自転速度が遅い太陽系外惑星では「スノーボールアース」状態が長続きしない?
sorae.jp / 2019年10月27日 21時0分
過去の地球では、地表のほとんどが赤道に至るまで雪や氷に覆われた時代が何度か訪れていたと考えられています。今回、「全球凍結」や「スノーボールアース」と呼ばれるこうした状態が太陽系外惑星でも起こり得るのか、その可能性をシミュレートした研究結果が報告されています。
■「潮汐固定」された系外惑星は凍ってもすぐに融けやすいアメリカ天文学会が10月23日付で紹介している今回の研究では、7つの系外惑星が見つかっている「TRAPPIST-1」のように、太陽よりも小さな赤色矮星(M型の恒星)の周囲を公転する系外惑星における全球凍結の可能性が検討されています。
赤色矮星を周回する系外惑星のなかには恒星のかなり近くを公転しているものが多く、こうした惑星では恒星の重力がもたらす潮汐力によって公転と自転の周期が同期する「潮汐固定」(潮汐ロック)の状態にあると考えられています。
潮汐固定されている惑星では1日と1年がほぼ同じ長さになるので、惑星の片側がいつも昼、反対側はいつも夜の状態になります。シカゴ大学のJade Checlair氏を中心とした研究チームは、こうした系外惑星の大気と海がどのように熱を伝え合うのかを詳しく調べました。
架空の「地球と同じ大きさで、赤色矮星を50日で公転する系外惑星」をモデルに、大規模な火山噴火や天体衝突などによって地表が寒冷化する状況を研究チームがシミュレートしたところ、惑星全体が凍りつく全球凍結の状態はあまり長続きしないことがわかりました。
地球のように自転のほうが公転よりも速い惑星では全体にまんべんなく恒星の光が届くので、直感的にはこちらのほうがすぐに温まりそうですが、潮汐固定された惑星では常に同じ場所が温められ続けるため、一時的に全球凍結の状態になっても昼の側から比較的すぐに融けていき、その熱が風や海流によって周囲にも運ばれていくようです。
■生命の進化にはマイナスの影響も?惑星の表面全体が凍りつくというひどく寒冷な環境が長続きしないことは、生命にとってはプラスに働くように思えますが、必ずしもそうとは言い切れません。
地球の全球凍結では、寒冷化によってそれまでに誕生した生物の多くが絶滅し、再び温暖な環境が戻ってきたときに別の生物が繁栄するという、進化を促進する側面があったと考えられています。
全球凍結が長期化しない系外惑星ではこうした淘汰が起こりにくく、仮に生命が誕生していたとしても、劇的な進化には至りにくい環境だと言えるのかもしれません。
関連:48光年先の「スーパーアース」は昼夜の温度差が1000度もあった
Image: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA
文/松村武宏
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