ケプラー宇宙望遠鏡、1600倍も明るくなった「矮新星」を偶然発見していた
sorae.jp / 2020年1月26日 21時20分
超新星ほど明るく輝くことはないものの、ある日突然明るさを増す天体のひとつに「矮新星」と呼ばれるものがあります。今回、2018年に運用を終えたNASAの宇宙望遠鏡「ケプラー」が、未発見の矮新星を捉えていたことが明らかになりました。
■地球からは観測できないタイミングで矮新星を発見![](https://sorae.info/wp-content/uploads/2020/01/stsci-j-p2020a-dwarfnovasystem-3840x2160-1.jpg)
ケプラー宇宙望遠鏡によって矮新星として観測された連星の想像図。褐色矮星(右手前)から奪われたガスが白色矮星(左奥)の周囲で降着円盤を形成している(Credit: NASA and L. Hustak (STScI))
太陽系外惑星の発見を主な目的として2009年に打ち上げられたケプラーですが、同じ方向を継続的に観測する方法を採用していたことから、宇宙のどこで出現するかわからない超新星爆発のような突然出現する天体を捉えることにも成功しています。
今回、Ryan Ridden-Harper氏(宇宙望遠鏡科学研究所:STScI、アメリカ)らの研究チームは、ケプラー宇宙望遠鏡が2016年9月から12月にかけて集めた観測データのなかから、「や座WZ型」と呼ばれるタイプの矮新星が見つかったことを発表しました。
矮新星とは、白色矮星と伴星がペアを組む連星において、「白色矮星を取り囲む降着円盤の状態が変化する」ことで突然明るさを増すと考えられている現象です。ケプラーのデータからは、この矮新星が1日足らずのうちに1600倍の明るさに達し、その後ゆっくりと暗くなっていく様子が確認されたとしています。
白色矮星と伴星がペアを組む連星では、超新星爆発の一種である「Ia型超新星」や繰り返し出現することもある増光現象の「新星」も発生しますが、Ia型超新星や新星は「伴星から白色矮星に移った水素ガスが核融合反応を起こす」ことが引き金となります。そのため、降着円盤の状態の変化によって発生するとみられる矮新星はこれらの爆発現象とはメカニズムが異なり、超新星や新星ほどの明るさにはならないという特徴があります。
なお、この矮新星は、地球から見るのが難しいタイミングで観測されました。当時ケプラーはいて座からさそり座にかけての銀河中心方向を観測していたのですが、地球から見ると9月から12月は太陽がその方向に位置するため、観測することができません。いっぽう、ケプラーは地球から徐々に離れていく軌道に乗せられたために、地球からは見えないタイミングでもこの方向を観測することが可能でした。
■白色矮星と褐色矮星の連星で起きた増光現象今回見つかった矮新星は、白色矮星と、その1/10程度の質量を持つ褐色矮星から成る連星で起きたとみられています。2つの星はおよそ40万km(地球から月までの距離とほぼ同じ)しか離れておらず、一周するのに約1時間半(83分)しか掛かりません。
至近距離にある白色矮星の重力によって褐色矮星からはガスが流出していて、白色矮星の周囲に降着円盤を形成していると考えられています。この降着円盤が成長して褐色矮星の公転周期と共鳴(軌道共鳴)するようになると熱的な不安定さが増して、降着円盤の温度が上昇します。普段の温度は太陽の表面と同じくらいかそれよりも低い摂氏2700~5300度、ピーク時の降着円盤の温度は摂氏9700~1万1700度にまで上昇するとみられています。
また、ケプラーの観測データからは、最初に明るさがゆっくりと増していき、その後に急激な増光が起きた様子が確認されました。急激な増光は理論でも予測されていますが、これに先立つゆるやかな増光の原因は不明のままです。研究チームを率いたRidden-Harper氏は「降着円盤はさまざまな天体に存在しているため、正しく理解することが重要だ」と語っており、さらなる研究の必要性を示しています。
Image Credit: NASA and L. Hustak (STScI)
Source: NASA / オーストラリア国立大学
文/松村武宏
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