太陽系外縁天体クワオアーに大気はあるか? 「トモエゴゼン」がその謎に迫る

sorae.jp / 2019年11月28日 21時10分

地球から太陽までの距離の40倍以上も遠くにある太陽系外縁天体「クワオアー(Quaoar)」。地球から離れているために探査機もすぐには届かず、望遠鏡でも点にしか見えないほど小さな天体には大気があるのか。その謎に東京大学木曽観測所の観測装置「Tomo-e Gozen(トモエゴゼン、名称は巴御前に由来)」が迫りました。

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■クワオアーが恒星を隠す「掩蔽」を観測

太陽系外縁天体「クワオアー」(手前)の想像図(Credit: 有松亘/AONEKOYA)

2002年に発見されたクワオアーは、地球の10分の1ほどの大きさ(推定直径1100km)を持つとみられる小さな天体です。太陽からおよそ43天文単位(軌道長半径。1天文単位は地球から太陽までの距離に由来)離れた軌道を290年ほどかけて周回しています。

有松亘氏(京都大学附属天文台)ら国内の研究者によるチームは、今年の6月28日、クワオアーによる「掩蔽」を観測しました。掩蔽とは「ある天体が別の天体を隠す現象」のことで、この日はクワオアーが「へび座」の恒星を45秒余りのあいだ隠す様子が観測されました。

恒星がクワオアーによって隠されたときと、再び見えるようになったときの明るさの変化を詳しく調べた結果、クワオアーには大気が存在しないか、仮に存在したとしても非常に希薄であることが明らかになりました。

クワオアーによる掩蔽の様子を示した画像。掩蔽前(左)と掩蔽後(右)では中央に写っている恒星が、掩蔽中(中央)には見えなくなっていることがわかる(Credit: 東京大学木曽観測所)

過去の研究において、クワオアーの表面は水、アンモニア、メタンなどの氷に覆われていることが判明しています。その氷の一部は比較的最近になって形成された新しいものとみられており、氷の火山や大気が存在する可能性が指摘されていました。

しかし、今回の観測結果は大気がほぼ存在しないことを示唆しており、クワオアーに関する新たな知見となりました。40天文単位以上離れた小さな天体でも、掩蔽の様子を詳しく観測することでその性質に迫れるという好例です。

■大気があれば明るさがゆっくり変化するはず

観測データとシミュレーション結果の比較図。恒星がクワオアーに隠されたとき(青)と再び見えるようになったとき(赤)の明るさの変化は、クワオアーに16ナノバールの大気が存在すると仮定した場合のシミュレーション結果(点線)に近い(Credit: 東京大学木曽観測所)

大気を持つ天体が掩蔽を起こす場合、恒星の光が大気によって屈折されるため、明るさはゆっくりと変化します。いっぽう、大気を持たない天体では屈折が起きないので、恒星の明るさはすぐに変化します。

もしもクワオアーに大気があれば、掩蔽された恒星の光はじわりと暗くなったり明るくなったりするはずですが、今回の観測ではそのような変化はみられませんでした。こうした実際の明るさの変化を大気のシミュレーションと比較した結果、16ナノバール(地球の大気圧のおよそ60万分の1)以上の大気は存在しないことがわかったのです。

掩蔽の様子を動画で精密に記録できるトモエゴゼンは、今回のような研究においても有力な観測手段となるようです。研究チームの代表を務める有松氏は「今後もトモエゴゼンを用いた掩蔽動画観測を実施することで、謎の多い太陽系外縁天体の真の姿に急速に迫ることが期待されます」とコメントを寄せています。

 

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Image: 有松亘/AONEKOYA、東京大学木曽観測所
http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/NEWS/quaoar2019/quaoar2019.html
文/松村武宏

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