2025年1月の星空情報:12日は火星と地球が最接近
sorae.jp / 2025年1月7日 21時8分
1月、新しい年の始まりは空気もどこかぴんと張り詰めたように感じられます。冬の空は湿度が低く澄み切って、まるで磨かれた鏡のようです。その美しい空に、色鮮やかな星々が広がります。
【▲ 2025年1月中旬 21時頃の東京の星空(Credit: 国立天文台)】南の空を見上げると、金白色に輝く木星が目に入ります。木星は太陽系最大の惑星で、明るさは-2.7等級(※1)と、目を射るような光を放っています。
木星は英語で「ジュピター」といいますが、これはローマ神話の主神ユーピテルの別名です。ユーピテルはギリシャ神話の神々の王であるゼウスと同一視されています。
惑星は恒星と比べると、またたきが少なくじっと光っているように見えます。惑星は地球に近く、ある程度の(見かけの)面積があり、大気の影響を受けづらいためです。木星の明るくも落ち着いた輝きは、玉座に堂々と座るゼウスの姿を連想させます。
木星の周りには、あでやかな冬の星座が見られます。木星のやや下に見えるオレンジ色の星は、「おうし座」の1等星アルデバランです。ギリシャ神話では、おうし座はゼウスの化身です。今年の冬空では、木星とおうし座という2つのゼウスのモチーフが並んでいるのです。
おうし座と向かい合うようにして、冬の星座の王者「オリオン座」も見られます。北東側の赤い星ベテルギウスと、南西側の青白い星リゲルという、2つの1等星を持つ豪華な星座です。オリオンは海の神ポセイドンを父に持ち、ゼウスの甥に当たります。
オリオン座のベテルギウスと「おおいぬ座」の白い1等星シリウス、「こいぬ座」の黄白の1等星プロキオンを結ぶと、冬の大三角が描けます。シリウスは-1.5等級と1等星の中で最も明るい星ですが、木星はその3倍以上も明るいのです。
冬の大三角から空高い方へ目を移すと、プロキオンに近い順から赤、オレンジ、白と3つの星が並びます。
赤い星は火星です。現在の火星は、-1.4等級(※1)とシリウス並みの明るさです。
オレンジ色の星は「ふたご座」の1等星ポルックス、白い星は同じく「ふたご座」の2等星カストルです。ポルックスはゼウスの血を引き不老不死でしたが、カストルは人の子でした。カストルが命を落とした時、ポルックスはいつまでもカストルと共にいられるようゼウスに願い、二人一緒にふたご座になったと語られています。
ふたご座からさらに目を上げると、ほぼ天頂付近に黄色の1等星があります。「ぎょしゃ座」のカペラです。ぎょしゃ座のモデルはアテネの王エリクトニオスといわれています。
ギリシャ神話においては、エリクトニオスはゼウスの息子で鍛冶の神であるヘパイストスを父に持ち、知恵の女神アテナによって育てられたと語られています。
冬の星空の1等星、アルデバラン、リゲル、シリウス、プロキオン、ポルックス、カペラを結ぶと、大きな六角形「冬のダイヤモンド」が描けます。ゼウスにゆかりのある冬の星座たちの中心に、ゼウスの星、木星が輝く、ダイナミックな光景が広がります。
色や明るさ、またたき方の違いにも注目しながら、1等星と惑星の共演をご覧ください。
※1…木星、火星の等級は日本時間2025年1月15日0:00時点のもの(国立天文台暦計算室 今日のほしぞら参照)
※…星座や天体の見える方角や位置関係は2025年1月15日21時頃のものです
火星と地球の最接近 【▲ 2025年1月12日21時頃の東京の空(Credit: USM, Redshift, Edit: sorae)】2025年1月12日22時37分頃、火星と地球が最接近します。この場合の最接近とは、天体が地球に最も近づく状態のことです。
火星は地球の一つ外側を687日(約1年11か月)周期で公転しており、780日(約2年2か月)ごとに地球に最接近します。
火星は楕円軌道を描いて公転している(※2)ため、最接近時の距離は毎回異なります。今回の接近時の距離は9,608万キロメートルで、最接近としては遠めの距離です。
とはいえ、最接近時の光度は-1.4(※3)等級とかなりの明るさです。ベテルギウスやアルデバランといった赤っぽい恒星とは異なる、ふしぎなピンク色に輝く火星は、華やかな冬空の中でも良く目立つでしょう。
※2…火星は楕円軌道を描いて公転している:惑星の公転軌道は全て楕円ですが、火星は特につぶれ具合が大きく、最接近する位置によって地球との距離が大きく変わります。
※3…火星の等級は日本時間2025年1月12日0:00時点のもの(国立天文台暦計算室 今日のほしぞら参照)
Source
国立天文台 -ほしぞら情報 東京の星空・カレンダー・惑星(2025年1月) 国立天文台 -ほしぞら情報 2025年1月 しぶんぎ座流星群が極大(2025年1月) 国立天文台 -ほしぞら情報 火星が地球に最接近(2025年1月) アストロアーツ -2024年1月4日 しぶんぎ座流星群が極大 アストロアーツ -2025年1月12日 火星が地球と最接近参考文献
天文年鑑2025 天文年鑑編集委員会編著 誠文堂新光社 星座のはなし 永田美絵監修 矢板康麿写真 宝島社 藤井旭の天体観測入門 星座の 神話がわかる本 藤井旭著 誠文堂新光社文・編集/sorae編集部
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