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Cygnus補給船「NG-21」ISSにドッキング成功 日本の超小型衛星も搭載

sorae.jp / 2024年8月9日 17時0分

アメリカの民間企業Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)が運用する「Cygnus(シグナス)」補給船運用21号機は、打ち上げとISS(国際宇宙ステーション)へのドッキングに成功しました。Cygnusによる補給ミッション「NG-21」では、ISSに滞在中の宇宙飛行士が利用する生活用品や食料、実験機器など合計3857kgの補給物資を運搬します。物資には日本の大学や宇宙コミュニティがそれぞれ開発・製作した超小型衛星も搭載されています。

■打ち上げからドッキングまで 【▲ ケープカナベラル宇宙軍基地第40発射施設から打ち上げられるファルコン9(Credit: SpaceX)】【▲ ケープカナベラル宇宙軍基地第40発射施設から打ち上げられるファルコン9(Credit: SpaceX)】

Cygnusを搭載したSpaceX(スペースX)の「Falcon 9(ファルコン9)」は、2024年8月5日0時2分(日本時間・以下同様)にアメリカ・フロリダ州にあるケープカナベラル宇宙軍基地第40発射施設から打ち上げられました。発射14分40秒後、Falcon 9の第2段機体から分離に成功しました。

しかし、NASA(アメリカ航空宇宙局)によると同日0時44分に予定されていたCygnusによる最初の燃焼は燃焼シークエンスに入るのが遅れたため実施されませんでした。さらに再燃焼が1時34分に行われましたが、わずかに低い初期圧力状態のため、エンジン点火の直後に中止となりました。燃焼は予定通り実施されませんでしたが、3時22分にCygnusの太陽電池パドルの展開に成功しています。

その後、Cygnusの運用を行うNorthrop Grummanのエンジニアにより燃焼計画が再び作られ、無事に燃焼を実施。Cygnusは予定していた軌道に投入されました。

そしてCygnusは8月6日16時10分にISSのロボットアーム「Canadarm2」を使用して、「Unity(ユニティ)」モジュールの地球側へ結合されました。ISSに滞在しているNASAの宇宙飛行士Matthew Dominick氏がキャッチし、NASAの宇宙飛行士Jeanette Epps氏が作業支援を行いました。Cygnusは2025年1月にISSから分離し、大気圏に突入してNG-21ミッションを終える予定です。

【▲ ISSへドッキングするためロボットアームに捕捉されるCygnus(Credit: NASA)】【▲ ISSへドッキングするためロボットアームに捕捉されるCygnus(Credit: NASA)】 ■NG-21の概要と搭載された実験機器

CygnusはNASAの商業輸送サービス(Commericial Resupply Service: CRSおよびCRS-2)の契約の下で、ISSに滞在中の宇宙飛行士が使用する生活用品、食料、実験器具などの補給物資を定期的に輸送するために運用されています。NG-21では与圧貨物3843kg・非与圧貨物14kgの補給物資を輸送します。またISSへの結合後、Cygnusはサービスモジュール(Service Module)に搭載されているエンジンを用いて、ISSのリブースト(軌道上昇)も実施するということです。

【▲ こちらは重力が多孔質媒体の間を流れる気体と液体の動きにどのように影響するかを調査する実験器具。(Credit: NASA)】【▲ こちらは重力が多孔質媒体の間を流れる気体と液体の動きにどのように影響するかを調査する実験器具。(Credit: NASA)】

NG-21に搭載された与圧貨物の中には実験機器もあり、ISSに搬入されてさまざまな実験を行います。その一つ「The Packed Bead Reactor Experiment: Water Recovery Series」は、重力が多孔質媒体(多数の小さな穴が空いた媒体のこと)の間を流れる気体と液体の動きにどのように影響するかを調査する実験です。またSTEM(科学・技術・工学・数学)教育プロジェクトの一環として宇宙飛行士がISS上で行う実験機器も搭載されました。この実験では宇宙飛行士が1セント硬貨、六角ナット、2つの透明な風船を用いて、求心力(向心力)が音に与える影響を実験します。このほかにも微小重力環境下でヒト造血幹細胞を生成する実験や宇宙飛行がDNA修復メカニズムに与える影響を調査する研究も行われます。

■日本の超小型衛星もISSへ

NG-21には日本の学生や宇宙コミュニティが開発した超小型衛星も搭載されました。搭載された衛星は千葉工業大学の学生が開発した「SAKURA(サクラ)」、佐賀県の高校生が開発した「SaganSat(サガンサット)0号機」、宇宙コミュニティ「コスモ女子」が開発した「Emma(エマ)」です。これらの衛星は今後、ISSから放出される予定です。特色あるミッションを行う超小型衛星もあります。ここでは3機の衛星を紹介します。

SAKURAは、同大学で開講されている「高度技術者育成プログラム」に参加する学生が開発しました。大きさは1Uサイズ(1辺10cmの立方体)で、ミッションは地球観測を行います。2021年に開講した同プログラムでは学生が衛星の設計・製造・試験・運用体験を行い、技術者の育成を目指しています。

【▲ 千葉工業大学の学生が開発した超小型衛星「SAKURA」。(Credit: 千葉工業大学)】【▲ 千葉工業大学の学生が開発した超小型衛星「SAKURA」。(Credit: 千葉工業大学)】

SaganSat0号機は、佐賀県とJAXA(宇宙航空研究開発機構)が連携する教育プログラム「JAXAGA SCHOOL(ジャクサガスクール)」に参加する高校生が開発しました。衛星では360度撮影できるカメラを2台用意し、それぞれの写真を合成して720度の映像を作り出すミッション、赤外線カメラを利用し地球観測を行うミッション、宇宙空間でガンマ線を測定し音に変換することで地上と宇宙での放射線の違いを表現するミッションなど特色ある活動が行われます。

またEmmaはコスモ女子アマチュア無線クラブのメンバーにより開発されました。同クラブによると、宇宙開発経験のない女性が中心となるコミュニティの人工衛星打ち上げは日本で初ということです。Emmaは神社にある「絵馬」から名付けられています。ミッションはクラウドファウンディングで募集した願いごとを衛星に搭載する「宇宙絵馬」や衛星から受信したデータを利用した「おみくじ」などが行われます。

 

Source

NASA - NASA Science, Cargo Launch on 21st Northrop Grumman Mission to Station NASA - Overview for NASA’s Northrop Grumman 21st Commercial Resupply Mission NASA - NASA’s Northrop Grumman CRS-21 NASA - Space Station Blog SpaceNews - Cygnus spacecraft suffers glitches after launch 千葉工業大学 - 高度技術者育成プログラム:学生製造の超小型衛星『SAKURA』の打ち上げ成功! 千葉工業大学 - 高度技術者育成プログラム コスモ女子アマチュア無線クラブ - 未経験女性が人工衛星打ち上げ成功!コスモ女子アマチュア無線クラブの挑戦はまだまだ続く! コスモ女子アマチュア無線クラブ(PR TIMES STORY)- 宇宙業界未経験の女性たちが、人工衛星打ち上げへ〜女性中心の宇宙コミュニティ「コスモ女性アマチュア無線クラブ」の道程〜 コスモ女子アマチュア無線クラブ - 活動内容 佐賀県立宇宙科学館 - 超小型衛星サガンサットが完成しました

文/出口隼詩 編集/sorae編集部

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