ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「アンドロメダ銀河」の美しいパノラマ
sorae.jp / 2025年1月17日 21時21分
こちらは約250万光年先の銀河「アンドロメダ銀河(M31、Messier 31)」のパノラマです。「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」が10年以上にわたって取得した600枚以上の画像を使って作成されました。
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の観測データを使って作成された「アンドロメダ銀河(M31)」のパノラマ(Credit: Science: NASA, ESA, Benjamin F. Williams (UWashington), Zhuo Chen (UWashington), L. Clifton Johnson (Northwestern); Image Processing: Joseph DePasquale (STScI))】画像は1点目が公開されたオリジナル版で、2点目はスマートフォン等で見やすいように左へ90度回転させたものとなります。
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の観測データを使って作成された「アンドロメダ銀河(M31)」のパノラマ。オリジナル版をsorae編集部で左に90度回転させたもの(Credit: Science: NASA, ESA, Benjamin F. Williams (UWashington), Zhuo Chen (UWashington), L. Clifton Johnson (Northwestern); Image Processing: Joseph DePasquale (STScI); Edit: sorae編集部)】 2つの観測プログラムでアンドロメダ銀河を詳細に観測画像の作成に使われたのは、「Panchromatic Hubble Andromeda Treasury(PHAT)」および「Panchromatic Hubble Andromeda Southern Treasury(PHAST)」という2つの観測プログラムの下で、ハッブル宇宙望遠鏡の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」と「広視野カメラ3(WFC3)」を使って取得された観測データです。
PHATではアンドロメダ銀河の北側、続くPHASTでは南側が集中的に観測されました。天の川銀河の“お隣”と言えるアンドロメダ銀河は、澄んだ星空の下なら肉眼でも認識できるほど大きく見えます。ハッブル宇宙望遠鏡の狭い視野では全体を一度に捉えることができないため、細かく分割した領域を1つ1つ観測する必要があったのです。
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の観測データを使って作成された「アンドロメダ銀河(M31)」のパノラマ(上)と、その中から興味深い5箇所を拡大した画像(下)(Credit: Science: NASA, ESA, Benjamin F. Williams (UWashington), Zhuo Chen (UWashington), L. Clifton Johnson (Northwestern); Image Processing: Joseph DePasquale (STScI))】次の画像は冒頭のパノラマから特に興味深い5箇所がピックアップされたものです。
aの部分にはアンドロメダ銀河の星団、アンドロメダ銀河を透かして見えている遥か遠方の銀河、そして手前で輝く天の川銀河の星が写っています。bは「NGC 206」として知られる明るいスタークラウド(星の集団)。cは星形成領域で生まれたばかりの若く青い星の星団。dは過去にアンドロメダ銀河と衝突した銀河の核である可能性がある衛星銀河(伴銀河)の「M32(Messier 32)」。eは塵(ダスト)が集まって暗く見えているダストレーンです。
ちなみにこの画像でパノラマの右上に破線で描かれた円は、満月の見かけの大きさを示しています。
アンドロメダ銀河の歴史を解き明かす手掛かりにアメリカの宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によると、ハッブル宇宙望遠鏡による観測を通じて、アンドロメダ銀河の歴史を解き明かす手掛かりが得られました。STScIによると、どちらもほぼ同じ数十億年前に形成されたとみられる天の川銀河とアンドロメダ銀河は、宇宙論的には近隣と言える場所で成長したものの、アンドロメダ銀河のほうが若い星が多く、一貫性のある恒星ストリーム(引き伸ばされたように長く連なる恒星の集団)がみられるといった特徴があるといいます。
天の川銀河と比べてより最近の星形成活動や相互作用の歴史を物語るこのような特徴を生み出した理由として、渦巻銀河だった過去にアンドロメダ銀河と重力を介した相互作用を経験した可能性があるM32の存在があげられています。銀河どうしの相互作用は星形成活動を活発化させるものの、星形成に利用できる星間ガスが使い果たされることで、結果的に星形成活動が衰えていく可能性がコンピューターシミュレーションで示されているからです。
PHATとPHASTの研究チームに参加したカリフォルニア大学バークレー校のDaniel Weiszさんは「アンドロメダ銀河は星形成が活発な渦巻銀河と、年老いた赤い星が目立つ楕円銀河の中間に位置する、過渡期の段階にある銀河のようです」「見分けられた星々の詳細な観測は、銀河の合体と相互作用の歴史の全貌を理解する上で助けになることでしょう」とコメントしています。
ちなみにSTScIによると、ハッブル宇宙望遠鏡はアンドロメダ銀河を構成する2億個以上の星々を見分けられるといいます。かなり多いように思えますが、ハッブル宇宙望遠鏡がアンドロメダ銀河で検出できるのは太陽よりも明るい星に限られており、検出限界を下回る星も含めた銀河全体の星の数は1兆個と推定されているということです。
冒頭の画像はハッブル宇宙望遠鏡を運用するSTScIをはじめ、アメリカ航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)から2025年1月16日付で公開されています。
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した“オリオン大星雲”の原始星とジェット(2025年1月13日) 110億年以上前の銀河の輝き ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した“うみへび座”のアインシュタインリング(2025年1月8日) アンドロメダ銀河で発見された「星の大量移住」の証拠(2023年3月24日)
Source
STScI - NASA's Hubble Traces Hidden History of Andromeda Galaxy NASA - NASA's Hubble Traces Hidden History of Andromeda Galaxy ESA - Hubble traces hidden history of the Andromeda Galaxy ESA/Hubble - Hubble traces hidden history of the Andromeda Galaxy文・編集/sorae編集部
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