氷と砂塵のコントラスト。ESAの探査機が撮影した火星の北極域
sorae.jp / 2020年1月15日 17時30分
2020年10月に地球へ最接近する火星には、今年、NASAやESA(欧州宇宙機関)などから探査機や探査車(ローバー)が打ち上げられる予定となっています。今月アルゼンチンで開催される国際会議に合わせて、火星の北極域を撮影した高解像度画像がESAから公開されました。
■水の氷におおわれた火星の夏の極冠撮影したのは、2003年のクリスマスに火星の周回軌道へと入ったESAの火星探査機「マーズ・エクスプレス」。画像はマーズ・エクスプレスに搭載されている高解像度ステレオカメラ(HRSC)によって2006年の火星の夏に撮影された北緯85度付近の様子で、極冠の辺縁部に広がる景色が精細に写し出されています。
火星の極域は、冬のあいだ気温が摂氏マイナス125度以下まで低下します。極冠の表面は厚さ数メートルに及ぶ二酸化炭素の氷に覆われるとともに、二酸化炭素の雲が広がることから地上の様子は見えにくくなります。
いっぽう、夏になると極冠を覆っていた二酸化炭素が昇華して大気中に戻っていくため、その下に隠されていた水の氷があらわになります。マーズ・エクスプレスが撮影したのは、そんな火星の夏における極冠の姿です。
極冠では自転にともなうコリオリの力を受けてらせん状に吹き下ろされる滑降風(カタバティック風、カタバ風)によって、渦巻くような谷が何本も形成されています。そんな谷の斜面を見ると、長い年月をかけて幾重にも重なった氷と塵の堆積層が、地層のようなパターンを描き出しているのがわかります。地球の氷床と同じように、この層には過去数百万年に渡る火星の気候変化の歴史が刻み込まれていると考えられています。
また、画像の左側には、局地的な嵐によって生じた幾筋もの雲が伸びている様子が写し出されています。こうした嵐がもたらす強い風によって斜面が侵食されることで、谷の風景は少しずつ変化していくとみられています。
Image Credit: ESA/DLR/FU Berlin
Source: ESA
文/松村武宏
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