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ESA木星氷衛星探査機「Juice」月と地球でのスイングバイまであと2週間

sorae.jp / 2024年8月8日 11時5分

2023年4月に打ち上げられた欧州宇宙機関(ESA)の木星氷衛星探査機「Juice(Jupiter Icy Moons Explorer)」は、その名の通り木星の衛星エウロパ・ガニメデ・カリストを主な探査目標としています。Juice探査機は木星系へ直接向かうのではなく、地球(月を含む)と金星で合計4回のスイングバイ(太陽を公転する惑星などの重力を利用して軌道を変更する方法)を繰り返して徐々に軌道を変更していく予定ですが、その1回目となる月-地球スイングバイの実施日がいよいよ近付いてきました。【最終更新:2024年8月7日11時台】

【▲ 地球スイングバイを行う欧州宇宙機関(ESA)の木星氷衛星探査機「Juice」の想像図(Credit: ESA)】【▲ 地球スイングバイを行う欧州宇宙機関(ESA)の木星氷衛星探査機「Juice」の想像図(Credit: ESA)】

Juiceはヨーロッパ初の木星系探査ミッションで、日本語では「木星氷衛星探査計画」と呼ばれています。2031年7月に木星系へ到着してからは木星を周回しつつ3つの氷衛星をフライバイ観測し、2034年12月以降はガニメデの周回軌道に入って観測を行う計画です。ミッションには宇宙航空研究開発機構(JAXA)、アメリカ航空宇宙局(NASA)、イスラエル宇宙局(ISA)も参加して観測機器を提供しています。

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【▲ 2024年8月の月-地球スイングバイにおける飛行経路とタイムラインを示した図(日付は中央ヨーロッパ夏時間)(Credit: ESA)】【▲ 2024年8月の月-地球スイングバイにおける飛行経路とタイムラインを示した図(日付は中央ヨーロッパ夏時間)(Credit: ESA)】

ESAによると、Juice探査機はまず2024年8月20日6時16分頃(日本時間・以下同様)に月の表面から700kmまで接近しながら通過。続いて約24時間後の8月21日6時57分頃には地球の表面から6807kmまで接近しながら通過していきます。地球と月を同時に利用してスイングバイを行うのは今回が史上初とされています。このスイングバイによって太陽を周回するJuice探査機の速度は減速し、1年後の2025年8月に予定されている金星スイングバイに向けた軌道に入ります。

地球よりも外側を公転する木星へ向かうには速度を増速させるほうが直感的には適しているように思われますが、仮に次のスイングバイを火星で行うとすると待機する時間が長くなってしまうため、今回の月-地球スイングバイで減速することは実際には効率的なのだといいます。Juice探査機の軌道はミッションの専任チームによって過去20年以上にわたって慎重に検討が重ねられており、ESAは間もなく実施されるこのスイングバイを「内部太陽系をショートカットする方法」と表現しています。

【▲ 2024年8月の月-地球スイングバイにおける月スイングバイの経路とタイムラインを示した図(日時は中央ヨーロッパ夏時間)(Credit: ESA)】【▲ 2024年8月の月-地球スイングバイにおける月スイングバイの経路とタイムラインを示した図(日時は中央ヨーロッパ夏時間)(Credit: ESA)】 【▲ 2024年8月の月-地球スイングバイにおける地球スイングバイの経路とタイムラインを示した図(日時は中央ヨーロッパ夏時間)(Credit: ESA)】【▲ 2024年8月の月-地球スイングバイにおける地球スイングバイの経路とタイムラインを示した図(日時は中央ヨーロッパ夏時間)(Credit: ESA)】

複雑な月-地球スイングバイは一歩誤ればミッションの終了にもつながりかねません。Juice探査機のオペレーションマネージャーを務めるIgnacio Tancoさんはその危うさについて「とても狭い廊下を非常に素早く通過するようなもの、道幅の余裕が数mmしかないのにアクセルを限界まで踏み込むようなものです」とコメントしています。すべてのマヌーバ(姿勢や軌道の制御)においてリアルタイムで高い精度が求められることから、中央ヨーロッパ夏時間2024年8月17日から22日までの期間中はJuice探査機と地上局の間で継続的に通信が行われます。オペレーターはJuice探査機から送られてくるデータを昼夜問わず常時注意深くチェックし、正しい飛行経路を維持するために必要な微修正を行うことになります。

【▲ 木星氷衛星探査機「Juice」の月-地球フライバイの予告動画】
(Credit: ESA)

なお、スイングバイ中はJuice探査機に搭載されているカメラで撮影が行われる他に、10の科学機器も起動されます。一部の機器については木星系へ到着する8年間の旅路の間で特定の測定が行える唯一の機会だといい、科学者とエンジニアにとっては機器の較正や残された問題の解決などを行う機会になります。特に、氷衛星の表面下9kmまでを探査する氷衛星探査レーダー「RIME(Radar for Icy Moon Exploration)」のデータは他の機器に由来するノイズに乱されているといい、ノイズが及ぼす影響を確認して問題を修正するアルゴリズムを開発するために、月スイングバイではRIMEが8分間にわたって単独で観測を行うということです。

 

Source

ESA - Juice’s lunar-Earth flyby: all you need to know ESA - Juice lunar-Earth flyby media kit

文・編集/sorae編集部

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