太陽系の常識は通用しない。系外惑星「GJ 3470 b」の凄まじい大気組成が判明
sorae.jp / 2019年7月6日 21時28分
NASAのジェット推進研究所(JPL)は7月2日、NASAの宇宙望遠鏡「ハッブル」や「スピッツァー」を使ったBjörn Benneke氏らによる研究によって、系外惑星の大気組成を初めて詳細に観測したと発表しました。
観測の対象となったのは、「かに座」の方向およそ97光年先にあるM型の恒星「GJ 3470」を3.3日で公転している系外惑星「GJ 3470 b」です。GJ 3470 bは主星であるGJ 3470にあまりにも近いため、加熱された大気が宇宙空間に脱出し続けていると見られています。
今回Benneke氏らは、GJ 3470 b(系外惑星)がGJ 3470(主星)の手前を横切る「トランジット」を12回、主星の後ろに隠れる「食」を20回に渡り観測。その様子を「分光法」という光を波長ごとに調べる手法を用いて解析することで、GJ 3470 bの大気組成を調べることに成功しました。
その結果、当初は水蒸気やメタンが存在する海王星のような大気(酸素や炭素といった比較的重い元素を含む)が予想されていたものの、実際には水素やヘリウムといった軽い元素でできた、太陽系では木星のような大気を持っていることが判明しました。
主星の非常に近くを公転する木星に似た系外惑星は「ホット・ジュピター(熱い木星)」と呼ばれています。木星のようなガス惑星は主星よりも離れたところで形成されると考えられており、ホット・ジュピターは誕生後のガス惑星が主星の近くまで移動したものであるとされてきました。
しかし、岩石のコアを持つと予想されているGJ 3470 bはそのような移動を経験しておらず、今日観測されている場所で誕生したと見られており、太陽系の惑星とはまた違った過程を経て今の姿になったようです。Benneke氏によれば、太陽の半分の重さを持つGJ 3470がまだ若いうちに原始惑星系円盤から水素やヘリウムを急速に取り込んだとすれば、GJ 3470 bの大気組成の謎を説明できるといいます。
なお、GJ 3470 bの重さは地球の12.6倍で、海王星(地球の17倍の重さ)よりも軽め。以前その灼熱ぶりを紹介した際には「ホット・ネプチューン(熱い海王星)」と呼びましたが、重たい地球タイプの系外惑星を指す「スーパーアース」に分類されることもあるようです。
分類が難しい微妙なサイズですが、天の川銀河で同程度の質量を持っている系外惑星は全体の8割に達するとも予想されており、実はありふれた重さの系外惑星なのかもしれません。
Image Credit: NASA, ESA, and L. Hustak (STScI)
https://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?feature=7444
文/松村武宏
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