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できるだけ現地調達。持続的な有人探査を支えるために月面の「レゴリス」を活用

sorae.jp / 2019年7月20日 11時7分

アポロ11号の月面着陸から間もなく50年となりますが、2024年に「アルテミス」計画として再開される予定の有人月面探査を継続していくための手段のひとつとして、月の表面を覆う「レゴリス」が注目されています。欧州宇宙機関(ESA)は7月18日、月面に建設する基地や道具の材料としてレゴリスを活用するべく進められている研究内容を紹介しました。

50年前のアポロ計画では宇宙飛行士が月面に滞在したのは長くても3日間だったため、月着陸船だけで過ごすことができました。ところが、今後の有人月面探査ではより長期間に渡り宇宙飛行士を月面に滞在させることが検討されています。

そのためには月面に居住基地や発電設備を建設したり、さまざまな道具を調達したりする必要があります。しかし、基地の材料や必要な道具をすべて地球から持ち込もうとした場合、物資の輸送にそれだけ多くのリソースを割かなければなりません。それに、万が一地球からの補給が滞った場合、宇宙飛行士が危険な状況に置かれる可能性も高まります。

そこで現在研究が進められているのが、月面で大量に入手できるレゴリスを利用する方法です。とても細かな砂や粉塵が集まってできたレゴリスを材料に、建物や道具などを3Dプリンターで作成することで、地球から持ち込む物資の量を減らそうというわけです。

3Dプリンティングの技術を使って試験的に作られた建材。中空構造による軽量化が考慮されている。重さ1.5トン(Credit: ESA)

また、レゴリスは材料としてだけではなく、蓄熱や発電にも利用されることが期待されています。月の夜は2週間も続き、表面の温度は摂氏マイナス173度にまで低下します。その間は太陽光発電が使えないため、長い月の夜を乗り切るには電力と熱源の確保が重要です。

今回ESAが紹介している研究では、アポロ計画で持ち帰られた月面のサンプルを参考に地球で作られた「人工レゴリス」のブロックを使って、この問題を解決することに挑戦。月面の環境を再現した実験装置に人工レゴリスのブロックを置いて熱を蓄えさせたあと、その熱を電気へ変換することに成功しました。レゴリスが材料として役立つだけでなく、エネルギーの確保にも利用できることを実証した形です。

人工レゴリスのブロック。大きさは14cm×8.5cm×5cm(Credit: ESA/Azimut Space)

研究にたずさわるLuca Celotti氏が「ほんの最初のステップです」と語るように、レゴリスを使った発電システムはまだまだ研究途上にあります。しかし、月面基地の建設や維持に必要な材料や消費資源をなるべく現地調達し、地球への依存度を低めるためのテクノロジーは、持続的な月面探査を進める上で欠かせないものとなるはずです。

 

Image Credit: RegoLight, visualisation: Liquifer Systems Group, 2018
https://www.esa.int/Our_Activities/Preparing_for_the_Future/Discovery_and_Preparation/Powering_the_future_with_lunar_soil
文/松村武宏

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