死にゆく星が描き出す、宇宙にはばたくバタフライ
sorae.jp / 2019年12月31日 17時44分
赤と白で彩られた羽をもつ蝶のようにも見えるこの天体は、さそり座の方向およそ4000光年先にある惑星状星雲「NGC 6302」。別名「バタフライ星雲」とも呼ばれています。超新星爆発を起こすには質量が足りない恒星によって形成される惑星状星雲は、数十億年後の太陽系の姿を予想させる天体でもあります。
羽のように見える構造は、中心にある星が赤色巨星になったあと、星の外層を構成していたガスを放出したことによって形成されました。ガスの放出は短期間で急速に起きたと考えられており、現在観測されているバタフライ星雲はガスの放出が始まってから2250年ほど経った姿だとみられています。
中心の恒星は、ガスを失って白色矮星へと移り変わるにつれて表面温度が高くなり、恒星風の速度もより高速になります。そのため、先に放出されたガスに後から放出された高速のガスが衝突することで、羽の形や模様はより複雑なものへと変化していきます。
星雲の色は元素の分布に応じて擬似的に着色されたもので、たとえば赤は低温のガスに含まれる窒素の存在を示しています。白は硫黄の存在を示すとともに、高速のガスが過去に放出された低速のガスに衝突した衝撃波面を描き出しています。
バタフライ星雲の中心には、太陽の6割ほどの重さを持つ星の存在が確認されています。この星はもともと太陽の約5倍の質量を持った恒星でしたが、やがて太陽の1000倍ほどのサイズまで膨れ上がった赤色巨星になり、ガスを放出してバタフライ星雲を形成したと考えられています。この中心星は白色矮星へと進化する最終段階にあるとみられており、推定される表面温度は摂氏およそ22万度と高温ですが、毎年1%の割合で暗くなっている可能性が2009年に発表された研究によって示されています。
バタフライ星雲は、イギリスのアマチュア天文家サー・パトリック・ムーア氏によって1980年代にまとめられたアマチュア天文家向けの天体カタログ「Caldwell Catalog(カルドウェルカタログ、またはコールドウェルカタログ)」に「Caldwell 69」として登録されています。画像は「ハッブル」宇宙望遠鏡の広視野カメラ3(WFC3)によって撮影されました。
Image Credit: NASA/ESA
Source: NASA
文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
その間隔わずか約300光年 近接した超大質量ブラックホールのペアをハッブル宇宙望遠鏡が観測
sorae.jp / 2024年9月20日 21時0分
-
星々を生み出す幻想的な星形成領域「NGC 1333」 ウェッブ宇宙望遠鏡が観測
sorae.jp / 2024年9月2日 20時56分
-
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した小マゼラン雲の散開星団「NGC 346」
sorae.jp / 2024年8月30日 21時56分
-
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「さんかく座銀河」の中心付近
sorae.jp / 2024年8月26日 20時55分
-
放出したのは超新星爆発か連星ブラックホールか? 市民科学プロジェクトで見つかった400光年先の高速度星
sorae.jp / 2024年8月23日 20時30分
ランキング
-
1ペーパードライバーの “迷惑運転行為”に、走行距離30万km超のゴールド免許所持者が怒りの告発
日刊SPA! / 2024年9月15日 15時52分
-
2ダウンタウン浜田雅功の“くちびる寿司”を食べてみた ユニークな見た目に笑ってしまう
オトナンサー / 2024年9月20日 23時10分
-
3東京都、018サポートで新たに134人への重複支給発覚 マイナ申請の照合設定に誤り
産経ニュース / 2024年9月20日 19時47分
-
4超一流パティシエも"満場一致"の大絶賛。「完璧」「これは本物」ローソンで食べるべき絶品スイーツとは。
東京バーゲンマニア / 2024年9月17日 18時46分
-
5メルカリで「マイナス評価」が1つでもあったら売れなくなる? 購入を敬遠される可能性も……
オールアバウト / 2024年9月20日 20時40分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください