2025年の「節分」は2月2日 長期的にズレる理由を解説
sorae.jp / 2025年1月31日 22時20分
2025年の節分は2月2日です。ここ何十年か、節分は2月3日であったためか、一部のカレンダーには誤りがあるそうです。
では、このようなズレはなぜ起こるのでしょうか? そもそも、節分はどのように決定されるのでしょうか?
実はこの話は、地球と太陽の位置関係が関わっており、とても複雑な話となっています。
「節分」の定義は地球と太陽の位置関係「節分」と言えば、2月の初旬に豆まきなどの行事が行われる日です。節分の行事はここ何十年もの間、毎年2月3日に行われていたため、固定された日付のイベントであるイメージがあるかもしれませんが、実際には異なります。
節分は「季節を分ける」と書く通り、季節の変わり目に設けられた雑節です(※)。そして季節の変わり目の日付を表すのは「二十四節気」であり、現在行事が行われる2月初旬の節分は、春の始まりである「立春」の前日です。
※…二十四節気以外で設けられた、季節を表すための日付。節分以外にも彼岸、土用、八十八夜などがあります。
しかし実際には四季と称されるように、立春以外の四立である立夏・立秋・立冬それぞれの前日にも節分がありました。少なくとも平安時代には四季全ての節分があったものの、遅くとも江戸時代ごろから立春の前日のみが行事として意識されるようになりました。これは、旧暦(太陰太陽暦)の正月に近く、年の変わり目が強く意識された結果であると考えられています。
先述の通り、(2月初旬の)節分は立春の前日であり、立春は二十四節気の1つです。そして二十四節気は季節の細分化なので、地球が季節を持つ理由が、節分の日付を定めるのにも大きく関係してきます。おさらいとして、地球に季節があるのは、地球の自転軸(地軸)が傾いているからであり、太陽光が強く当たる面が、1年周期でゆっくりと変動する、ということを思い出してください。
【▲ 図1: 節分の元となる二十四節気の定義は、太陽が地球の周りを回っていると考えると分かりやすいです。(Credit: 国立天文台)】節分などの考えにおいては、実際の天体の運動にもとづいて「地球が太陽の周りを回っている」と考えるよりも、地上からの見た目の動きにもとづいて「太陽が地球の周りを回っている」と考えた方が分かりやすいです。
地球の赤道を通る面を天球(夜空)にまで伸ばすと、そこには「天の赤道」ができます。一方で太陽が1年周期で天球を通る線である「黄道」は、天の赤道に対して約23.4度傾いています。これは、地球の自転軸が傾いており、太陽の見た目の動きもそれに合わせて傾いているからです。
天の赤道と黄道は、天球において2点で交わります。交わる点のうち1つを「春分点」とし、ここを季節の始まりとします(逆側は秋分点)。そして円1周の360度を24分割したものが二十四節気です。春分点から見て夏側に90度動くと、太陽の見た目の位置が最も高くなり、太陽光も強くなります。この時期を夏至と呼びます。逆に、春分点から見て冬側に90度動くと、太陽の見た目の位置が最も低くなり、太陽光も弱くなります。この時期を冬至と呼びます。
同じように、立春は冬と春の境目ですので、冬至と春分のちょうど中間(春分点から見て冬側に45度)の位置に当たります。節分は立春の前日のため、結局のところ節分も、太陽の見た目の位置によって定義されます。
【▲ 図2: 実際の二十四節気の定義は、太陽に対する地球の自転軸の向きによって定義されます。(Credit: 国立天文台)】ここまでは、あくまで話を分かりやすくするために「太陽が地球の周りを回っている」としましたが、もちろん実際には「地球が太陽の周りを回っている」ものです。なので実際の二十四節気は、地球が公転軌道上の決まった点を通過する時刻によって決定されます。この通過点は、地球の自転軸が太陽に対してどのように向いているかによって決定されます。例えば春分点は、自転軸が太陽に対して垂直となる点として定義されています。
節分の日付が変わる理由は割り切れないせい?二十四節気が地球と太陽の位置関係によって定義される関係上、観測精度の上がった現在においては、それぞれの瞬間を分単位で定めることができます。しかしそれでは実用上不便であるため、その瞬間を含む日付を二十四節気の日としています。例えば節分の根拠となる立春の日は、立春の瞬間の時刻を含む日付ということになります。
直近で立春の瞬間を迎えたのは、2023年は2月4日の11時43分、2024年は2月4日の17時27分だったため、節分はどちらも2月3日でした。一方で2025年の立春の瞬間は2月3日の23時10分に迎えるため、節分もその前日の2月2日となるわけです。
