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いま熱いのは火星?中国?世界の商業宇宙最前線 ~大貫美鈴の現地レポート第6回~

sorae.jp / 2016年10月27日 17時9分

国際宇宙会議2016~宇宙学会が進化した!~

Depiction of the EM 7 mission to the Lunar L2 Lagrangian point where astronauts explore a recently captured asteroid sampe

ロッキードマーチンのマーズベースキャンプ  (c)Lockheed Martin

メキシコ第2の都市グアダラハラで開催されたIAC(International Astronautical Congress)2016、今年は例年になくビジネス色満載でNewSpaceの人たちもずいぶん参加していた。IACは毎年2000~3000人(昨年は2100人)が参加する宇宙単独の国際会議では最大級、世界持ち回りで開催されている。今年の参加者は、なんと5700人以上、170セッション、1500ペーパー、1000の発表、100以上の出展があった。参加者の激増がイーロン・マスクの火星効果だったのかは不明だが、IAC2016が火星色に染まったことは事実。開催前日には、アポロ宇宙飛行士バズ・オルドリンのCycling Pathway to Mars、ロッキードマーチンのオリオン宇宙船を利用したマーズベースキャンプは、イーロン・マスクの火星計画発表直前のランチトーク、発表後日のハイライトレクチャーで最新状況が紹介された。

予算1.7兆円?中国の商業宇宙大驀進

20161005nchina中国が計画中の宇宙旅行向けスペースプレーン(c)CALT

IAC2016開会前日に開催された委員会に中国の新メンバーが参加、160億ドルが宇宙商業化政策に予算化されているという。ショック、これって聞き間違い?!NASAの年間予算に近い額。単年度予算ではないものの、膨大な予算に一同がびっくりしていた。

展示会場正面入り口近くには、中国のロケットベンチャーがドカンと展示。2015年に北京に設立されたランドスペーステクノロジーは、ランドスペース-1(LS-1)ロケットを開発、2017年にマーケットインを目指している。LS-1は400kgのペイロードを500kmの太陽同期軌道に投入できる能力をもつ全長20.7m、4段の固体ロケット。中国政府が開発して2015年9月に初打ち上げに成功した長征11号で実証された技術を使っているため、開発期間が超短!コストは教えてもらえなかったものの低コストが売りで、国際衛星も打ち上げると強烈アピール。将来は液体燃料の大型ロケットを開発してスペースXやアリアンロケットの市場も狙うという。商業スペースポートも整備している。

2016年2月に設立されたエクスペースは700kmの太陽同期軌道に最大1トンのペイロードを打ち上げる固体燃料の3段ロケットKZ-11を開発、1kg1万ドルのコストで2017年に商業打ち上げ開始を目標に開発を進めている。

IAC2016の発表では、中国最大のロケット製造業者である中国運載火箭技術研究院(CALT)の宇宙旅行向けスペースプレーン計画が注目を集めた。5人乗りの機体はマッハ6で100kmに到達して2分間の無重力体験ができる10トン翼幅6m、20人乗りの機体はマッハ8で130kmに到達して4分間の無重力体験ができる100トン翼幅12m、いずれも液体メタンと液体酸素を燃料とするエンジンで50回の再利用ができ、1席20万~25万ドルで販売する計画となっている。

20161005nchina2

中国が計画中の宇宙旅行向けスペースプレーン(c)CALT

IAC参加企業以外にも、ロケットベンチャーが次々立ち上がっている。ワンスペースは2015年に設立、500kgの衛星を1ポンド6500ドルで低軌道に打ち上げる低コストロケットを2018年の商業打ち上げを目標に開発、将来は有人ロケットを目指している。その他、2020年までに液体燃料ロケットを、2025年までに有人ロケットの開発計画を発表しているロケットスタートアップもある。

IAC2016の起業&投資のセッションでは、リモートセンシングコンステレーション企業の21ATの発表があった。同社は2015年に中国で初めて英国サリーサテライトテクノロジーズの3衛星を打ち上げ、衛星画像の商業利用を進めている。中国では、2015年に初の中国製高解像度のビデオ画像が取得できる衛星など4衛星を打ち上げたスタートアップもある。この企業では、今後2020年までに60衛星のコンステレーションを構築する。

 

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中国ロケットベンチャーのランドスペースのブース

アメリカ、ヨーロッパ、ロシアからもビジネス系プレスリリースが続々

宇宙イベントに合わせたプレスリリースは、ビジネス色が強い宇宙イベントでは普通にあること。でも学会ではこれまでなかったように思う。ビジネス系プレスリリースが多かったのも今回の特色。

ロシア最大の航空ホールディング企業S7グループでS7エアラインのオーナーがシーロンチの全アセットを150Mドルで買収、IACで調印式を行った。ロシアは4人乗り3倍の広さになる新型ソユーズを2023年までに有人飛行、2030年までに有人月面着陸を目指す計画も発表していた。

シエラネバダは、国連とともにドリームチェイサーで実施する宇宙新興国の無重力実験について発表。2018年にペイロード選定、2021年に打ち上げる。ドリームチェイサーは回収が可能な有翼の貨物便であるが、フリーフライヤにもなる。2019年以降のISS貨物便でNASAとの契約がある。

ナノラックスは、ISSから6Uと12Uのキューブサットを放出する計画を発表、ISSからの衛星放出事業を拡大する。IAC2016期間中、2017年6月にサリー宇宙センターらとISSからの放出で宇宙ゴミ除去ミッションを実施することも発表。欧州委員会のもとエアバスやSSTLなど10パートナーのコンソーシアムで2013年にスタート、100kg衛星でネットやハープーン、ナビゲーション、ドラッグセイルなど4つのデブリ除去技術を実証する。

エアバスは、2018年にISSに接続する商業プラットフォームバルトロメオの最初の顧客を発表。オーストリアの太陽電気推進を開発しているニューマンスペースと100kgの契約をした。ISSにはナノラックスが曝露部実験装置を設置しているが、これもエアバス製。

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商業プラットフォームのバルトロメオ (c)Airbus

インダストリーデイやビジネスマッチミーティングも

テクニカルセッション、プレナリ、ハイライト、グローバルネットワーキングフォーラム(GNF)とともに、NewSpace企業がラインナップされたインダストリーデイが行われ、宇宙ビジネスのショーケースになっていた。展示会場では20分のビジネスマッチミーティング、80社がレジスターされていて次々ミーティングが行われた。また、展示会場で、新たな商業スペースポート計画を発見。開催地のメキシコは水平型のサブオービタル機に対応するスペースポートの取り組みを英国企業と推進、ノルウェーは独立したブースで商業スペースポートを紹介していた。

2016_10_27_iac4

プレナリ1は各宇宙機関長によるHeads of Agencies

 

☆5月にプエルトリコで開催されたISDCに続き、ここでも開催前の週末にコミコンに遭遇。コミコンと宇宙カンファレンスは相性が良い?!

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