たった5分間の観測データが、地球外生命探査の行方を大きく左右するかも
sorae.jp / 2019年8月6日 23時15分
NASAは8月2日、コロラド大学ボルダー校のKevin France氏らが計画している新しい観測手法と、その意義を紹介するリリースを公開しました。
■その酸素、本当に生命由来?地球以外の天体で生命を探すにあたっては、酸素の存在が重要な指標になるとされています。現時点では探査機を送り込むことができない太陽系外惑星においては、生命活動によって大気中に蓄積された酸素を検出できるかどうかが一つの鍵になります。
ところが、大気中に酸素が見つかったとしても、それが必ずしも生命の存在を意味するとは限りません。特に注意すべきはM型の恒星を周回する系外惑星です。
M型の恒星は天の川銀河に存在する恒星の4分の3を占めるメジャーな存在で、多くの系外惑星がM型星で見つかっています。M型星は太陽(G型星)より小さいものの恒星としては活発で、強い紫外線を放出することがあります。
France氏らのチームによるシミュレーションでは、M型星を周回する初期の地球のような系外惑星の大気に二酸化炭素が含まれていた場合、強い紫外線によって二酸化炭素から炭素原子が取り除かれて、酸素分子が残されます。そのため、系外惑星の大気に酸素が見つかったとしても、それが主星の強い紫外線によって作り出されたものではないと判断されない限り、生命の兆候とみなすことはできないのです。
■恒星の性質を見透かす観測装置「システィーナ」France氏らが計画しているのは、系外惑星が周回する主星を紫外線で観測すること。特に、無生物的なプロセスで酸素を生成し得る波長100~160nmの遠紫外線や、生命にとって危険なフレアの発生状況を観測することで、主星がどのような活動をしているのかを確かめるとともに、系外惑星の大気に含まれる酸素が示す意味を解釈する上での助けとするのが目的です。
観測に使用されるのは、今回新たに開発された「SISTINE」という装置。これは「Suborbital Imaging Spectrograph for Transition region Irradiance from Nearby Exoplanet host stars」の略で、有名なローマのシスティーナ礼拝堂(英:Sistine Chapel)と同じ綴りです。
SISTINEは科学観測などに用いられるサウンディングロケット「ブラック・ブラントIX」で打ち上げられます。地球を周回する軌道には乗らず、高度約280kmの上空から”5分間”だけ、地球から4.37光年先にある恒星「アルファ・ケンタウリA」と「同B」を紫外線で観測することになっています。
アルファ・ケンタウリの観測は2020年に実施される予定ですが、これに先立ち、SISTINEの調整を目的としたはくちょう座の惑星状星雲「NGC 6826」の観測が今月中にも実施されます。
SISTINEによるわずか5分間の観測が、将来の地球外生命探査の行方を大きく左右することになるかもしれません。
Image Credit: NASA/GSFC/F. Reddy
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2019/shining-starlight-on-the-search-for-life
文/松村武宏
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