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世界初「軌道上からデブリを取り除くミッション」が2025年に実施予定

sorae.jp / 2019年12月24日 21時20分

地球を周回する軌道には宇宙ステーションや人工衛星に限らず、大小さまざまなスペースデブリ(宇宙ゴミ)が無数に存在しています。人類の生活を脅かしかねないスペースデブリを取り除く世界初のミッションが、欧州宇宙機関(ESA)から発表されました。

■デブリをつかまえて速度を落とし、大気圏に突入させる

デブリをキャッチした「ClearSpace-1」の想像図(Credit: ClearSpace)

1957年10月に旧ソ連が打ち上げたスプートニク1号以降、人類は数多くの人工衛星や宇宙船などを打ち上げ続けてきました。その結果、地球の周りには活動中の人工衛星だけでなく、寿命を迎えて使われなくなった衛星や、衛星などを打ち上げたロケットの一部、それに衛星やロケットの破片などが数多く周回するようになりました。

今回ESAから発表された「ClearSpace-1」は、スイスのスタートアップ企業「ClearSpace(クリアスペース)」による世界初のスペースデブリ除去ミッションです。このミッションではロボットアームを備えた衛星が過去の打ち上げで生じたデブリをキャッチし、そのまま大気圏に再突入することで軌道上からデブリを排除します。

2025年の実施が予定されているClearSpace-1では、2013年に打ち上げられた「ヴェガ」ロケットの一部である衛星を搭載するためのアダプター(Vespa:Vega Secondary Payload Adapter)をターゲットとしています。このアダプターは地球観測衛星「PROBA-V」をはじめ合計3基の衛星を分離した後も高度600km~800kmの軌道に留まるデブリとなっており、単純な形状や構造の強さなどを考慮した結果、最初のターゲットに選ばれました。

■なぜスペースデブリを取り除かなければならないのか?

ISSの「キューポラ」の窓にできた直径7mmほどの欠け。塗料片もしくは数マイクロメートル程度の金属片によって生じたとみられる(Credit: ESA/NASA)

スペースデブリも人工衛星や宇宙ステーションなどと変わらぬ速度(秒速7~8km)で移動しており、ネジのように小さく軽い物体でも大きな運動エネルギーを持っています。2016年には、国際宇宙ステーション(ISS)に設置されている「キューポラ」の窓の表面が直径7mmほど欠けているのを宇宙飛行士が撮影していますが、これは小さな塗料の破片か、わずか数マイクロメートルほどの金属片が衝突したことで生じたとみられています。

ESAによると、直径が1cmを超えるようなスペースデブリは、宇宙ステーションや人工衛星などに深刻なダメージを与えるとされています。何らかの原因で生じたデブリによって破壊された人工衛星が無数のデブリとなり、さらに多くの衛星や宇宙船を次々に破壊していく連鎖反応の恐ろしさは、映画「ゼロ・グラビティ」やコミック/アニメーションの「プラネテス」といったエンターテイメント作品でも描かれてきました。

デブリがもたらす破壊の連鎖はISSで活躍する宇宙飛行士をはじめ、人工衛星に依存する現代社会全体をも脅かしかねない脅威であるため、デブリの抑止や除去に向けた取り組みが国内外で進められています。たとえばJAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙ステーション補給機「こうのとり(HTV)」の打ち上げに使われている「H-IIB」ロケットでは、こうのとりを分離したあとの第2段がデブリ化するのを防ぐため、第2段を大気圏に再突入させる制御落下が実施されています。

ただ、すべてのロケットでこうした制御落下が実施されているわけではありませんし、軌道を離脱する能力を持たない衛星やアダプターなどを取り除くには、ClearSpace-1のように別の衛星を使って速度を落とすなどの作業が必要となります。

ClearSpace-1のミッションを実施するクリアスペースによると、現在地球の周囲には直径10cm以上の人工物が3万4000以上も周回しています。地球周辺の宇宙空間を安全に活用するための一歩として、ミッションの成功が期待されます。

 

Image Credit: ESA
Source: ESA / ClearSpace
文/松村武宏

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