプール約60個分に相当すると推定されています。
Valantinasさんによると、昼間は薄い大気と太陽光の複合的な作用によって低地の表面と山頂の双方で気温が比較的高く保たれるため、火星の赤道付近に霜が存在することはあり得ないと考えられていました。それにもかかわらずオリンポス山などに霜が降りているのは、高くそびえるタルシスの山々の上空では特異な大気循環が起きていて、窪地となっているカルデラの内部に独特な微小気候(局地的な気候)を生じさせているからではないかと考えられています。
また、タルシスの山々の霜は寒い季節に日の出前後の数時間しか存在せず、日が高くなるにつれて消えてしまうので、観測できる季節と時間帯が限られます。Valantinasさんはそうした時期的な条件に加えて、火星探査機の多くは太陽と同期した軌道を周回しており、地上の早朝を含め一日中観測できるTGOやMars Expressと違って午後の時間帯にしか観測を行えないことも、今まで霜が見つからなかった理由として指摘しています。
ExoMarsのHRSCで撮影されたオリンポス山の画像はESAから2024年6月10日付で公開されています。
Source
ESA – Frosty volcanoes discovered in Mars’s tropics Brown University – In a significant first, researchers detect water frost on solar system’s tallest volcanoes Valantinas et al. – Evidence for transient morning water frost deposits on the Tharsis volcanoes of Mars (Nature Geoscience)文・編集/sorae編集部
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