光とX線が同時に明滅する”ミリ秒パルサー”を初観測
sorae.jp / 2019年9月16日 21時25分
欧州宇宙機関(ESA)は9月13日、X線や電波だけでなく光でも明滅するミリ秒パルサーを初めて発見したとするAlessandro Papitto氏らの研究成果を発表しました。
研究内容は論文にまとめられ、9月9日付でThe Astrophysical Journalに掲載されています。
パルサーとは、恒星の超新星爆発によって誕生した高密度の中性子星のうち、電波、光(赤外線や紫外線も含む)、X線といった電磁波がパルス状に観測されるものを指します。
このような中性子星では、自転軸に対して磁軸が傾いていると考えられています。地球から見ると、磁極の方向に放出された電磁波のビームが自転周期に合わせて点滅しているように観測されることから、パルサーと呼ばれるようになりました。
今回の観測対象となったパルサー「PSR J1023+0038」は、1秒間に600回近くも自転しています。その周期はおよそ1.69ミリ秒で、パルサーのなかでも自転周期が極めて短いミリ秒パルサーに分類されています。
また、このパルサーは太陽のおよそ5分の1の質量を持つ伴星を従えて連星を形成しており、伴星からパルサーに流れ込んだ物質によって周囲に円盤が形成されているとみられています。
過去の研究において、PSR J1023+0038ではX線または電波を放出する期間が交互に入れ替わることが確認されています。円盤からパルサーに物質が降着しているときにはX線が放出され、降着していないときには磁場からの電波が観測されているものと考えられてきました。
自転周期が短いミリ秒パルサーは、自転周期が長い(といっても秒単位なのですが)パルサーが伴星からの物質の降着を経て進化したものと考えられており、PSR J1023+0038のようにX線と電波を交互に放出するパルサーはその過渡期にあたる天体として注目されています。
■X線と同期して明滅する光をミリ秒パルサーでは初めて観測今回Papitto氏らの研究チームは、ESAのX線観測衛星「XMM-Newton」やカナリア諸島にあるイタリアの「ガリレオ国立望遠鏡(TNG)」などを使い、PSR J1023+0038をさまざまな波長で観測しました。その結果、ミリ秒パルサーとしては初めて、光(可視光線)の波長で明滅していることが判明したのです。
ただ、この事実は研究チームを悩ませることになります。観測データを詳しく分析したところ、光とX線が同時に明滅していることが明らかになりました。これは光とX線が同じ仕組みによって放出されていることを示唆しますが、X線を生じる原因とされてきた円盤からの物質の降着によって生み出されたにしては、観測された光は明るすぎたのです。
そこで研究チームは、光とX線が同時に観測された理由を説明するために、パルサーから放たれる「パルサー風」(電子とその反粒子である陽電子の流れ)に由来する新たな理論モデルを構築しました。
このモデルでは、パルサーから放出されたパルサー風が円盤に吹き付けられることで、強力な電磁波(シンクロトロン放射)が生じるとしています。この電磁波は光とX線の双方で観測できるため、今回の観測結果と矛盾しません。また、円盤の物質はパルサー風によって降着を妨げられ、表面から100km程度の距離にまでしか接近することができないとされています。
なお、今回の研究で提唱された理論モデルではX線よりも光のほうが数百マイクロ秒(十分の数ミリ秒)だけ遅れて観測されるはずだとしていますが、今回の観測においてこの遅れは確認されていません。Papitto氏は理論モデルを裏付けるために、今後はこの遅れを正確に検出する必要があるとコメントしています。
Image Credit: ESA
ESA Science & Technology – Mysteriously in-sync pulsar challenges existing theories For the first time, astronomers have detected synchronised pulses of optical and X-ray radiation from a mysterious pulsar some 4500 light years away. The observations indicate that a new physical mechanism might be needed to explain the behaviour of fast-spinning sources like this one, known as transitional millisecond pulsars. For the first time, astronomers have detected synchronised pulses of optical and X-ray radiation from a mysterious pulsar some 4500 light years away. The observations indicate that a new physical…. description sci.esa.int文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
「中国天眼」、パルサーの発見数が1000個を突破―中国
Record China / 2024年11月28日 12時30分
-
1秒間に716日が過ぎる! 自転が最速の中性子星の1つ「4U 1820-30」を発見
sorae.jp / 2024年11月17日 21時0分
-
限界の40倍以上で成長? 初期宇宙の巨大なブラックホールをウェッブ宇宙望遠鏡が観測
sorae.jp / 2024年11月8日 21時53分
-
宇宙初期の超大質量ブラックホール、誕生の謎解明か NASAらの研究
財経新聞 / 2024年11月8日 9時47分
-
ブラックホール連星「はくちょう座V404星」は三重連星だった可能性
sorae.jp / 2024年11月1日 21時58分
ランキング
-
1“風呂キャンセル”は冬でもNG、界隈の人々に皮膚科医が忠告、「乾燥で体臭は拡がりやすくなる」
ORICON NEWS / 2024年11月29日 11時30分
-
2健康を保つための「食べ物」や「食べ方」はありますか?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月29日 13時20分
-
3プロ野球の観客動員が過去最多でも「球団格差」 コロナ前と比べて観客が増えた球団・減った球団
東洋経済オンライン / 2024年11月29日 9時10分
-
4ついに日本政府からゴーサイン出た! 豪州の将来軍艦プロジェクト、日本から輸出「問題ありません!」 気になる提案内容も明らかに
乗りものニュース / 2024年11月29日 6時12分
-
5ワークマンの「着る断熱材」がスゴイ! 寒さも暑さも感じない「無感覚アウター(レディース)」を着てみた
Fav-Log by ITmedia / 2024年11月23日 9時50分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください