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ガンマ線バーストのモデル再考も? 中国の天文観測衛星が125億年前のX線バーストを検出

sorae.jp / 2025年1月25日 21時52分

中国科学院(CAS)国家天文台と欧州宇宙機関(ESA)は2025年1月23日付で、天文観測衛星「天関(Einstein Probe=アインシュタインプローブ)」が検出した遠方宇宙のX線バースト(X線の爆発的な輝きがごく短時間だけ観測される過渡的な現象)に関する研究成果を紹介しました。今回の成果に関連して、研究者はガンマ線バーストのモデルを再考する必要があるかもしれないと指摘しています。

天関(Einstein Probe)とは?

天関は2024年1月に衛星が打ち上げられたCASの天文観測ミッションで、ESA、マックス・プランク地球外物理学研究所(MPE)、フランス国立宇宙研究センター(CNES)が提携しています。ちなみに中国におけるミッションおよび衛星の「天関」という名称は、1054年に観測された超新星「SN 1054」の中国語での呼び名である「天関客星」に由来しています。

天関衛星には観測機器として広視野X線望遠鏡「WXT(Wide-field X-ray Telescope)」と狭視野のフォローアップX線望遠鏡「FXT(Follow-up X-ray Telexcope)」が搭載されています。ロブスターの目を参考にして開発されたWXTは一度に全天の10分の1を観測できる視野を持ち、WXTが検出したX線源のより詳細な情報を得るために高感度のFXTによる観測が行われます。

125億年前に発生したX線バーストを検出 遠方宇宙のX線バーストを検出した天文観測衛星「天関(アインシュタインプローブ)」のイメージイラスト(Credit: OPENVERSE/Einstein Probe Science Center)【▲ 遠方宇宙のX線バーストを検出した天文観測衛星「天関(アインシュタインプローブ)」のイメージイラスト(Credit: OPENVERSE/Einstein Probe Science Center)】

CASやESAによると、天関のWXTは協定世界時2024年3月15日20時10分44秒に「うみへび座(海蛇座)」の方向で低エネルギーX線のバーストを検出。識別のために「EP240315a」という名前が与えられたこのX線バーストは、輝度を変動させながら17分以上続いた後に消えていきました。

天関によるEP240315aの検出から約1時間後、掃天観測システム「ATLAS(Asteroid Terrestrial-Impact Last Alert System=小惑星地球衝突最終警報システム)」を構成する南アフリカの望遠鏡が同じ場所で可視光線を検出。ジェミニ天文台の「ジェミニ北望遠鏡」とヨーロッパ南天天文台(ESO)の「超大型望遠鏡(VLT)」による追跡観測の結果、EP240315aは今から約125億年前(赤方偏移z=約4.859)に発生したことがわかりました。

その後、WXTのソフトウェア開発にも携わった中国科学院国家天文台の劉元さんを筆頭とする研究チームは、ローマ・トル・ヴェルガータ大学のRoberto Ricciさんと協力して、オーストラリアの「ATCA(Australian Telescope Compact Array=オーストラリアコンパクト電波干渉計)」を使用した3か月間にわたる電波での観測を実施。その結果、EP240315aのエネルギー出力は典型的なガンマ線バースト(Gamma-Ray Burst: GRB)と一致していることが明らかになったといいます。

天文観測衛星「天関(アインシュタインプローブ)」の広視野X線望遠鏡「WXT」が検出したX線バースト「EP240315a」を示した図(Credit: Liu et al.)【▲ 天文観測衛星「天関(アインシュタインプローブ)」の広視野X線望遠鏡「WXT」が検出したX線バースト「EP240315a」を示した図(Credit: Liu et al.)】 通常よりも大幅に早いX線の検出 ガンマ線バーストのモデルを再考する必要も?

ガンマ線バーストもまた過渡的な現象で、ごく短時間だけ爆発的に放出されたガンマ線が検出されます。継続時間が2秒程度以下のショートガンマ線バーストは中性子星どうしの合体、2秒程度以上のロングガンマ線バーストは超新星爆発にともなって発生するのではないかと考えられています。

分析を進めたところ、EP240315aは「GRB 240315C」として検出されていたガンマ線バーストに関連していることも明らかになりました。ところが、通常のガンマ線バーストにおけるX線はガンマ線よりも数十秒だけ早く検出されるものの、EP240315aはGRB 240315Cの6分以上も前に検出されていたことがわかったといいます。

この時間差を念頭に、ESAはガンマ線バーストのメカニズムについて私たちの理解が不十分である可能性が示唆されると指摘。中国科学院国家天文台の孫輝さんは「これほど長い(ガンマ線検出の)遅延はこれまで観測されたことがありません」、天関の主任研究員を務める同天文台の袁衛民さんは「これまでのガンマ線バーストのモデルを再考する必要があるかもしれません」とコメントしています。

史上最も明るいガンマ線バーストの正体が「普通の超新星爆発」と判明(2024年4月28日) ガンマ線バーストとは?宇宙の強烈な天体現象の謎に挑んだ観測の歴史を振り返る(2024年3月24日) 中国科学院の観測衛星「アインシュタインプローブ」初の観測成果が発表(2024年5月14日)

 

Source

中国科学院国家天文台 - 天关卫星捕捉到高红移伽马射线暴EP240315a——为早期宇宙的研究打开新窗口 ESA - Einstein Probe detects puzzling cosmic explosion Liu et al. - Soft X-ray prompt emission from the high-redshift gamma-ray burst EP240315a (Nature Astronomy, arXiv) Ricci et al. - Long-term Radio Monitoring of the Fast X-Ray Transient EP 240315a: Evidence for a Relativistic Jet (The Astrophysical Journal Letters)

文・編集/sorae編集部

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