スペースX、新型ロケット「スターシップ」の第5回飛行試験を10月13日以降に実施へ
sorae.jp / 2024年10月11日 11時56分
アメリカの民間宇宙企業SpaceX(スペースX)は2024年10月8日付で、同社が開発中の新型ロケット「Starship(スターシップ)」による無人での第5回飛行試験を行うと発表しました。注目の飛行試験は2024年10月13日以降に実施される予定です。
Starshipとは?Starshipは1段目の大型ロケット「Super Heavy(スーパーヘビー)」と2段目の大型宇宙船「Starship」からなる全長121mの再使用型ロケットで、打ち上げシステムとしてもStarshipの名称で呼ばれています。SpaceXはアメリカ・テキサス州ボカチカの同社施設「Starbase(スターベース)」を拠点にStarshipの開発を進めていて、これまでにSuper Heavyも含めたStarship打ち上げシステムの統合飛行試験(Integrated Flight Test: IFT)を2023年4月から2024年6月にかけて4回実施しています。
【▲ SpaceXが開発中の新型ロケット「Starship(スターシップ)」(Credit: SpaceX)】SpaceXによれば、両段を再使用する構成では100~150トンのペイロード(搭載物)を打ち上げ可能。2段目のStarship宇宙船は単体でも準軌道飛行(サブオービタル飛行)が可能で、地球上の2地点間を1時間以内に結べるとされています。
また、アメリカ航空宇宙局(NASA)は同局が推進する月探査計画「Artemis(アルテミス)」の月着陸船「HLS(Human Landing System、有人着陸システム)」としてStarshipを採用していて、同計画初の有人月面着陸を行う「Artemis III(アルテミス3)」ミッションで使用される予定です。
【▲ 参考画像:月に着陸したHLS(有人着陸システム)仕様のスターシップを描いた想像図(Credit: SpaceX)】関連記事
・スペースX、新型ロケット「スターシップ」第4回飛行試験実施 宇宙船の軟着水に成功(2024年6月7日)
・スペースX、新型ロケット「スターシップ」第3回飛行試験実施 宇宙船は大気圏再突入の段階まで飛行(2024年3月15日)
・スペースX、新型ロケット「スターシップ」第2回飛行試験実施 宇宙船は宇宙空間到達後に喪失か(2023年11月20日)
・スペースX、スターシップの無人飛行試験実施 高度39kmに到達も4分後に飛行中断(2023年4月21日)
Starship宇宙船のインド洋への着水、そしてSuper Heavyブースターのメキシコ湾への着水に成功した第4回飛行試験に続く今回の第5回飛行試験では、SpaceXは再使用に向けて大きなステップを踏み出します。Starship宇宙船は前回に続きインド洋に着水しますが、Super Heavyブースターは発射台に戻り、タワーに備え付けられているアームを使って空中でキャッチするという、SFさながらの方法が実証される予定なのです。
【▲ 参考画像:発射台のアームでキャッチされる大型ロケット「Super Heavy」。SpaceXが公開している動画「Starship Mission to Mars」から(Credit: SpaceX)】この方法でSuper Heavyブースターを帰還させるには、全長70mの巨大な機体をタワーに衝突させず、アームの可動範囲内へ精密に誘導しなければなりません。海外メディアのSpaceNewsは、SpaceXで建設・飛行信頼性担当バイスプレジデントを務めるWilliam Gerstenmaier氏が第4回飛行試験のSuper Heavyブースターについて「0.5cmの精度で着水した」と発言したことを伝えています。
関連記事
・スペースXが大型ロケット「スーパーヘビー」着水の瞬間を捉えた動画を公開(2024年6月11日)
Gerstenmaierさんは「タワーに戻るチャンスは十分あると考えている」と語ったとも伝えられており、第5回飛行試験ではブースターの空中キャッチの成否が間違いなく注目ポイントになるでしょう。
【▲ 参考画像:第4回飛行試験時に降下中のStarship宇宙船からStarlink経由で送られた映像。フラップの1つが大気圏再突入時の高熱で損傷していく様子が写し出された。SpaceXのライブ配信より(Credit: SpaceX)】一方、Starship宇宙船は大気圏再突入時の熱から機体を守る熱防護システムがアップグレードされました。第4回飛行試験では機体に4つ備わっている姿勢制御用のフラップの1つが再突入中に損傷する様子がライブ配信でも確認できましたが、第5回飛行試験で使用される機体では耐熱タイルやフラップの保護の強化といった改良に1万2000時間以上が費やされたといいます。Starship宇宙船がどこまで加熱に耐えられるかどうかも第5回飛行試験の注目ポイントです。
打ち上げ日は先送りされる可能性も前述の通りStarship第5回飛行試験は早ければ2024年10月13日にも実施される予定ですが、アメリカ連邦航空局(FAA)の承認プロセス次第でさらに先になる可能性もあります。SpaceNewsによれば、FAAは他の省庁との調整が必要な環境審査を理由に2024年11月下旬までライセンスを発行する準備はできないと以前通知しており、省庁間の審査プロセスは予想よりも早く進んでいるとみられるものの、10月13日に間に合う保証はない模様です。
それでも、今から1か月半ほどの間に行われると思われる飛行試験。実用化されれば宇宙輸送に大きな変革をもたらし、SpaceXのCEOであるElon Musk氏が掲げた「人類を多惑星種にする」という目標の実現にも近付くStarshipの第5回飛行試験に注目です!
【▲ 参考画像:アメリカ・テキサス州にあるSpaceX(スペースX)の施設「Starbase(スターベース)」から第4回飛行試験のために打ち上げられた新型ロケット「Starship(スターシップ)」(Credit: SpaceX)】
Source
SpaceX - Starship's Fifth Flight Test SpaceNews - NASA “really looking forward” to next Starship test flight文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
#スペースX #スターシップ #スーパーヘビー
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