ヴァンパイア・スターの強烈な赤い光
sorae.jp / 2019年10月6日 21時19分
画像の中心にある「Rレポリス」という星は「ハインドのクリムゾン・スター(真っ赤な星)」としても知られ、夜空の中でも一際目立つ強烈な赤い光を放っています。「ハインド」はこの星を発見した19世紀のイギリスの天文学者ジョン・ラッセル・ハインドのことで、望遠鏡を覗いてこの星を発見したとき「まるで暗闇に血を1滴落としたようだ」と表現しています。
この星はうさぎ座にあり、地球から1,360光年離れています。「ミラ型変光星」と呼ばれるタイプで、星自身が膨張・収縮を繰り返して約14か月の周期で明るさが変わる奇妙な星です。一方でこの星は誕生してから長い年月が経ち、温度が低い「赤色巨星」になっていますが(星の状態が変わっていくことを星の「進化」と呼びます)、その中でも炭素を豊富に含んでいるため「炭素星」としても知られています。
おもな星(恒星)は核融合をエネルギー源として光っていますが、Rレポリスのように進化の終盤で「死にゆく」星では、星の中心核に近いところでヘリウムの核融合により炭素が作られます。その一方で星の外層が星から流出していくことで、他の元素よりも炭素が豊富な状態が作られます。実際には、炭素原子どうしや他の原子と結合してCO、CH、CN、C2といった分子になっています。温度の低い星は赤い光または赤外線を放射しますが、その星が発するわずかな青い光をこれらの分子が強く吸収し、画像のような深く赤い光になっているのです。
さらにRレポリスはその炭素が豊富な大気を「恒星風」として流出しつつあり、近い将来は流れ出たガスが「惑星状星雲」として観測されるようになると考えられています。この画像が公開されたのは2018年の10月。ちょうど1年ほど前ですが、NASAではこの星の深い赤色を吸血鬼になぞらえて「ハッピー・ハロウィン!」とユーモアたっぷりに紹介しています。
関連:
太陽の様な恒星の最期。泡形か双極形か爆発形…多数ある惑星状星雲の姿
「エスキモー星雲」これが太陽の最期の姿かもしれない
Image Credit & Copyright: Martin Pugh
Source: NASA
文/北越康敬
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