誕生したばかりの星々を取り巻く木星80個分の「プレッツェル」
sorae.jp / 2019年10月7日 21時16分
太陽系内の惑星から超大質量ブラックホールまでさまざまな天体を観測してきた南米・チリの電波望遠鏡「アルマ望遠鏡」によって、新たな天体がキャッチされました。その姿は、まるでお菓子の「プレッツェル」そっくりです。
■生まれたばかりの恒星を取り巻く、複雑な形のループ構造 今回撮影されたのは、「へびつかい座」の方向およそ600光年先の暗黒星雲「Barnard 59」にある、生まれてからまだ10万~20万年という若い連星「[BHB2007] 11」です。Barnard 59は、その姿が喫煙具のパイプに似ていることから名付けられた「Pipe nebula(パイプ星雲)」と呼ばれる暗黒星雲の一部でもあります。プレッツェルのような姿をした不思議な構造は、中央で縦に並んで見えている連星を取り巻く塵などから成る巨大なループです。ループ全体の質量は木星およそ80個分とみられています。
ループ構造のなかにある2つの若い星は、どちらもガスと塵からなる円盤(星周円盤)に囲まれています。円盤の直径は太陽系の火星と木星の間にある小惑星帯と同じくらいの4~6天文単位(※)程度で、それぞれ木星ほどの質量を持つとされています。
また、連星を成す2つの星は28天文単位離れています。太陽から海王星までの距離がおよそ30天文単位ですから、ここに写る「プレッツェル」は太陽と太陽系の8つの惑星をまるごと取り囲んでしまうくらいに広がっていることになります。
なお、アルマ望遠鏡は電波(ミリ波)で天体を観測するため、画像の色は見やすいように着色されたものとなります。
(※…1天文単位は地球と太陽の間の距離に由来)
■将来、ここで地球のような惑星が誕生するかも?宇宙のスケールからすれば、[BHB2007] 11はまだ誕生したばかり。プレッツェル状のループ構造からは、2つの若い星をそれぞれ取り囲む円盤に向かって物質が流れ込み続けています。
10月4日付で「サイエンス」に掲載された論文では、ループ構造に含まれる大量の塵がそれぞれの星の周囲にある円盤に流れ込むことで、将来地球のような岩石質の系外惑星が形成される可能性があると推測しています。
Image Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Alves et al.
https://www.eso.org/public/news/eso1916/
文/松村武宏
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