いまのところ原因不明。火星大気中の酸素量は予測以上に変動していた
sorae.jp / 2019年11月14日 21時20分
NASAの火星探査車「キュリオシティ」の観測データから、またも興味深い事実が明らかになりました。火星大気中の酸素の割合は季節ごとに増減しているとみられていましたが、その変化が予測を上回っていたことが明らかになったのです。
■毎年繰り返される酸素の大幅な増減![](https://sorae.info/wp-content/uploads/2019/11/8067_MSL-Curiosity-Murray-Buttes-selfie-pia20844-full2.jpg)
火星探査車「キュリオシティ」2016年10月撮影のセルフィー(Credit: NASA/JPL-Caltech/MSSS)
キュリオシティこと「マーズ・サイエンス・ラボラトリー(MSL)」は、2012年8月に火星の赤道に近い直径およそ150kmのゲール・クレーター(Gale crater)に降り立って以来、地球の暦では7年以上、火星の暦では3年以上の歳月を過ごしています。
火星では、冬期に極地で二酸化炭素が凍結し、夏期には昇華して大気に戻るという循環が起きています。火星大気の平均95%を占める二酸化炭素が増減することになるため、それ以外の成分も季節ごとに割合が変化します。
火星大気の成分比が変化する様子は、キュリオシティの分析装置によってすでに3年分(火星での)の観測データが蓄積されているのですが、今回明らかになった大気成分の観測結果は、研究者を驚かせました。窒素(火星大気の平均2.6%)やアルゴン(同1.9%)の割合は事前の予想通りに変化していたものの、酸素(同0.16%)の変化が予測を上回っていたのです(※)。
火星に春が訪れると、酸素の割合は夏に向けて最大で3割増加。夏が終わる頃には今度は急減して、秋には予想通りの値に落ち着くというパターンが毎年繰り返されていました。また、冬には予想を下回る割合まで減少する様子も観測されています。
二酸化炭素の増減から予想される変化を上回るということは、何らかの理由で火星大気中の酸素量が増減していることを意味します。この観測結果を目にしたときのことを、研究に参加したSushil Atreya氏は「気が遠くなる思いだった」と語っています。
※…各成分比はキュリオシティによるゲール・クレーターにおける測定値
■研究者は「非生物的な仕組み」とみるも原因は不明![](https://sorae.info/wp-content/uploads/2019/11/mars_seasonal_oxygen_gale_crater.jpg)
火星大気中の酸素の比率にみられる季節ごとの変化を示した図。点線は予測された値。春(緑)から夏(赤)にかけて予測より高く、冬(水色)は低い時期がある(Credit: Melissa Trainer/Dan Gallagher/NASA Goddard)
すでにキュリオシティの観測結果から、火星の夏にはメタンの量が6割増えることが判明しています。地球を参考にすれば、メタンは生命活動によっても生成されることがありますし、酸素については言うまでもありません。
ただし、メタンや酸素は生物とは無関係に増減することもあります。キュリオシティが取得したデータからは生物的か非生物的かを区別することはできませんが、研究チームは「今回判明した予想以上の季節変動は非生物的な仕組みが原因である」と捉えて、その理由を解明しようとしています。
しかし、有力な手がかりは今のところ見つかっていません。たとえば、酸素が増える原因として「大気中の水分子が分解されたから」と仮定すると、現在確認されている5倍以上の水が必要になってしまいます。おまけに大気中に追加される酸素の量は年ごとに異なるため、この違いも説明できなければなりません。
「原因の説明に苦労している」と語るMelissa Trainer氏(今回の研究を主導)は、チーム以外の研究者にも広く協力を求めています。
Image: Melissa Trainer/Dan Gallagher/NASA Goddard
Source: NASA
文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
火星ではほぼ毎日8mのクレーターができている 新たな天体衝突率の推計結果
sorae.jp / 2024年7月8日 20時55分
-
「ベンヌ」のサンプルの初期分析結果が発表 “予想外の発見” も報告
sorae.jp / 2024年7月5日 22時47分
-
約30年に及ぶ観測により、飛騨高山の森林生態系の炭素吸収に対する長期的・短期的な気候変動の影響を検出
共同通信PRワイヤー / 2024年6月26日 14時0分
-
人類が遠い惑星に住むための独創的なアイデア どうすれば人間が居住可能な世界にできるのか
東洋経済オンライン / 2024年6月24日 15時0分
-
月の裏側に着陸した中国の月探査機「嫦娥6号」をアメリカの月周回衛星「LRO」が撮影
sorae.jp / 2024年6月20日 9時17分
ランキング
-
1去勢された「宦官」は長寿集団だった…女性の寿命が男性よりもずっと長い理由を科学的に解説する
プレジデントオンライン / 2024年7月18日 8時15分
-
2結婚相談所は知っている「いつまで経っても、結婚できない男女の“意外な問題点”」
日刊SPA! / 2024年7月18日 15時50分
-
3iPhoneは「128GB」か「256GB」どちらを買うべきですか?【スマホのプロが解説】
オールアバウト / 2024年7月16日 21時25分
-
4ロシア軍の対空ミサイルを「間一髪で回避」ウ軍のドローンが“マトリックス避け”を披露 その後反撃
乗りものニュース / 2024年7月17日 11時42分
-
51日5分で二重アゴ&首のシワを解消!魔法の顔筋トレ「あごステップ」HOW TO
ハルメク365 / 2024年7月17日 22時50分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)