【▲ 図3: 地球が春分点を通過する瞬間を含む日を春分と定義していますが、この時刻は年々ズレていき、4年に1度の閏年でリセットされます。これは節分や他の二十四節気でも同様です。(Credit: 国立天文台)】ここで、二十四節気の瞬間は地球と太陽の位置関係で定まるのに対し、地球の1日は地球の自転で定まることが、長期的な節分の日付のズレの理由となります。地球の1年(太陽年)は、地球の自転周期(太陽日)でぴったり割り切ることはできず、約365.2422日、つまり365日と6時間ちょっとのズレがあります。
このため、地球が公転軌道のある点を通過した後、再び同じ点を通過するには365日と6時間ちょっとかかります。6時間のズレを4倍すれば24時間となるため、4年ごとに1年を1日だけ増やすことでこのズレを補正できます。これが、1年が366日となる閏年(うるう年)です。しかし実際のズレは6時間ピッタリではないため、4年ごとに1日補正すると、同じ点を通過する時刻が約45分早くなります。この約45分のズレが何十年もかけて蓄積すると、0時をまたいで日付が変わるほどになります。これが立春や節分のズレの理由です。
節分の日付は長期的には不明 【▲ 図4: 節分を定義するために必要な、立春の日付の長期的な変動。立春の変動が4.0日以上5.0日未満に収まっていれば、節分も2月3日に固定されますが、実際にははみ出ていることが分かります。(Credit: 国立天文台)】地球が公転軌道上の同じ点を通過する時間が少しだけ早くなることによって生じるズレはずっと蓄積するため、節分の日付は段々と早くなります。例えば1902年から1984年までは、節分が2月4日である年もありました。1985年から2020年までは節分の日付は2月3日しかなかったため、まるで固定の日付であるかのように振る舞っていました。2021年からは4年に1回だけ2月2日の節分が現れ、2099年にかけて2月2日である日が段々と増加していきます。
もちろん、1年あたり約45分早くなるというズレを放置すれば、節分だけでなく季節と月日が一致しなくなってしまいます。そこで、1年あたり約45分というズレは、400年経つと3日分になることに着目し、閏年の挿入を調整します。閏年のルールが「西暦が4で割り切れる年は閏年とする。ただし、100で割り切れる年は平年(閏年ではない年)とし、その中で400で割り切れる年は閏年とする」と、かなり複雑なのはこのためです。この処理が間接的に、節分の日付が2月3日を中心にプラスマイナス1日に収まることに繋がっています。
【▲ 図5: 前年の二十四節気の経過時間が、1太陽年(365.2422日)とどれくらいズレているのかを表したグラフ。地球の自転や公転が複雑に変動することから、二十四節気の経過時間もプラスマイナス15分程度、しかも不規則に変動していることが分かります。(Credit: 国立天文台)】ただし、ある年の節分を長期的に予測することは困難です。先述の通り、二十四節気は地球の位置と自転軸の角度で決定しますが、この正確な位置関係が長期的に変動するためです。例えば月や惑星の重力の影響や、地球の公転軌道が楕円形であることによって、地球の位置は常に変動し、自転軸も細かく角度を変えます。しかも自転軸や公転軌道そのものも数千年から数万年かけて動いており、自転速度も変化します。
これらの変動は規則的・一定なものから、複雑怪奇な変動まで様々です。特に月や惑星の重力の影響は予測が難しいため、直近のものは分単位で求めることができても、何百年も先の影響を予測することは困難です。このため、節分や二十四節気が何月何日であるのかを精度良く設定できるのは、せいぜい1700年頃から2100年頃までとなります。
この、長期的には二十四節気を精度よく定めることができないという影響は、国民の祝日にも影響を与えています。日本の国民の祝日のうち、春分の日と秋分の日だけは二十四節気に基づくためです。これらの日付は、その前年2月に発行される官報に記載された暦要項によって確定します。できるだけ観測データを集めて正確に予測することと、企業活動やカレンダー発行などの準備期間に余裕を持たせることの兼ね合いが、暦要項という極めて基礎的な情報の発表時期にも影響を与えているのです。
国立天文台が「2025年の暦要項(れきようこう)」を発表(2024年2月7日)
Source
暦Wiki. “二十四節気の定め方”. (国立天文台) 暦Wiki. “二十四節気の変動とうるう年の役割”. (国立天文台) 暦Wiki. “二十四節気は複雑に変化している”.(国立天文台)文/彩恵りり 編集/sorae編集部
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