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超新星爆発のせい?銀河の外へ飛び出した連星系の存在

sorae.jp / 2019年5月29日 20時11分

こちらの画像は、「NGC 1399」(上)および「NGC 1404」(下)という2つの銀河をNASAのX線観測衛星「チャンドラ」が撮影したもの。X線で撮影したデータを擬似的に着色しています。

NGC 1399とNGC 1404は、どちらも南天の「ろ座」の方向およそ6000万光年の距離にある「ろ座銀河団」に属する銀河。ろ座銀河団は(宇宙の大きさからすれば)地球に比較的近い距離にあるため、詳細な研究が行える貴重な存在です。

南京大学のXiangyu Jin氏が率いる研究チームは、チャンドラによって撮影されたろ座銀河団の方向にあるおよそ1200個のX線天体のうち30個ほどが、ろ座銀河団の銀河を飛び出してしまった「連星」(太陽のような恒星、密度が非常に高い中性子星、ブラックホールなどの2つの天体が、互いに公転し合っている天体)であるとする研究結果を発表しました。

中性子星またはブラックホールと恒星のペアからなる連星では、恒星の一部が中性子星やブラックホールに捉えられて降着円盤を形成することで、強いX線を放つ「X線連星」になることがあります。Jin氏らのチームがろ座銀河団の方向にあるX線天体を統計的に分析したところ、本来なら銀河の外に存在するはずのないX線連星が含まれていることがわかったといいます。

X線連星の想像図(Credit: NASA)

銀河を形作る天体は中心を周回するように動いていますが、ごくまれに、銀河を飛び出してしまうほどの高速で動く天体があります。今回存在が確認されたとするX線連星も、何らかの理由で加速を受けてしまい、銀河から脱出してしまったものと思われます。

その原因と考えられているのが、超新星爆発です。超新星爆発のエネルギーは夜空に輝く打ち上げ花火のように放射状に広がりますが、花火の形が崩れてしまうようないびつな超新星爆発が起こった場合、放出されるエネルギーにも偏りが生じると考えられています。

すると、超新星爆発で生み出された中性子星やブラックホールは、この偏ったエネルギーの放出によって、どこかの方向へ猛烈な勢いで加速されると予想されています。このとき、爆発した星とペアを組んでいた別の星も巻き込まれ、連星を形作ったまま銀河の外に放り出されてしまったものが、Jin氏らの研究によって存在が示唆された銀河の外にあるX線連星ではないか……というわけです。

冒頭の画像はX線で撮影されているため、小さな点のどれかが銀河から飛び出してしまったX線連星である可能性もありますが、今回の研究は統計的手法によってデータを分析したものであるため、そのような連星がどこに位置するのかまではわかりません。

「暗すぎて見つかっていない連星が、まだまだたくさんあるかもしれない」と語るJin氏。銀河から恒星が飛び出してしまう現象も、宇宙のスケールでは意外とひんぱんに起こっているのかもしれません。

 

Image credit: NASA/CXC/Nanjing University/X. Jin et al.
https://www.nasa.gov/mission_pages/chandra/news/chandra-finds-stellar-duos-banished-from-galaxies.html
文/松村武宏

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