木星のアンモニアの雲の下を電波でキャッチ。アルマ望遠鏡で観測
sorae.jp / 2019年8月29日 0時18分
国立天文台は8月27日、木星の雲の下を「アルマ」望遠鏡で観測したカリフォルニア大学バークレー校のImke de Pater(インキー・ド・ペーター)氏らの研究成果を発表しました。
■木星の雲を電波で「透視」するアルマ望遠鏡木星の大気は水素とヘリウムが主成分ですが、表面に見えている雲の主成分はアンモニアです。木星探査機「ジュノー」から送られてくるクローズアップ画像や、先日「ハッブル」宇宙望遠鏡が撮影した木星の全体像でも映し出されていた茶色や白の雲は、アンモニアの氷でできているのです。
今回、ド・ペーター氏らの研究チームは、チリにあるアルマ望遠鏡を使って木星を観測しました。アルマ望遠鏡は電波を使うため、アンモニアの雲よりも下、可視光(人の目に見える光)では見ることのできない深い場所の様子を知ることが可能です。
こちらの画像は、アルマ望遠鏡で観測した木星の電波画像。アンモニアの雲から50km下の様子が示されており、明るい部分ほど温度が高く、暗い部分ほど温度が低い領域であることを意味します。
なお、明るい高温域は大気が下降して可視光では茶色く見え、暗い低温域は逆に上昇して白く見えます。木星の茶色と白の縞模様は、大気の上昇と下降にそれぞれ対応しているわけです。
■アンモニアが循環する様子を立体的に解明研究チームは2017年1月、「プルーム」と呼ばれる嵐が木星で発生した数日後にアルマ望遠鏡で木星を観測しています。ハッブル宇宙望遠鏡による可視光での観測結果と比較すると、小さな白い雲のように見えるプルームと同じ場所の温度が、周囲よりも低くなっていることがわかります。
ド・ペーター氏によると、アルマ望遠鏡を使った電波での観測によって木星の雲の下におけるアンモニアの立体的な分布が明らかになり、プルームによって木星の大気の深いところから表面に向けてアンモニアが運び上げられていることがわかりました。
研究に参加したアメリカ国立電波天文台(NRAO)のBryan Butler(ブライアン・バトラー)氏によると、アンモニアを豊富に含むガスが引き上げられて表面の雲を形成し、代わりにアンモニアの少ない大気が下降していくことを、アルマ望遠鏡によって作成されたアンモニアの分布図は示しているといいます。
また、この結果と「すばる」望遠鏡などによる可視光・赤外線・紫外線の観測結果を組み合わせることで、「木星のプルームは大気のより深い場所にある水(水蒸気)の雲の対流がきっかけで発生する」とする現在の理論が裏付けられたとしています。
Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), I de Pater et al.; NRAO/AUI NSF, S. Dagnello
https://alma-telescope.jp/news/jupiter-201908
文/松村武宏
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