ほぼ光速に達している。超大質量ブラックホールの自転速度を測定成功
sorae.jp / 2019年7月10日 22時45分
NASAは7月3日、オクラホマ大学のXinyu Dai氏らによるX線観測衛星「チャンドラ」を利用した研究によって、遠方宇宙にある超大質量ブラックホールの自転速度を測定することに成功したと発表しました。
観測の対象となったのは、98億から109億光年先にある「クエーサー」。クエーサーは周囲の物質を活発に飲み込む超大質量ブラックホールの存在を示すものとされており、飲み込まれつつある物質によって形成された降着円盤の輝きは、ブラックホールが存在する銀河をも上回るほどです。
ただ、どんなクエーサーでも良かったわけではありません。研究チームが選んだのは、クエーサーと地球との間に別の銀河が存在することで生じる「重力レンズ」効果によって、複数の像に分かれて見える5つのクエーサーです。そのなかには、重力レンズの存在を予言したアルベルト・アインシュタインにちなんで「アインシュタインの十字架(Einstein Cross)」と名付けられた「Q2237+0305」(以下「Q2237」)も含まれています。
研究チームは、重力レンズ効果をもたらす銀河のなかにある恒星によって生じる「重力マイクロレンズ」効果も利用して、背後にあるクエーサーから発せられたX線をチャンドラで観測しました。その結果、Q2237に存在するとみられる超大質量ブラックホールの自転速度はほぼ光速に達しており、その他のクエーサーはその半分ほどの速度で自転していることが判明しました。
発表では、なぜそこまでの速さで自転できるのかについても言及されています。それによると、自身の自転と一致する方向から何十億年にも渡って物質の供給を受けることで、ブラックホールは成長すると同時に自転速度を加速させていったといいます。
ブラックホールの周囲に形成される降着円盤はブラックホールの自転方向と揃うので、そこから物質が流れ込むことで、自転そのものが正のフィードバックを受けて加速され続けることになるわけです。
人類が直接撮像に成功したブラックホールは、今のところ楕円銀河「M87」の中心にある超大質量ブラックホールのみ。その他のブラックホールはあくまでも仮定の存在ではあるのですが、もはやブラックホール抜きでは説明できない天体も数多く、現在ではその存在が当たり前のものとして研究が進められています。
Image Credit: NASA/CXC/Univ. of Oklahoma/X. Dai et al. NASA’s Goddard Space Flight Center; background, ESA/Gaia/DPAC
http://chandra.harvard.edu/photo/2019/quasars/
文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
1秒間に716日が過ぎる! 自転が最速の中性子星の1つ「4U 1820-30」を発見
sorae.jp / 2024年11月17日 21時0分
-
宇宙の膨張は、約50億年前に相対性理論から乖離か? ジュネーブ大の研究
財経新聞 / 2024年11月13日 16時39分
-
限界の40倍以上で成長? 初期宇宙の巨大なブラックホールをウェッブ宇宙望遠鏡が観測
sorae.jp / 2024年11月8日 21時53分
-
宇宙初期の超大質量ブラックホール、誕生の謎解明か NASAらの研究
財経新聞 / 2024年11月8日 9時47分
-
ブラックホール連星「はくちょう座V404星」は三重連星だった可能性
sorae.jp / 2024年11月1日 21時58分
ランキング
-
112月から移行される「マイナ保険証」5つのメリットと4つの注意点をFPが解説
MONEYPLUS / 2024年11月29日 7時30分
-
2「一人暮らしの老後」を充実させるコツ3つ
オールアバウト / 2024年11月28日 21時40分
-
3ホコリが積もると火事に…コンセント周辺の掃除をサボると危険! 確認すべき5つのポイント
オトナンサー / 2024年11月28日 20時10分
-
4急な「めまい」発作の"引き金"となる6つの要因 とくに急激な「気圧の変化」には注意が必要
東洋経済オンライン / 2024年11月28日 20時0分
-
5和田秀樹「ウォーキングよりもずっと効果的」…シュッとした中高年は知っている「ヨボヨボ老後」を防ぐ方法
プレジデントオンライン / 2024年11月29日 9時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください