予想に反した存在。弱い活動銀河のブラックホール周辺に超小型降着円盤を確認
sorae.jp / 2019年7月14日 17時45分
NASAとESA(欧州宇宙機関)は7月11日、イタリアのStefano Bianchi氏をはじめとした国際研究チームのハッブル宇宙望遠鏡を使った観測によって、活動レベルの低い活動銀河の超大質量ブラックホールにも予想に反して降着円盤が存在したとする研究結果を発表しました。
銀河のなかには、中心付近の非常に狭い領域から強い電磁波を放つものがあります。こうした銀河のことを活動銀河と呼び、活発な中心部は活動銀河核と呼ばれています。
そんな活動銀河にも幾つかの種類があります。遠方銀河の観測でよく話題に上るクエーサーは、特に活動レベルが高いものの一つ。その反対に、それほど活発には電磁波を放っていない、活動レベルの低い活動銀河も存在します。
今回の研究で観測対象となった渦巻銀河「NGC 3147」は、地球からは「りゅう座」の方向およそ1億3000万光年先に存在しています。NGC 3147は「セイファート銀河」という活動銀河に分類されていますが、中心に存在するとされる超大質量ブラックホールはガスや塵などの物質をあまり捕獲できておらず、その活動レベルは活動銀河核としては低い状態にあります。
クエーサーのように活動レベルが高い活動銀河核では、ブラックホールに落下する物質によって降着円盤が形成されます。いっぽう、活動レベルが低いNGC 3147のような銀河の超大質量ブラックホールの場合、周囲の物質の量が少ないことから平らな降着円盤は形成されず、ドーナツのように膨らんでいるだろうと考えられてきました。NGC 3147が観測対象に選ばれたのも、この予想を裏付けることが目的だったのです。
ところが、ハッブル宇宙望遠鏡に搭載されている「宇宙望遠鏡撮像分光器(STIS)」を使ってNGC 3147の中心部分を詳しく調べた結果、光速の10%以上で回転する非常にコンパクトな降着円盤が観測されました。活動レベルや規模は異なりますが、まるでクエーサーの周囲にあるのと同じような降着円盤が存在していたのです。
これはまったく予想外の発見だったようで、Bianchi氏は「活動レベルが微弱な活動銀河に対する従来の予測は明らかに誤りでした」とコメントしています。
そんなNGC 3147の降着円盤は、あまりにもブラックホールに近いところに存在しているため、そこから放たれた電磁波は非常に強い重力によって波長が伸びてしまい、可視光線では赤っぽく輝いて見えます。これは一般相対性理論で説明される現象です。
また、回転速度が非常に速いため、降着円盤の回転方向が地球に向かってくる側からの光は強くなり、遠ざかる側からの光は弱まって見えます。これは「相対論的ビーミング」と呼ばれる現象で、特殊相対性理論で説明することが可能です。
研究チームに衝撃を与えたNGC 3147の超大質量ブラックホールとその降着円盤は、アインシュタインの一般相対性理論と特殊相対性理論、両方の効果を同時に見せてしまうほどの強烈な個性の持ち主だったようです。
今回の発見を踏まえて、研究チームは、同種のコンパクトな降着円盤をさらに見つけるために、活動銀河に対するハッブル宇宙望遠鏡を使ったさらなる観測を希望しています。
Image Credit: ESA/Hubble, M. Kornmesser
https://www.spacetelescope.org/news/heic1913/
文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した“おとめ座”の渦巻銀河「NGC 5668」
sorae.jp / 2024年9月17日 21時20分
-
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影 “ぼうえんきょう座”の渦巻銀河「IC 4709」
sorae.jp / 2024年9月3日 21時3分
-
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した小マゼラン雲の散開星団「NGC 346」
sorae.jp / 2024年8月30日 21時56分
-
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影 “きりん座”の渦巻銀河「UGC 3478」
sorae.jp / 2024年8月29日 21時15分
-
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影 幅広の腕が渦巻く“ケフェウス座”の棒渦巻銀河「UGC 11861」
sorae.jp / 2024年8月21日 20時19分
ランキング
-
1なぜ「肌の接触」が必要なのか? ハグやマッサージが幸福感をもたらす理由
ニューズウィーク日本版 / 2024年9月19日 17時50分
-
250代から急増する薄毛の悩み!薄毛危険度チェックで確認&早めの対策を
ハルメク365 / 2024年9月19日 16時0分
-
3小泉進次郎を称賛し、自民党に投票するのは「レベルが低い」から? 知的エリートが陥りやすいワナ
オールアバウト / 2024年9月19日 21時15分
-
4「特需」に沸き立つ日本の港湾用クレーンメーカー…米中対立の余波で“棚ボタ”ウハウハ(重道武司)
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月19日 9時26分
-
5若者にも増加中…「スマホ老眼」を治す一番の近道は?【一生見える目をつくる】
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年9月19日 9時26分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください