高速で自転するパルサーの加速現象「グリッチ」を詳細に観測した研究成果
sorae.jp / 2019年8月13日 21時30分
X線観測衛星「チャンドラ」によって撮影されたほ座パルサー
オーストラリアのモナシュ大学は8月13日、パルサーの自転が瞬間的に速まる「グリッチ」と呼ばれる現象に迫ったGreg Ashton氏らの研究成果を発表しました。研究内容は論文にまとめられ、8月12日付でNature Astronomyに掲載されています。
■パルサーの5%はときどき自転が速くなるパルサーとは、恒星の超新星爆発によって誕生した高密度の中性子星のうち、パルス状の電磁波(光、電波、X線など)が観測されるものを指します。
中性子星の自転軸に対して磁軸が傾いている場合、磁極から宇宙空間に放出された電磁波のビームが自転周期に従って断続的に地球に届くことがあるのですが、中性子星の自転速度は非常に速いため、まるで点滅しているように観測されるのです。
この動画は、ヨーロッパ南天天文台(ESO)が公開しているパルサー「PSR J0348+0432」の想像図。小さいほうがパルサーで、大きいほうは連星系としてペアを組む白色矮星です。パルサーの自転に伴い、ビームがくるくると回転している様子がよくわかります(実際のPSR J0348+0432の自転周期は40ミリ秒と非常に短く、回数にすれば1秒間に25回と極めて高速で自転しています)。
電磁波が明滅する周期を測ることで、パルサーの自転速度はかなり精密に求めることができます。数多くのパルサーが見つかっている現在では、自転速度がときどき急激に速くなり、徐々に減速していくという変わった特徴を示すパルサーが知られています。この急激な加速は「グリッチ(glitch)」と呼ばれていて、パルサー全体のおよそ5%だけに見られる現象です。
■3年ごとにグリッチを繰り返す「ほ座パルサー」Ashton氏らの研究チームは、南天の「ほ座」の方向およそ1000光年先にあるパルサー「ほ座パルサー」で2016年に発生したグリッチを観測しました。ほ座パルサーの自転周期は89ミリ秒ほど(1秒間におよそ11回自転)ですが、約3年ごとにグリッチを繰り返すことが知られており、Ashton氏をはじめとした研究者によって繰り返し観測されています。
今回の精密な観測によって、ほ座パルサーにおけるグリッチ発生時の自転速度はややオーバーシュートしており、13秒未満という短時間で最大速度まで急加速したのちにわずかに減速してから落ち着いていく様子が判明しました。例えるなら、自動車を急加速したときにタイヤが一旦スピンしてしまい、そのすぐあとに路面をグリップするようなイメージです。
■ほ座パルサーで見つかったグリッチ直前の減速現象ところが、オーバーシュートは事前に予想されていたものの、予想外の変化も見つかりました。グリッチによってほ座パルサーの自転速度が加速される直前、自転速度が一時的に減速していたのです。
グリッチが発生する原因として、パルサーの内部を高速で流れる超流体と、パルサーの外側にある固体の殻(クラスト)、それぞれの回転速度の差が挙げられています。
パルサーの自転速度は超新星爆発による誕生から長い時間をかけて徐々に減速していますが、パルサーの内部を流れる超流体は固体の殻よりも速く回転しているとみられており、時間が経つにつれて内外の速度差が広がっていくと予想されています。
この速度差がある限界を迎えたとき、超流体の運動エネルギーが急速に固体の殻へと流れ込み、結果としてパルサーの自転速度が急加速されるのではないかと考えられています。
今回見つかったグリッチ直前の減速が何を意味するのかは不明で、今後の観測や研究を待たなければなりませんが、研究チームはこの減速が引き金となってグリッチの発生が促されるのではないかと推測しています。
Image Credit: X-ray: NASA/CXC/Univ of Toronto/M.Durant et al; Optical: DSS/Davide De Martin
https://www.monash.edu/science/news/current/glitch-in-neutron-star-reveals-its-hidden-secrets
文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
海があるかも? 太陽系外惑星「LHS 1140 b」をウェッブ宇宙望遠鏡が観測
sorae.jp / 2024年7月18日 12時0分
-
総研大、機械学習を用いた「ガンマ線バースト」の距離測定方法を開発
マイナビニュース / 2024年7月9日 18時14分
-
ワープ航法は重力波を出す? 「アルクビエレ・ドライブ」の解析で判明
sorae.jp / 2024年7月4日 21時4分
-
まるで天界のように幻想的な光景 ほ座超新星残骸のクローズアップ
sorae.jp / 2024年6月28日 20時56分
-
周期は約1時間 観測史上最も自転が遅い中性子星「ASKAP 1935+2148」を発見
sorae.jp / 2024年6月21日 20時51分
ランキング
-
1「ユニクロ・GU・COSのTシャツ」全部買ってわかった“本当にコスパが高い傑作アイテム”
日刊SPA! / 2024年7月17日 18時37分
-
2イケアのモバイルバッテリーに“発火恐れ” 製造不良で一部自主回収…… 海外では事故も発生
ねとらぼ / 2024年7月17日 20時10分
-
31日5分で二重アゴ&首のシワを解消!魔法の顔筋トレ「あごステップ」HOW TO
ハルメク365 / 2024年7月17日 22時50分
-
4去勢された「宦官」は長寿集団だった…女性の寿命が男性よりもずっと長い理由を科学的に解説する
プレジデントオンライン / 2024年7月18日 8時15分
-
5なぜ?「N-BOX」新型登場でも10%以上の販売減 好敵「スペーシア」と異なる商品力の改め方
東洋経済オンライン / 2024年7月17日 9時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)