いくつある? “うお座”の銀河「LEDA 1313424」のリング構造をハッブル宇宙望遠鏡が観測
sorae.jp / 2025年2月9日 18時30分
こちらは「うお座(魚座)」の方向約5億6700万光年先の銀河「LEDA 1313424」です。その明るい中心部分を取り囲むのは、幾つも重なったリング状の構造。このリング、全部でいくつ確認されているかわかりますか?
【▲ ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の掃天観測用高性能カメラ(ACS)で観測された銀河「LEDA 1313424」(Credit: NASA, ESA, Imad Pasha (Yale), Pieter van Dokkum (Yale))】正解は9つ。一番外側のとても淡いリングも含めた直径は約25万光年で、私たちが住む天の川銀河(直径約10万光年)の2.5倍もあるというから驚きです。
この画像は「ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope: HST)」の「掃天観測用高性能カメラ(ACS)」を使って取得したデータをもとに作成されました。
ハッブル宇宙望遠鏡を運用するアメリカの宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によると、LEDA 1313424のリング構造はハッブル宇宙望遠鏡の観測で8つが確認され、ハワイの「W. M. ケック望遠鏡」による観測でもう1つのリングが特定されました。こうしたリング構造を持つ「環状銀河(Ring Galaxy)」と呼ばれる銀河はこれまでにも知られていたものの、確認されたリングの数は多くても3つだったといいます。
矮小銀河との衝突・通過が作り出した壮大なリング構造どうしてこのような多重のリング構造が形成されたのでしょうか? その原因だと考えられているのは、LEDA 1313424のすぐ左隣に見えている矮小銀河です。
観測データを分析したエール大学の博士課程学生Imad Pashaさんを筆頭とする研究チームは、この矮小銀河が現在観測されている状態から約5000万年前にLEDA 1313424と衝突し、中心部分を通過していったことで、まるで水面に生じる円形の波紋のように同心円状のリング構造が形成されたと結論付けました。
研究チームは衝突とその影響で生じたリング構造を円形の的(まと)にたとえて、LEDA 1313424を「ブルズアイ(Bullseye)」と呼んでいます。“的”に相当するLEDA 1313424と“矢”に相当する矮小銀河は約13万光年離れていますが、2つの銀河を結びつけるようなガスの痕跡も確認できるといいます。
【▲ 研究者からブルズアイ銀河(Bullseye Galaxy)と呼ばれるLEDA 1313424(右)と、天の川銀河(左)の大きさを比較した図(Credit: NASA, ESA, Ralf Crawford (STScI))】STScIによると、LEDA 1313424を構成する星々の軌道はほとんど乱されなかったものの、星の集団が数百万年かけて“積み重なる”ことで、目に見えるリング構造が形成されました。銀河内部のガスが外側へと運ばれるうちに塵(ダスト)と混ざり合い、新しい星が形成されることで、リングはさらに明るく輝くようになったとみられています。
9つのリングの配置を詳細に調べてみると、その間隔は均等ではなく、外側へ向かうにつれて広がっていくことがわかります。最初に外側の2つのリングが急速に形成されて広がった後、その他のリングがやや遅れて形成された可能性があるといい、矮小銀河の衝突は特に最初に形成された2つのリングに影響を及ぼしたと考えられています。
こうしたリングの配置は長年の理論予測とほぼ一致しているといい、研究に参加したエール大学のPieter G. van Dokkum教授は「この理論は、誰かが多数のリングを発見する日が来ることを想定して作られました」「長年の予測をブルズアイ銀河で確認できたことは本当に感動的です」という喜びのコメントを寄せています。
van Dokkumさんによると、これほど多くのリング構造が確認できるのは衝突後のごく短期間に限られます。研究チームは一番外側のリングよりもさらに大きな10番目のリングが存在したと推定していますが、すでに薄れていて検出することはできないようです。「私たちは非常に特別なタイミングでブルズアイ銀河を観測できました」(van Dokkumさん)
【▲ 研究者からブルズアイ銀河(Bullseye Galaxy)と呼ばれるLEDA 1313424のリング構造を示した図(Credit: NASA, ESA, Ralf Crawford (STScI))】また、巨大なLEDA 1313424は、銀河どうしの衝突で形成された環状銀河が表面輝度の低い「低表面輝度銀河」に進化することも示唆しているといいます。Pashaさんは「今回の研究以前は、その可能性を裏付ける観測的な証拠は存在しませんでした」とコメントしており、今回の成果は銀河の進化に関する新たな知見をもたらすきっかけになるかもしれません。
研究者は2027年に打ち上げが予定されているアメリカ航空宇宙局(NASA)の「ナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡(Nancy Grace Roman Space Telescope)」に期待しています。ローマン宇宙望遠鏡にはハッブル宇宙望遠鏡と同じ感度と解像度で約100倍広い視野を一度に観測できるという近赤外線カメラ「Wide Field Instrument(WFI)」が観測装置のひとつとして搭載される予定で、van Dokkumさんも「ローマン宇宙望遠鏡の科学観測が始まれば、こうした興味深い天体がより簡単に見つかるようになるでしょう」とコメントしています。
見た目の印象だけでなく、銀河の理解にもインパクトを与えるLEDA 1313424。特徴的でも知られざる銀河がまだまだ存在するのだろうと思うと、今後の発見が楽しみになってきませんか? 冒頭の画像はSTScIをはじめ、NASAや欧州宇宙機関(ESA)などが2025年2月4日付で紹介しています。
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「アンドロメダ銀河」の美しいパノラマ(2025年1月17日)
Source
STScI - Straight Shot: Hubble Investigates Galaxy with Nine Rings NASA - Straight Shot: Hubble Investigates Galaxy with Nine Rings ESA/Hubble - Galaxy LEDA 1313424 W. M. Keck Observatory - RING IT ON: W. M. KECK OBSERVATORY DATA HITS A GALACTIC BULLSEYE Yale University - Bullseye! Yale-led team finds a giant galaxy with a record nine rings Pasha et al. - The Bullseye: HST, Keck/KCWI, and Dragonfly Characterization of a Giant Nine-ringed Galaxy (The Astrophysical Journal Letters)文/ソラノサキ 編集/sorae編集部
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