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赤色矮星を公転する惑星にも生命を支えられる安定した大気が存在する可能性

sorae.jp / 2024年11月3日 21時13分

ワシントン大学のJoshua Krissansen-Tottonさんを筆頭とする研究チームは、赤色矮星を公転する岩石質の太陽系外惑星が生命を支えられる安定した大気を保持できる可能性を示した研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は「Nature Communications」に掲載されています。

赤色矮星は太陽系外惑星を見つけやすいが活動性が高い

赤色矮星(M型星)は太陽よりも小さくて暗い低温の恒星で、天の川銀河ではありふれた存在です。太陽系外惑星の多くはトランジット法や視線速度法といった手法を用いて発見されていますが、恒星に対する惑星の半径や質量の比率が赤色矮星では大きくなる傾向にあるため、より大きな恒星と比べて惑星を見つけやすいという特徴があります。トランジット法と視線速度法については以下の関連記事の解説をご覧下さい。

関連記事
・6光年先のバーナード星で太陽系外惑星が見つかる さらに3つの候補も(2024年10月2日)

また、赤色矮星ではハビタブルゾーン(大気を持つ惑星の表面に液体の水が存在し得る、恒星から一定の範囲にある領域)が小さく、その中を公転する太陽系外惑星の公転周期は地球の数日程度しかない場合もあります。トランジット法や視線速度法を通じて惑星の性質を探るには繰り返し観測する必要がありますが、公転周期が短ければそれだけデータを集めやすいという観測上のメリットも生まれます。こうした理由から、赤色矮星のハビタブルゾーンを公転する太陽系外惑星は、惑星の生命居住可能性を研究する上で注目を集めています。

強力なフレアが生じている赤色矮星(左)と太陽系外惑星(右)の想像図【▲ 強力なフレアが生じている赤色矮星(左)と太陽系外惑星(右)の想像図(Credit: AIP/ J. Fohlmeister)】

ただ、赤色矮星はフレア(恒星表面の爆発現象)などが発生しやすい活動性の高い恒星としても知られていて、その周りを公転する惑星は赤色矮星が放つ紫外線・X線・恒星風に大気を剥ぎ取られてしまう可能性が指摘されています。

その一方で、条件によっては惑星の大気が保持される可能性を指摘する研究も発表されており、Krissansen-Tottonさんも「現在、太陽系外惑星の研究分野で最も興味深い疑問のひとつは、赤色矮星を公転する岩石惑星が生命を支える大気を維持できるかどうかです」とコメントしています。

関連記事
・赤色矮星を公転する惑星の3分の1は表面に液体の水が存在できる可能性(2023年6月9日)
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赤色矮星を公転する惑星も安定した大気や豊富な水を持つ可能性 赤色矮星「TRAPPIST-1」(左端)を公転する7つの太陽系外惑星の想像図【▲ 赤色矮星「TRAPPIST-1」(左端)を公転する7つの太陽系外惑星の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】

今回、研究チームは岩石惑星が溶融状態で形成されてから数億年かけて冷えて固まるまでの過程をモデル化。「みずがめ座(水瓶座)」の方向約40光年先の赤色矮星「TRAPPIST-1(トラピスト1)」のハビタブルゾーンを公転する太陽系外惑星「TRAPPIST-1 e」を例に分析を行った結果、惑星が原始惑星系円盤(若い星を取り囲むガスや塵の集まり)から獲得した水素の大気を持って形成された場合、酸化鉄の還元反応によって水が生成されるとともに、二酸化炭素などの気体で構成された安定した大気を持つ可能性が示されました。

論文の中で研究チームは、TRAPPIST-1の惑星系でハビタブルゾーンの内縁側を公転するTRAPPIST-1 eについて、長い前主系列星の段階を経たTRAPPIST-1からの極端紫外線などの強い放射にさらされたことも踏まえて、生命居住可能性の“最悪のシナリオ”として例に挙げたと言及。補足として分析を行った別の赤色矮星(プロキシマ・ケンタウリとLP 890-9)の惑星系でもよく似た結果が得られたと述べています。

なお、赤色矮星を公転する岩石惑星で水素の大気から水が生成されて“地球のような海惑星”になる可能性は2022年に国内の研究者からも発表されていて、今回の研究でも引用されています。

赤色矮星のハビタブルゾーンを公転する「海惑星」従来の予想より多いかも?(2022年10月6日)

太陽以外の恒星を公転する惑星として「ペガスス座51番星b」が発見されてから来年で30年。アメリカ航空宇宙局(NASA)のデータベースによれば、2024年10月22日時点で確認されている太陽系外惑星の数は5785個に上ります。

TRAPPIST-1の惑星系については「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope: JWST)」によるハビタブルゾーンよりも内側の「TRAPPIST-1 b」と「TRAPPIST-1 c」の観測が行われており、大気は存在しないか、あったとしても薄い可能性が示されています。この2つの惑星よりも外側を公転しているTRAPPIST-1 eについては、まだ確認されていません。

Krissansen-Tottonさんは、ハビタブルゾーンを公転していて大気を観測できる太陽系外の岩石惑星がある惑星系は、ウェッブ宇宙望遠鏡や今後登場する地上の大型望遠鏡を用いてもTRAPPIST-1をはじめ数個に限られると指摘。その上で「私たちの研究成果は、これらの惑星系における居住可能性を現在の技術でさらに調査するために、望遠鏡の観測時間を投資する価値があることを示唆しています。次世代の強力な望遠鏡を待つのではなく、今ある技術で取り組むべきでしょう」とコメントしています。

 

Source

University of Washington - Rocky planets orbiting small stars could have stable atmospheres needed to support life Krissansen-Totton et al. - The erosion of large primary atmospheres typically leaves behind substantial secondary atmospheres on temperate rocky planets (Nature Communications)

文・編集/sorae編集部

Last Updated on 2024/11/03

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