複雑な構造を持つ「かに星雲」を3D映像化、NASAが公開
sorae.jp / 2020年1月7日 21時20分
おうし座の方向にある超新星残骸「かに星雲」は、可視光線(人の目に見える光)、赤外線、X線といったさまざまな電磁波でよく観測されている天体です。今回、「ハッブル」宇宙望遠鏡をはじめとしたさまざまな手段によって得られた観測データを組み合わせることで、かに星雲の複雑な立体構造が3D映像化されました。
■多波長の観測データからパルサーを取り囲む多重構造を再現1054年におうし座で観測された超新星の残骸とされるかに星雲は、地球からおよそ6500光年離れたところにあります。中心には爆発で誕生したパルサー(かにパルサー)が存在しており、かに星雲から届く超高エネルギーガンマ線などのエネルギー源になっていると考えられています。
今回、ハッブル宇宙望遠鏡を運用する宇宙望遠鏡科学研究所(STScI)によって、かに星雲の構造を視覚的に理解しやすい3D映像が制作されました。映像はハッブル宇宙望遠鏡の公式YouTubeチャンネルにて公開されています(英語の解説付き)。
映像化にはハッブル宇宙望遠鏡による可視光線(visible、黄)の画像をはじめ、「スピッツァー」宇宙望遠鏡による赤外線(infrared、赤)、およびX線観測衛星「チャンドラ」によって得られたX線(x-ray、青)の観測データが用いられています。赤外線やX線は人の目には見えないため、3D映像の色は擬似的に着色されたものとなります。
かに星雲をいろいろな波長で観測すると、星雲が持つ多重構造の各部分が見えてきます。ハッブルはイオン化した酸素が放つ光を捉えることで、かに星雲の最も外側を構成するでこぼこした殻のような構造を写し出しました。赤外線を観測するスピッツァーはその内側にある、磁力線に沿ってパルサーを取り囲む荷電粒子などの構造を描き出しています。
星雲の最も内側にあるパルサーとその周囲を取り巻く円盤、そして円盤の中心から噴出している波打つジェットは、X線を用いるチャンドラによって捉えられました。前述の動画では立体的に再現されたこれらの構造を内側から順に重ね合わせつつ、3D映像であることを活かして回転させながら示しています(動画の中盤、1分43秒あたりから)。
映像の制作を率いたFrank Summers氏(STScI)が「2次元では立体的な特徴を理解しにくい」と語るかに星雲。複雑な内部構造を持つ天体であることが、今回制作された映像では見事に再現されています。
Image Credit: NASA, ESA and J. DePasquale (STScI) and R. Hurt (Caltech/IPAC)
Source: NASA
文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
初期宇宙の巨大なブラックホールは予想以上に多かった? ハッブルの観測データを分析
sorae.jp / 2024年9月21日 21時41分
-
その間隔わずか約300光年 近接した超大質量ブラックホールのペアをハッブル宇宙望遠鏡が観測
sorae.jp / 2024年9月20日 21時0分
-
JAXA、これまで困難だった「かに星雲」の硬X線画像を高解像度化に成功
マイナビニュース / 2024年9月10日 19時52分
-
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した小マゼラン雲の散開星団「NGC 346」
sorae.jp / 2024年8月30日 21時56分
-
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した「さんかく座銀河」の中心付近
sorae.jp / 2024年8月26日 20時55分
ランキング
-
1「高くても低くてもダメ」血糖値の正しい整え方 人格破綻まで招きかねない「低血糖」の恐怖
東洋経済オンライン / 2024年9月23日 17時0分
-
2どんな時にスマホを買い替える? 3位スペック不足を感じた時、2位故障した時…1位は?
まいどなニュース / 2024年9月23日 16時0分
-
3健康診断の数値が改善する7つの習慣とは…いわき市で糖尿病の専門医師が解説・福島県
福島中央テレビニュース / 2024年9月23日 14時31分
-
4痛くて腕が上がらない…【医師監修】五十肩という思い込みには要注意!痛みの原因と病状セルフチェック
ハルメク365 / 2024年9月23日 11時50分
-
5コーヒーよりもはるかに効果的…88歳医師が「長生きしたいならこれを飲むべき」と強く勧める"飲み物"
プレジデントオンライン / 2024年9月23日 15時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください