小さくても中身はがっしり。超大質量ブラックホールを持つ活発な矮小銀河
sorae.jp / 2019年6月14日 21時36分
こちらの画像は、南天の「らしんばん座」の方向およそ3000万光年離れたところにある矮小銀河「ESO 495-21」の姿です。ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている掃天観測用高性能カメラ「ACS」と、以前搭載されていた広域惑星カメラ2「WFPC2」によって撮影されました。
矮小銀河という分類が示すとおり、ESO 495-21の大きさは差し渡しおよそ3000光年と、直径約10万光年とされている天の川銀河の3パーセント程度しかありません。円盤や腕といった明確な特徴も見られず、その構造は不明瞭です。
そのいっぽう、ESO 495-21では新しい恒星が次々と誕生していることから、天の川銀河の1000倍ものペースで星が誕生することもある「スターバースト銀河」のひとつとしても数えられています。
サイズの小ささ、不明瞭な形状、そして活発な星形成活動といった特徴を併せ持ったESO 495-21は、宇宙の初期の頃に形成された銀河に似ているのではないかと考えられています。
そんなESO 495-21の中心には、太陽のおよそ100万倍の質量を持つ超大質量ブラックホールが存在するとも予想されています。天の川銀河の中心にあるとされている超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」の質量が太陽のおよそ400万倍といいますから、銀河全体のサイズに対してとても大きなブラックホールを抱えていることになります。
銀河の中心にある超大質量ブラックホールには、まだまだわからないことがたくさんあります。そのひとつに、「鶏と卵のどちらが先か」といった命題にも似た、「銀河と超大質量ブラックホールは、どちらが先に誕生したのか」という謎があります。
ESO 495-21が初期宇宙の銀河に似ていて、そのサイズに不釣り合いなほど重いブラックホールを抱えているということは、初期の宇宙では質量の大きなブラックホールが先に誕生し、これを核にして銀河が成長していったというプロセスを示している可能性があります。
小さくも活発に星を産み出しているESO 495-21は、宇宙全体のスケールからすればご近所といえるほど近くにある銀河ですが、はるか遠くに過ぎ去った初期宇宙の謎を解く鍵になる存在なのかもしれません。
Image credit: NASA, ESA, W. Vacca
https://www.spacetelescope.org/news/heic1911/
文/松村武宏
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