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小惑星「2018 CN41」の正体はテスラ・ロードスターだった 2018年にファルコン・ヘビーで打ち上げ

sorae.jp / 2025年2月3日 17時7分

国際天文学連合(IAU)の関連機関としてスミソニアン天体物理観測所が運営する小惑星センター(Minor Planet Center: MPC)は世界時2025年1月2日23時52分、新たに「2018 CN41」の仮符号が与えられた小惑星についての情報を小惑星電子回報(MPEC)を通じて発表しました。

その内容によると、太陽の周りを約1.53年周期で公転しているこの天体は、地球の公転軌道に最も近づく時の距離(Minimum Orbit Intersection Distance: MOID=最小交差距離)が月までの距離よりも短い約24万km(0.0016天文単位)とされていました。地球に接近する軌道を描く小天体は地球近傍天体(Near Earth Object: NEO)と呼ばれていて、将来地球に衝突する可能性も考慮して追跡観測の対象となっています。

しかし、最初のMPECが通知されてからわずか半日余り後の世界時2025年1月3日16時13分、MPCは次のMPECで2018 CN41をリストから削除すると発表しました。その理由は、この天体が小惑星ではなく「車(とそれを搭載したロケットの一部)」だったことが明らかになったからです。

正体はテスラ・ロードスターとロケットの一部だった 2018年2月、初めて打ち上げられたSpaceX(スペースX)の「Falcon Heavy(ファルコン・ヘビー)」ロケット(Credit: SpaceX)【▲ 2018年2月、初めて打ち上げられたSpaceX(スペースX)の「Falcon Heavy(ファルコン・ヘビー)」ロケット(Credit: SpaceX)】

今から7年前の2018年2月、アメリカの民間企業SpaceX(スペースX)は「Falcon Heavy(ファルコン・ヘビー)」ロケットを初めて打ち上げました。この時にダミーのペイロード(搭載物)として搭載されたのが、SpaceXと同じElon Musk(イーロン・マスク)氏がCEOを務める自動車メーカーTesla(テスラ)の電気自動車「Tesla Roadster(テスラ・ロードスター)」です。運転席にはStarman(スターマン)と名付けられたマネキンも積み込まれました。

Falcon Heavy(ファルコン・ヘビー)ロケット初飛行のペイロードとして搭載されたTesla Roadster(テスラ・ロードスター)(Credit: SpaceX)【▲ Falcon Heavy(ファルコン・ヘビー)ロケット初飛行のペイロードとして搭載されたTesla Roadster(テスラ・ロードスター)(Credit: SpaceX)】 「ファルコン・ヘビー」打ち上げ成功! スペースXの次世代大型ロケット テスラ・ロードスター投入しブースター着陸(2018年2月7日)

テスラ・ロードスターはFalcon Heavyの上段(2段目)からは切り離されず、上段に搭載されたままで太陽を周回する人工惑星になっていました。地球をバックに写るテスラ・ロードスターとスターマンの映像を憶えている方も多いのではないでしょうか。2018 CN41は、このテスラ・ロードスターと上段を観測したものだったというわけです。

打ち上げ後、地球を背景に撮影されたTesla Roadster(テスラ・ロードスター)とマネキンのStarman(スターマン)(Credit: SpaceX)【▲ 打ち上げ後、地球を背景に撮影されたTesla Roadster(テスラ・ロードスター)とマネキンのStarman(スターマン)(Credit: SpaceX)】

人工物が小惑星として“発見”されるケースは今回が初めてではありません。最近では2020年に発見されて「2020 SO」の仮符号を与えられた小惑星が、1966年にアメリカ航空宇宙局(NASA)の月探査機「Surveyor 2(サーベイヤー2号)」を打ち上げる時に使用されたロケット「Atlas Centaur(アトラス・セントール)」の上段だったことが判明した事例があります。

2020年11月から地球を周回している「ミニムーン」やはり人工物だった(2020年12月3日)

また、欧州宇宙機関(ESA)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の水星探査ミッション「BepiColombo(ベピ・コロンボ)」の探査機であることが判明した「2020 GL2」のケースのように、軌道を変更するための地球スイングバイ(太陽を公転する惑星などの重力を利用して軌道を変更する方法)を行った探査機が小惑星として“発見”される事例もしばしば発生しています。

宇宙の人工物を適切に見分ける仕組みが求められる

今回の「2018 CN41=テスラ・ロードスター」の件を報じた海外メディアのAstronomyは、地球を周回する人工物はアメリカ軍による追跡が行われているものの、地球を離れて深宇宙に達する人工物に関しては依然として規制されていない領域だと指摘。軌道上物体に詳しい天体物理学者のJonathan McDowell氏はAstronomyの取材に対して「最悪の場合、10億ドルを費やした探査機が到着して初めてそれが小惑星ではないことに気付くことになる」とコメントしています。

MPCのMatthew Payneセンター長は、ロケットの打ち上げ増加と望遠鏡を用いた調査手法の進歩によって、MPCは人工物に関する報告の増加を目の当たりにしているとAstronomyに対してコメント。MPCは発見された天体が人工物であるかどうかを複数の方法でチェックしているものの、今回のケースではそのすべてが機能しなかったといいます。現在、MPCはNASAのジェット推進研究所(JPL)と共同で、地球を周回する軌道上にはない人工物を適切に検出してデータベースから除外するシステムを開発しているということです。

最近では観測技術の向上や観測体制の充実によって、今までなら見逃されていたような小惑星でも発見できるようになってきました。その中には地球に衝突する直前に見つかる小さな小惑星も含まれていて、実際に予告されたタイミングで流星・火球として観測されたり、落下した隕石が回収されたりしています。

小惑星「2024 XA1」(COWEPC5)を落下前に観測 前回の同様事例からわずか42日後(2024年12月10日)

ざっくりと一言で表現すれば「小惑星だと思ったら車だった」今回のケース。ある意味では民間の宇宙開発が地球を遠く離れた領域にまで及びつつあることを象徴するような出来事ですが、本物の小惑星であるか否かを特定するためにも、同様の事例を効果的に防ぐ仕組みの整備が望まれます。

 

Source

MPC - MPEC 2025-A38 : 2018 CN41 MPC - MPEC 2025-A49 : EDITORIAL NOTICE: DELETION OF 2018 CN41 Astronomy - An asteroid got deleted because it was actually Elon Musk’s Tesla Roadster

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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