1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. 環境・自然・科学

宇宙ゴミを出さない人工衛星を作る時が来た ESAが民間3社と衛星バス開発で契約締結

sorae.jp / 2024年7月15日 16時56分

運用を終えた人工衛星や打ち上げに使われたロケットの一部といった「宇宙ゴミ(スペースデブリ)」の数は年々増加傾向にあり、地球周回軌道上の人工衛星や宇宙ステーションと衝突するリスクが高まると予想されます。

その対策として注目を浴びているのが、宇宙ゴミを除去する技術です。ミッションが終了した人工衛星や宇宙ステーションを適切に廃棄することは、宇宙ゴミの増加を食い止める手段となり得るでしょう。

関連記事
・人工衛星が宇宙ゴミになるのを防ぐために展開する「帆」を開発中(2020年6月24日)
・ロケットラボ、アストロスケールの商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」の軌道投入に成功 スペースデブリへの接近試みる(2024年2月21日)

欧州宇宙機関(ESA)は2024年6月25日に、エアバス・ディフェンス・アンド・スペース、OHB、タレス・アレーニア・スペースといった欧州を拠点とする宇宙開発企業3社との間で、ゼロデブリ憲章(Zero Debris Charter)に準拠する地球低軌道(LEO)用衛星バス(satellite bus)の開発に関する契約を締結しました。

【▲ 地球周回軌道に残る宇宙ゴミが移動するイメージ(Credit: ESA)】 ■約1億3000万個と推定される宇宙ゴミの数

ESAによると、2024年6月18日現在の宇宙ゴミの数は、大きさが10cmを上回るものは約4万500個、1cm~10cmは約110万個、1mm~1cmは約1億3000万個に及ぶと推定されています。

また、記録が開始された1961年以降、560件以上の軌道上破砕イベントが発生した模様です。そのうち衝突に関連するイベントは7件のみで、大半は宇宙機および打ち上げロケット上段の爆発に起因しています。不要になった人工衛星やロケット上段のタンクや燃料パイプに残る残留燃料などが経年劣化によって漏れ出たり混合を引き起こしたりすることで自己着火し、爆発に至るのだといいます。

【▲ 宇宙環境内の人工物(artificial objects)の数の推移とその内訳。宇宙空間に打ち上げられた人工衛星の数の増加に伴い、宇宙ゴミ(Debris)もまた年々増加傾向にある(Credit: ESA)】【▲ 宇宙環境内の人工物(artificial objects)の数の推移とその内訳。宇宙空間に打ち上げられた人工衛星の数の増加に伴い、宇宙ゴミ(Debris)もまた年々増加傾向にある(Credit: ESA)】

ESAはこうした宇宙ゴミが人工衛星や宇宙ステーションなどと衝突するリスクを鑑み、宇宙ゴミ問題解決の指針となる「ゼロデブリ憲章(Zero Debris Charter)」を2023年6月22日付で発表しました。ゼロデブリ憲章によると、2030年までに宇宙ゴミを大幅に削減し、ミッションが終了あるいは失敗した場合には残存した人工衛星の機体をすみやかに軌道から取り除き、新たな宇宙ゴミの産生を食い止める「デブリニュートラル(debris-neutral)」を目指すとしています。ESAはその一環として、宇宙ゴミを発生させない人工衛星の開発を目指そうとしている模様です。

■宇宙ゴミを出さない人工衛星実現に向けてESAが描く青写真

ESAが宇宙ゴミを発生させない人工衛星の実現に向けて描いている青写真が、推進システムや電源システム、姿勢制御システムなどから構成される「衛星バス」の開発のようです。ESAが2023年10月に公表した「ESA宇宙ゴミ緩和要件(Space Debris Mitigation Requirements)」によると、地球周回軌道上の宇宙ゴミとの衝突を回避するために、不要となった人工衛星の「不動態化(パッシベーション)」(※passivation、人工衛星の燃料を空にすること)や脱軌道による廃棄が求められるようです。また、人工衛星の運用中から廃棄されるまでのあいだに、脱軌道やパッシベーションが失敗しなかったかなど健康状態の監視を続け、状況次第では人工衛星を除去するサービスによって速やかに取り除かれる必要があるとしています

こうしたゼロデブリ憲章に準拠した衛星バスの開発は欧州の宇宙開発企業によってすでに着手されています。たとえば、タレス・アレーニア・スペース社は「MILA(Multi-Mission Platform)」生産ラインで宇宙ゴミを排出するリスクを極力下げた衛星バスの製造システムを構築しており、ゼロデブリ憲章に準拠するよう、このシステムを起点に大気圏再突入の際に安全に燃焼される衛星バスの開発を目指すとしています。

■インドも宇宙ゴミを出さない宇宙ミッションの実現を目指す

宇宙ゴミを発生させない人工衛星の開発はESAが主導するプロジェクトだけではありません。インドは2024年4月に「宇宙ゴミフリー宇宙ミッション(Debris-Free Space Missions: DFSM)」を公表し、脱軌道等によって宇宙ゴミを出さない宇宙ミッションの達成を他国の宇宙機関と協力して2030年までに目指すとしています。

宇宙開発に取り組むのは欧州やインドだけではありません。その他の“宇宙強国”による宇宙ゴミ対策の動向からも目が離せません。

関連記事
・及び腰だった米国がスペースデブリ除去事業で主導権を果たすには?(2022年3月15日)

 

Source

ESA – Time to build zero-debris satellites ESA – The Zero Debris Charter ESA – About space debris ESA – Space debris by the numbers ESA – New Space Debris Mitigation Policy and Requirements in effect ESA – ESA Space Debris Mitigation Requirements ESA – Space debris: assessing the risk ESA – Zero Debris Charter Indian Space Research Organisation – India’s Intent on Debris-Free Space Missions – Explained Space.com – India aims to achieve ‘debris-free’ space missions by 2030 Thales Alenia Space – New contract with ESA to develop “zero-debris” platform Thales Alenia Space – M.I.L.A PLATFORM PRODUCT LINE

文/Misato Kadono 編集/sorae編集部

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください