「宇宙ゴミ」を減らして未来を救え!こうのとり6号機、画期的な技術を実証へ
sorae.jp / 2016年12月9日 11時15分
今日、12月9日に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げ予定の「こうのとり(HTV:H-II Transfer Vehicle、宇宙ステーション補給機))6号機」。国際宇宙ステーションまで新しい水、食料などの生活物資や新たな実験装置、バッテリーなど定期交換が必要なものを輸送する宇宙開発になくてはならない存在です。そんなこうのとりも6号機目。そして今回は輸送任務に加えて「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」を除去するプロジェクトの実証実験も担っています。
今日は世界共通の課題であるスペースデブリと、それを減らすために今回実証される技術の意外な原理に注目します。
こうのとり6号機のイメージ図。上に長く伸びたワイヤーがKITEの「導電性テザー」
スペースデブリとは~宇宙も地上も手を焼く“ごみ問題”~
スペースデブリ(宇宙ゴミ)とは、軌道上にある不要な人工物体のことです。寿命を迎えた人工衛星や使用済みロケットの一部、それらの衝突や破損で生まれた破片などを指します。宇宙開発が進む中でその数は増え続け10㎝以上のもので約2万個、1mm以上になるとなんと1億個あると言われています。スペースデブリ(以下デブリ)はまんべんなく分布しているのではなく、いくつか種類がある軌道の中でもよく使われる軌道に集中しています。最も混雑しているのは「低軌道」と呼ばれる低めの軌道の、高度700~1000km付近です。
低軌道の人工衛星やデブリは、約7.5[km/s]とピストルの弾丸の10倍以上の速さで地球の周りを回っているので、衝突するとその衝撃はすさまじいものになります。1mm以下のデブリでも衝突すれば故障の危険がある上、1㎝ほどのデブリになると致命傷を負いかねないのです。現在はアメリカを中心に世界中が協力して24時間体制でデブリを観測し、衝突の危険があると事前に人工衛星や国際宇宙ステーションの軌道をずらす対応を取っています。日本でも2ヶ所ある「スペースガードセンター」でデブリを観測しています。
しかし観測できないような微小デブリも多く、過去にはデブリとの衝突によって衛星の故障や大破、通信断絶など悲しい事故も起きています。さらに事故によってまた小さいデブリが増える悪循環でもあるのです。
デブリのスピードと数にブレーキを=燃料不要!?カギは電気の力
JAXAはデブリ除去に向けてとあるプロジェクトを進めています。その技術の実証実験が今回こうのとり6号機で行われる「KITE(カイト)」(正式名称:HTV搭載導電性テザー実証実験)です。このプロジェクト自体は、大まかに言うと飛んでいるデブリに電気が流れるひも(導電性テザー)を取り付けてブレーキとなる力を発生させ、徐々にスピードと高度を落として最後は大気圏突入で燃やしてしまおうというもの。今回のKITEは、そのテザーの放出から力を発生させるまでの一連の流れを実証するものです。そしてこのブレーキとなる力を「ローレンツ力」と言うのですが、この力を発生させるために使う道具は実はとても少ないのです。
磁石のN極S極(磁極)の間にはたらく力を磁力と言いますが、それがはたらく空間を磁場と呼びます。その磁場の中を、電荷と呼ばれる電気を帯びた粒子が横切るとき、その電荷は必ず力を受けます。この受ける力を「ローレンツ力」と言います。実は地球の周りは磁場なので、ひも(テザー)に電荷を流し、このローレンツ力をデブリが動く方向と逆向きに発生させることができたら…そうしてデブリにブレーキをかけようとしているのがこのプロジェクトなのです。
新技術のイメージ図。地球の磁場と電流の相互作用で、デブリにブレーキを掛ける
実証に成功しプロジェクトが実現すれば、人工衛星がデブリにテザーを取り付け、デブリは1年ほどかけてゆっくり減速し大気圏突入していく流れになるそうです。まずは大型デブリから除去していくとのことですが、どのような動きをしているか分からないデブリに近づき作業を行うには高度な技術が要求されます。だからこそ除去技術をシンプルにして少しでも作業の難易度を下げることが重要なのです。
KITEは7日間にわたって行われ、全任務終了の後こうのとり6号機は大気圏突入して燃え尽きます。多くの人の期待を背負って宇宙へ向かうこうのとり6号機をぜひ応援しましょう。
Image Credit : JAXA
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