太陽に似た恒星の最期を予感させる観測結果
sorae.jp / 2019年7月26日 22時30分
オーストラリア国立大学は7月26日、“死”に向かいつつある恒星「こぐま座T星」を分析したMeridith Joyce氏らの研究結果を紹介しました。研究内容は論文にまとめられ、7月5日付でThe Astrophysical Journalに掲載されています。
![](https://sorae.info/wp-content/uploads/2019/07/potw1227a.jpg)
ガスを放出して一生を終えつつある赤色巨星「きりん座U星」。太陽もこのような最期を迎えると予想されている
こぐま座T星は地球からおよそ3000光年先にある赤色巨星で、質量は太陽のおよそ2倍、誕生からは約12億年が経っていると分析されています。明るさが周期的に変化する変光星であることが知られており、20世紀前半から今日まで100年以上に渡って明るさの変化が記録され続けています。
Joyce氏によると、こぐま座T星に関するこの30年間の記録を分析してみると、その大きさ、明るさ、温度のいずれもが徐々に減ってきていることがわかるといいます。
太陽の8倍よりも軽い恒星は、核融合を支えてきた水素が恒星の中心部からなくなってしまうと、より外側にある水素で核融合を続けながら巨大化して、赤色巨星に進化します。やがて赤色巨星は燃え残った水素などを周囲に放出し、燃え殻の中心核だけが残された白色矮星となります。
白色矮星は核融合をせず、徐々に冷えていってしまいます。つまり白色矮星は、死を迎えた恒星の姿とも言い表せます。私たちの太陽もおよそ50億年後には白色矮星となって、恒星としての一生を終えることになります。
今回Joyce氏は、長年に渡る観測結果と最新のシミュレーション技術を組み合わせて、こぐま座T星の変光周期やサイズの変化を調査しました。その結果、こぐま座T星は赤色巨星の末期においてヘリウムが激しく燃焼する「ヘリウム殻フラッシュ」を起こす段階にあり、ここ最近のサイズ、明るさ、温度の減少は、次のヘリウム殻フラッシュが今まさに始まりつつあることを示していると分析しています。
「熱パルス」と呼ばれることもあるヘリウム殻フラッシュは断続的に繰り返されるため、明るさやサイズが変化する様子をグラフに描くと、まるで心拍のようにも見えます。Joyce氏が「最後のパルスのひとつ」と表現しているように、白色矮星という最期に向かってこぐま座T星が繰り返す脈拍の1つが始まる瞬間を、人類は目の当たりにしているのです。
「恒星が年老いていく様子を人間のタイムスケールで観測できる貴重な機会です」とJoyce氏は語ります。数万年、数億年という規模で語られる宇宙のさまざまな出来事に比べれば、恒星の最期はきわめて短時間のうちに進行する現象なのです。
Image Credit: ESA/Hubble, NASA and H. Olofsson (Onsala Space Observatory)
https://www.anu.edu.au/news/all-news/star-nearing-death-offers-a-preview-of-our-sun%E2%80%99s-fate
文/松村武宏
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