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この天体の正体は? はるか彼方の活動を光学望遠鏡と電波望遠鏡が捉えた

sorae.jp / 2025年2月11日 11時27分

こちらは「かんむり座(冠座)」の方向で観測された、ある天体の様子。光学観測(赤色)と電波観測(オレンジ色)で取得したデータが組み合わせられています。この天体の正体、何だかわかりますか?

近赤外線(赤色)と電波(オレンジ色)で観測されたクエーサー「J1601+3102」(Credit: LOFAR/DECaLS/DESI Legacy Imaging Surveys/LBNL/DOE/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image processing: M. Zamani (NSF NOIRLab))【▲ 近赤外線(赤色)と電波(オレンジ色)で観測されたクエーサー「J1601+3102」(Credit: LOFAR/DECaLS/DESI Legacy Imaging Surveys/LBNL/DOE/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA; Image processing: M. Zamani (NSF NOIRLab))】

画像を公開したアメリカ国立科学財団(NSF)国立光学・赤外天文学研究所(NOIRLab)によると、その正体はクエーサーです。「J1601+3102」と呼ばれるこのクエーサーが存在していたのはビッグバンから12億年以内、今から約126億年以上も前の宇宙だといいます。

電波観測で見つかった構造は、光学観測で捉えられたJ1601+3102から双方向に放出されたジェット(細く絞られた高速なガスの流れ)です。ジェットの端から端までの推定距離は少なくとも約21万5000光年(66キロパーセク)で、私たちが住む天の川銀河の直径(約10万光年)の2倍以上にわたって広がっているとみられています。

近赤外線(赤色)と電波(オレンジ色)で観測されたクエーサー「J1601+3102」(注釈付き)。左上はチリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡の観測装置「ダークエネルギーカメラ(DECam)」のデータ、左下はヨーロッパの電波望遠鏡「LOFAR(Low Frequency Array)」のオランダ観測局のデータ、右は複数のLOFAR観測局を連携させて得たデータとDECamのデータを組み合わせた画像(Credit: LOFAR/DECaLS/DESI Legacy Imaging Surveys/LBNL/DOE/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA/F. Sweijen (Durham University); Image processing: M. Zamani (NSF NOIRLab))【▲ 近赤外線(赤色)と電波(オレンジ色)で観測されたクエーサー「J1601+3102」(注釈付き)。左上はチリのセロ・トロロ汎米天文台にあるブランコ4m望遠鏡の観測装置「ダークエネルギーカメラ(DECam)」のデータ、左下はヨーロッパの電波望遠鏡「LOFAR(Low Frequency Array)」のオランダ観測局のデータ、右は複数のLOFAR観測局を連携させて得たデータとDECamのデータを組み合わせた画像(Credit: LOFAR/DECaLS/DESI Legacy Imaging Surveys/LBNL/DOE/CTIO/NOIRLab/NSF/AURA/F. Sweijen (Durham University); Image processing: M. Zamani (NSF NOIRLab))】 初期宇宙では最大の“電波ジェット”を発見

クエーサー(quasar)とは、銀河中心部の狭い領域から強い電磁波を放射する活動銀河核(AGN)の一種のことで、活動銀河核のなかでも特に明るいタイプを指します。発見当初のクエーサーはその正体がまだわからず、恒星のように見えるものの非常に遠くにある天体であることから「準恒星状天体」を意味する「quasi-stellar object」と名付けられ、これを縮めて「quasar」と呼ばれるようになりました。

活動銀河核の原動力は超大質量ブラックホール(超巨大ブラックホール)だと考えられています。ブラックホールそのものは見えませんが、ブラックホールに引き寄せられたガスが周回しながら落下していく過程でエネルギーが解放され高温になって、そこから様々な波長の電磁波が放射されることで活動銀河核として観測されている、というわけです。J1601+3102のブラックホールの質量は太陽の約4億5000万倍だと推定されています。

アーティストによるクエーサー「J1601+3102」の想像図(Credit: NOIRLab/NSF/AURA/M. Garlick)【▲ アーティストによるクエーサー「J1601+3102」の想像図(Credit: NOIRLab/NSF/AURA/M. Garlick)】

また、ガスは全てがブラックホールに落下するのではなく、一部は両極方向に加速されて高速のジェットとして放出されます。ジェットもまた電磁波で観測できることから、ジェットを放出させるようなブラックホールの存在やその活動を知ることができます。J1601+3102のように電波で観測されるジェットは電波ジェットとも呼ばれていて、約1200万光年先の銀河「ケンタウルス座A」が放出させているものなどが知られています。

NOIRLabによると、ヨーロッパ各地に観測局が設置されている電波望遠鏡「LOFAR(Low Frequency Array)」の観測で発見されたJ1601+3102の電波ジェットは、初期の宇宙で見つかったものとしては最大です。それだけではなく、J1601+3102のブラックホールの質量は時に太陽の数十億倍にも達するクエーサーのものとしては比較的軽く、2つのジェットの明るさやクエーサーからの距離に非対称性がみられるという特徴もあります。

強力な電波ジェットが生成されるのに必要な条件や、宇宙で最初の電波ジェットが生成された時期などは今も不明だといいますが、今回の発見はジェットを生み出すブラックホールの性質や、ジェットに影響する環境について新たな知見を得ることにつながるかもしれません。はるか昔の初期宇宙で何が起きていたのかを一歩一歩解明していく取り組みに今後も注目です!

謎の現象「高速電波バースト」を予想外の場所で繰り返し検出 どこで見つかった?(2025年1月22日)

 

Source

NOIRLab - Gemini North Teams Up With LOFAR to Reveal Largest Radio Jet Ever Seen in the Early Universe Gloudemans et al. - Monster Radio Jet (>66 kpc) Observed in Quasar at z ∼​​​​​ 5 (The Astrophysical Journal Letters)

文/ソラノサキ 編集/sorae編集部

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