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生命居住可能領域にある太陽系外惑星で水蒸気を初検出

sorae.jp / 2019年9月12日 17時20分

NASAは9月12日、太陽系外惑星「K2-18b」の大気中に水蒸気を発見したとするAngelos Tsiaras氏らの研究成果を発表しました。研究内容は論文にまとめられ、9月11日付でNature Astronomyに掲載されています。

大気から水蒸気が検出された系外惑星「K2-18b」(右)の想像図

■ハッブル宇宙望遠鏡の観測データから水蒸気の存在を検出

K2-18bは「ケプラー」宇宙望遠鏡によって2015年に発見された系外惑星です。「しし座」の方向およそ110光年先にあるM型の恒星「K2-18」を30日ほどで公転しており、その軌道は主星(恒星)からの距離がほどよく生命の存在が期待できる「ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)」に入っています。

京都大学の系外惑星データベースによると、K2-18bの直径は地球の約2.4倍、質量は約8.9倍で、地球と海王星の中間にあたるサイズです。そのため、NASAの発表では「スーパー・アース」と呼ばれていますが、同データベースでは「サブ・ネプチューン」に分類されています。

系外惑星の観測手法のひとつに、惑星が主星の手前を横切る「トランジット」現象を利用するものがあります。このとき、横切った系外惑星が大気を持っていると、大気を通過してきた主星の光を詳しく分析することで、系外惑星の大気にどんな物質が含まれているのかを調べることができます。

今回Tsiaras氏らの研究チームは、2016年と2017年に「ハッブル」宇宙望遠鏡の「広視野カメラ3(WFC3)」によって撮影されたデータを、独自開発したアルゴリズムを使って解析しました。観測期間中にK2-18b(系外惑星)はK2-18(主星)の手前を9回横切っており、その様子からK2-18bの大気組成を調べたのです。

その結果、水素やヘリウムといった宇宙ではありふれた元素に加えて、水蒸気の存在が明らかになりました。これは、ハビタブルゾーンにある系外惑星の大気組成が判明した初の事例であると同時に、水の存在を示す強力な証拠となります。

■大気の詳細を知るにはさらなる観測が必要

ただ、Tsiaras氏が「第二の地球ではない」とコメントしているように、K2-18bの環境は地球と異なる部分が目立ちます。地球の8倍以上の質量を持つ大きな惑星であることや、主星もフレアを起こしやすいM型星であることから、地球型の生命にとってはきびしい環境が広がっているかもしれません。

また、研究チームはK2-18bの大気中に窒素やメタンといった分子が存在することも予想していますが、今回の解析では検出されませんでした。大気中の水蒸気量や、雲がどれくらいの範囲を覆っているのかといった大気のより詳しい情報については、NASAの「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡をはじめとした次代の観測手段を待たねばなりません。

それでも、ハビタブルゾーンに存在する系外惑星の大気から水蒸気が見つかったことは大きな一歩です。Tsiaras氏が「『地球は特別なのか?』という根本的な質問の答えに近付くもの」と語るように、K2-18bは今後の系外惑星研究においても重要な観測対象となるでしょう。

 

Image Credit: ESA/Hubble, M. Kornmesser
https://www.nasa.gov/feature/goddard/2019/nasa-s-hubble-finds-water-vapor-on-habitable-zone-exoplanet-for-1st-time
https://www.spacetelescope.org/news/heic1916/
文/松村武宏

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