NASAのX線宇宙望遠鏡が「花火銀河」で正体不明のX線源を発見
sorae.jp / 2019年9月5日 22時30分
NASAのジェット推進研究所(JPL)は9月4日、「花火銀河」として知られる渦巻銀河「NGC 6946」で見つかったX線源に関するHannah Earnshaw氏らの研究成果を発表しました。研究内容は論文にまとめられ、8月9日付でThe Astrophysical Journalに掲載されています。
■可視光線を伴わず急速に出現したX線天体X線を放つ天体そのものは、特にめずらしいわけではありません。ブラックホールを取り巻く降着円盤が発することもあれば、加熱されたガスや超新星爆発によってもX線は放射されますし、太陽のような恒星もX線を放っています。
しかし、NASAのX線宇宙望遠鏡「NuSTAR(ニュースター)」が花火銀河で発見したX線源(X線を放つ天体のこと)には、変わった特徴がありました。
まず、発見の10日前には目立ったX線源が存在していなかった場所に、突然明るいX線源が出現したこと。「ここまで明るいX線源が出現するのに10日間は短すぎる」とEarnshaw氏は語ります。別のX線観測衛星「チャンドラ」によるその後の観測では、この天体が出現したときと同じくらい素早く消滅したこともわかっています。
また、このX線源は、可視光線(人の目で見える光)を伴っていませんでした。突然発生する現象というと超新星爆発を連想しますが、超新星はX線だけでなく可視光線や赤外線などさまざまな波長の電磁波を発するので、今回見つかったX線源の候補からは除外されます。
■急速に破壊された天体が原因?花火銀河で見つかった4番目の超大光度X線源(ultraluminous X-ray source:ULX)であることから「ULX-4」と名付けられたこのX線源について、研究チームは、比較的小さな天体がブラックホールによって破壊されたことで発生した可能性を挙げています。
ブラックホールに天体が引き寄せられると、強い潮汐作用によって破壊され、降着円盤となってブラックホールに付着します。このとき、ブラックホールを高速で周回する降着円盤の内側部分の温度が数百万度に加熱されることでX線が放射されます。
研究チームは、銀河中心に存在が確実視されているような超大質量ブラックホールの場合、こうした出来事は数か月から数年のタイムスケールで進行するものの、より軽い恒星質量ブラックホールや中間質量ブラックホールに小さな恒星または大きな惑星が吸い寄せられた場合は破壊が急速に進行して、今回のように短期間だけX線で強く輝くULXとして観測されたことが考えられるとしています。
また、別の可能性として、中性子星の存在も挙げられています。中性子星でも、ブラックホールのように降着円盤が形成されることがあります。高速で自転する中性子星の場合、普段は磁場によって物質の落下が妨げられているものの、何らかのタイミングで中性子星の表面に物質が到達したことで、短期間だけ強いX線が放射された可能性があるとしています。
どちらが原因かはわかっていませんが、いずれにしても、高密度の天体に付着する物質が引き起こした「とても珍しく極端な現象」を理解する上での一歩になるだろう、とEarnshaw氏はコメントしています。
Image Credit: NASA/JPL-Caltech
https://www.jpl.nasa.gov/news/news.php?feature=7495
文/松村武宏
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