208ギガピクセルのパノラマ画像 ESAがユークリッド宇宙望遠鏡の観測データから作成
sorae.jp / 2024年10月18日 21時29分
こちらは「はと座(鳩座)」の方向約4億2000万光年先の渦巻銀河「ESO 364-36」です。拡散するように片側へ大きく広がった渦巻腕(渦状腕)を持つその形態には、ドレスをまとったダンサーのような独特の優雅さを感じます。
【▲ 欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「Euclid」が観測した渦巻銀河「ESO 364-36」。2024年10月15日公開(Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, CEA Paris-Saclay, image processing by J.-C. Cuillandre, E. Bertin, G. Anselmi)】 ESAが208ギガピクセルのパノラマ画像を公開欧州宇宙機関(ESA)が2024年10月15日付で公開したこの画像は、2023年7月に打ち上げられたESAの「Euclid(ユークリッド)宇宙望遠鏡」が取得した観測データから作成されました。
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実は、ESAがこの日に公開したのは満月500個分以上の範囲(132平方度)をカバーする208ギガピクセルのパノラマ画像で、天の川銀河の星や銀河など約1億の天体が含まれています。冒頭に掲載したESO 364-36の画像は、パノラマのほんの一部を600倍に拡大したものなんです。
【▲ 欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「Euclid」の観測データから作成されたパノラマ。2024年10月15日公開(Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, CEA Paris-Saclay, image processing by J.-C. Cuillandre, E. Bertin, G. Anselmi)】こちらがそのパノラマです(※掲載できる画像サイズの都合上、208ギガピクセルそのままではありません)。2024年3月25日~2024年4月8日の2週間ほどの間に行われた260回の観測で取得されたデータが使用されています。
ESO 364-36がどこにあるのか、わかりますか? ちょっとわかりませんよね……それでは12倍に拡大してみましょう。
【▲ 欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「Euclid」が観測した渦巻銀河「NGC 2188」と銀河団「Abell 3381」。2024年10月15日公開(Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, CEA Paris-Saclay, image processing by J.-C. Cuillandre, E. Bertin, G. Anselmi)】どうでしょうか? まだまだ小さいですが、中央右にESO 364-36が見えてきました。中央左に写っているエッジオン銀河(※地球に対して真横を向けた位置関係にある銀河)は約2500万光年先の渦巻銀河「NGC 2188」で、画像の右側やや上寄りに写っている銀河の集団は約6億7800万光年先の銀河団「Abell(エイベル)3381」です。
【▲ 欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「Euclid」が観測した銀河団「Abell 3381」。2024年10月15日公開(Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, CEA Paris-Saclay, image processing by J.-C. Cuillandre, E. Bertin, G. Anselmi)】今度は36倍に拡大した画像で、見えているのはAbell 3381の中心付近。ぼんやりと輝く巨大な楕円銀河から小さく暗い矮小銀河まで、様々な形や大きさの銀河が写っているのがわかります。ここまで拡大するとESO 364-36の姿もよく見えてきます。
【▲ 欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「Euclid」が観測した渦巻銀河「ESO 364-36」(上)と「ESO 364-35」(下)。2024年10月15日公開(Credit: ESA)】最後は150倍に拡大した画像です。中央にはESO 364-36(上)と、別の渦巻銀河「ESO 364-35」(下)が並んで写っています。ESO 364-36とESO 364-35は重力を介して相互作用している銀河のペアで、相互作用銀河「Arp-Madore 608-333」としても知られています。
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こちらは全天におけるパノラマ画像の位置と、拡大画像の範囲を示した図。比較として満月の画像も重ねられています。ちなみに、今回公開されたパノラマはEuclidが観測する天域全体のわずか1%にすぎないといいますから、最終的に公開されるデータの“予告編”といったところです。
【▲ 動画で見る:Euclid宇宙望遠鏡のパノラマ画像から渦巻銀河ESO 364-36へのズームイン】
(Credit: ESA/Euclid/Euclid Consortium/NASA, CEA Paris-Saclay, image processing by J.-C. Cuillandre, E. Bertin, G. Anselmi; ESA/Gaia/DPAC; ESA/Planck Collaboration)
Euclid宇宙望遠鏡は暗黒エネルギー(ダークエネルギー)や暗黒物質(ダークマター)の謎に迫ることを目的に開発された宇宙望遠鏡で、波長550~900nmをカバーする「可視光観測装置(VIS)」と、波長900~2000nmをカバーする「近赤外線分光光度計(NISP)」が搭載されています。
【▲ 観測を行うEuclid宇宙望遠鏡の想像図(Credit: ESA, Acknowledgement: Work performed by ATG under contract for ESA)】ミッションの目的は、全天の3分の1の範囲・100億光年先までに存在する数十億もの銀河の形状・位置・速度を観測して、宇宙の正確な3Dマップを作成すること。研究者はEuclidの観測データをもとに、暗黒エネルギーおよび暗黒物質の性質と“宇宙の大規模構造”の形成における役割、宇宙の膨張は時間の経過とともにどのように変化してきたのか、といった謎の解明に挑むことになります。2024年2月以来Euclidは観測の12%を完了しており、2025年3月には53平方度分のデータが公開される予定だということです。
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・ESAのユークリッド宇宙望遠鏡が撮影したオリオン座の「馬頭星雲」(2023年11月17日)
Source
ESA - Zoom into the first page of ESA Euclid’s great cosmic atlas文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
#ユークリッド #渦巻銀河
Last Updated on 2024/10/23
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