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時空のゆがみが作り出す「銀河のドラゴン・アーク」

sorae.jp / 2019年9月15日 11時20分

くじら座の方向、約40憶光年先にあるこの天体は「Abell(エイベル) 370」と呼ばれる銀河団です。この銀河団には約8000個の銀河が存在し、2つの巨大な楕円銀河がその中心に位置しています。画像右下に青白く鋭い光を放っているのは私たちの銀河系にある星が映り込んだものですが、その他の多くの光はそれぞれが1つの銀河となっています。

一方で画像中心部のやや左下に、青みがかった弧のようなものが見えます。「ドラゴン・アーク」という愛称も付けらているこの光は実際にはAbell 370よりさらに2倍の距離にある複数の銀河で、そこから来た光が Abell 370 の巨大な質量・重力により拡大され、ゆがめられて映っているものです。

この巨大質量の大部分はダークマターと呼ばれる見えない物質とされており、ちょうどレンズと同じような効果を生むことからこのような現象を「重力レンズ」と呼びます。重力レンズはアインシュタインが予言した時空のゆがみによる結果で、これを逆に活用して遠方の銀河を観測することで、初期宇宙の情報を得ることができます。

この画像はハッブル宇宙望遠鏡により撮影されたもので、重力レンズ効果を利用して遠方の銀河を集中的に観測したFrontier Fieldsプロジェクトの一枚です。「ドラゴン・アーク」は画像の中では小さく見えますが、周囲の光のそれぞれが私たちの銀河系のようなサイズであることを考えると非常に巨大であり、重力レンズによって作り出された像であるとはいえ「ドラゴン」と呼ぶに値するのではないでしょうか。

 

Image Credit: NASA, ESA, Jennifer Lotz and the HFF Team (STScI)
https://apod.nasa.gov/apod/ap170506.html
文/北越康敬

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