増え続ける宇宙ゴミ。10年前のロケットが分解してできた破片をスペインの観測所が撮影
sorae.jp / 2019年4月15日 21時7分
こちらのアニメーション画像は、地球近傍天体などの観測を行っているスペインの「デイモス・スカイ・サーベイ(Deimos Sky Survey)」が撮影した数枚の画像を連続再生したものです。左から右に流れていく何本もの線は、露光中にカメラが向きを変えたことで線状に撮影された恒星などの天体です。
これとは逆に、画像の中央付近で線にならずに写っている幾つもの光点は、カメラの動きと同調していた物体……つまり、夜空を高速で横切っていた「何か」ということになります。
その正体は、2009年9月に打ち上げられた「アトラスV」ロケットの一部を構成していた「セントール」という上段用のロケットステージ。セントールは一度止めたエンジンを再点火できるのが特徴で、静止軌道衛星や探査機など、幅広い打ち上げに用いられています。
2009年10月にNASAの月周回探査機「ルナー・リコネサンス・オービター(LRO)」を打ち上げた際にもセントールが使用されました。このとき、相乗りしていた探査機「エルクロス(LCROSS)」に月面から舞い上がる物質を観測させるための突入体として、不要になったセントールを月面に衝突させ、人為的に物質を舞い上がらせるという実験も行われています。
今回デイモス・スカイ・サーベイが撮影したセントールは、打ち上げから10年近くの間、高度6,675km~34,700kmの楕円軌道をずっと周回し続けていました。しかし、3月23日から25日にかけてのどこかの時点で、何らかの理由により破片が発生。アニメーション画像の中央で最も明るく見えていたセントール本体の周囲には、数十個の破片がある程度まとまった状態で漂っています。
こうした宇宙を漂う残骸のような物体は「スペースデブリ」や「宇宙ゴミ」などと呼ばれています。地球上では取るに足らないような小さな金属片も、宇宙空間では衝突することで人工衛星を破壊したり、宇宙ステーションに滞在する飛行士の命を脅かしたりする驚異となるのです。
現在、スペースデブリの発生を抑制したり、地球の周回軌道上から排除したりするための取り組みが急がれています。国内では、2016年12月に打ち上げられたJAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙ステーション補給機「こうのとり6号機」において、導電性のテザーを用いたデブリ除去の実験を実施(ただし不具合によりテザーは展開できず)。今年2月には、人工流れ星の実現を目指すベンチャー企業「ALE」とJAXAが、人工衛星のデブリ化を防ぐ技術の開発に向けた提携を発表しています。
そのいっぽうで、上記の画像が撮影されたのとほぼ同時期の3月27日には、インドが人工衛星の破壊実験を実施。追跡可能なものだけでも60個のデブリが発生しています。意図的なものにせよ不慮の事故にせよ、今後もスペースデブリは発生し続けるでしょう。
今回撮影されたセントールの破片は、デブリがどのように発生・拡散していくのかをシミュレートし、対策を講じる上で、貴重なデータになるものと受け止められています。
Image credit: Deimos Sky Survey
https://www.esa.int/Our_Activities/Operations/Space_Safety_Security/Rocket_break-up_provides_rare_chance_to_test_debris_formation
文/松村武宏
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