確かなデータにするために。宇宙望遠鏡「ガイア」は自身も観測対象になる

sorae.jp / 2019年5月3日 15時52分

こちらの画像は、ヨーロッパ南天天文台(ESO)に所属するパラナル天文台の「VLT Survey Telescope(VST)」によって撮影された、今年4月14日の星空です。時間を空けて計10回撮影された画像を合成しているため、その間に移動した星々が手ブレのように写っています。

画像の中央やや下には、星々よりも大きく移動している小さな光点の連なりが写っています。右上の拡大図にもその名が示されていますが、この光は欧州宇宙機関(ESA)が2013年12月に打ち上げた宇宙望遠鏡「ガイア」です。

およそ1年前となる2018年4月25日、欧州宇宙機関(ESA)は、ガイアの観測データをもとに作成した非常に詳細な銀河系の全天画像を公開しました。観測された星々の数は、およそ17億に達します。

ガイアの観測データをもとにした全天画像(Image credit: ESA/Gaia/DPAC)

ガイアは、星々までの「距離」と、その「運動」を高い精度でキャッチするために打ち上げられました。地球の近くを周回する国際宇宙ステーションやハッブル宇宙望遠鏡とは違い、月よりも遠く、地球と太陽の重力が釣り合う「ラグランジュ点」のひとつ「L2」の周辺で、今も観測を続けています。

天体までの距離を測るには、「年周視差」というものが用いられます。地上の天文台や宇宙望遠鏡から長い時間をかけて同じ天体を観測すると、地球や宇宙望遠鏡が太陽の周りを公転することで生じる、1年周期の見かけの動きが現れます。これが年周視差です。年周視差は近い天体ほど大きく、遠い天体ほど小さいので、年周視差からその天体までの距離を求めることができます。

また、長期間の観測によって、天体そのものが持つ運動である「固有運動」もわかります。天体は宇宙に対して静止しているわけではなく、どこかに向かって動いています。この動きが固有運動です。固有運動の向きや速度は天体によって異なるため、現在私たちが見ている星座も、遠い過去には形が異なっていましたし、これからも形が変わり続けることになります。

星々までの距離と固有運動は、過去の銀河系における出来事を紐解いたり、未来の銀河系の姿を予測したりするのに役立ちます。ガイアによって観測された17億の星のうち13億以上については、年周視差、固有運動、そして星の色がカタログにまとめられており、すでに多くの研究に役立っています。

ガイアの想像図(Image credit: ESA)

ただ、こうした星々の運動を正確に知るためには、ガイア自身の位置を正しく把握しなければなりません。ガイアの位置情報に誤差があれば、観測結果にもその誤差が影響を及ぼしてしまうからです。

地上の天文台であればGPSなどを利用してその位置を知ることができますが、地球からおよそ150万km離れたラグランジュ点L2にあるガイアの位置は、冒頭の画像のように、地上からの観測によって把握されます。およそ2日に1回(毎年180夜)のペースでガイアの位置を記録しているESOのVSTをはじめ、カナリア諸島のリバプール望遠鏡など、各地の天文台がガイアの位置記録に協力しています。

銀河の歴史を解き明かすための、地上と宇宙のコラボレーション。ガイアが任務を終えるまで、この支援は続きます。

 

Image credit: ESO
https://www.esa.int/Our_Activities/Space_Science/Gaia/Observing_Gaia_from_Earth_to_improve_its_star_maps
文/松村武宏

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