銀河の風は磁場をも動かす。NASAの空中天文台が葉巻銀河の銀河風を観測
sorae.jp / 2019年3月8日 22時50分
この画像は、「葉巻銀河」の別名で知られるおおぐま座の銀河「M82」を可視光線で撮影した写真(グレースケール)に、アメリカのキットピーク国立天文台が近赤外線と中赤外線で捉えた水素ガス(赤)と、ボーイング747を改造したNASAの成層圏天文台「SOFIA」および宇宙望遠鏡「スピッツァー」が捉えた塵(黄色)を合成したもの。印象派画家の筆使いのようにも見えるものは、塵の観測によって判明したM82の磁場の流れを示しています。
M82は、私たちが暮らす天の川銀河の10倍のペースで星が生まれている「スターバースト銀河」と呼ばれる活動的な銀河のひとつです。その活発な星形成活動は、M82の外に広がる銀河間空間に向けて銀河内のガスや塵を流出させる、強力な銀河風を伴っています。
「SOFIA」の観測チームに参加しているEnrique Lopez-Rodriguez氏が「銀河間は空っぽの空間ではありません」と述べているように、M82の銀河風によって運ばれているガスと塵の質量は、太陽5000万個から6000万個分にも上ると見積もられています。
この銀河風は銀河の磁場に対しても影響を与えると考えられてきましたが、観測による証拠はまだ得られていませんでした。今回「SOFIA」を用いた遠赤外線での観測によって、M82の磁場に沿った塵の粒子を捉えることに成功。その結果、銀河風そのものの幅に近い2000光年以上に渡り、磁場がM82の銀河円盤に対して垂直に引きずられていることがわかりました。
銀河にほど近い銀河間空間に物質や磁場を送り込むM82のようなスターバースト銀河の活動が、もしも初期の宇宙でも起きていたとすれば、同時期の銀河の進化にも影響を与えたものと思われます。今回の研究を率いたミネソタ大学名誉教授のTerry Jones氏は、「銀河系間の磁場を学ぶことは、宇宙の歴史における銀河の進化を学ぶ上での鍵です」と語っています。
Image credit: NASA/SOFIA/E. Lopez-Rodriguez; NASA/Spitzer/J. Moustakas et al.
https://www.nasa.gov/feature/weighing-galactic-wind-provides-clues-to-evolution-of-galaxies
文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
NASAがX線宇宙望遠鏡「チャンドラ」の打ち上げ25周年記念画像を公開
sorae.jp / 2024年7月26日 20時33分
-
ペンギンと卵のような相互作用銀河「Arp 142」 ウェッブ宇宙望遠鏡観測開始2周年記念
sorae.jp / 2024年7月16日 21時22分
-
超新星輝く“しし座”の渦巻銀河「NGC 3810」 ハッブル宇宙望遠鏡が撮影
sorae.jp / 2024年7月10日 21時41分
-
新たな星の成長を伝える“砂時計” ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した暗黒星雲「L1527」
sorae.jp / 2024年7月6日 21時26分
-
若き星々が照らす星雲の輝き ウェッブ宇宙望遠鏡が観測した“へび座”の反射星雲
sorae.jp / 2024年7月1日 21時0分
ランキング
-
1「大谷翔平の新居バレ報道」は誰の責任なのか…アナウンサーに「謝罪係」を背負わせるテレビ局の特殊体質
プレジデントオンライン / 2024年7月25日 10時30分
-
2マクドナルドで行列は当たり前…は昔の話。「一切並ばず食事する方法」使わないのはあまりに損
女子SPA! / 2024年7月28日 8時45分
-
3妻への「別にいいけど」はケンカの火種でしかない 夏休みは「家庭内の不適切発言」を回避する機会
東洋経済オンライン / 2024年7月29日 8時0分
-
4トランプ氏がもし撃たれていたら? AR-15銃の恐怖の殺傷力(シェリーめぐみ)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月29日 9時26分
-
5「キウイ」実はあまり知られていない最強の食べ方 「栄養素充足率スコアNo.1」強みを享受するには
東洋経済オンライン / 2024年7月28日 15時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください