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地上からの撮影なのにハッブル並みに鮮明。「補償光学」を用いた海王星画像

sorae.jp / 2020年2月14日 21時23分

■地上の望遠鏡による観測を支える強力なツール「補償光学」

ヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡(VLT)によって撮影された海王星(Credit: ESO/P. Weilbacher (AIP))

冥王星の準惑星への分類変更により、2006年から太陽系最外縁の惑星となった海王星。これまでに訪れたことがあるのは1989年8月に接近観測を行ったNASAの無人探査機「ボイジャー2号」が唯一で、今のところは地上や宇宙の望遠鏡から観測することしかできません。

地球のおよそ4倍の直径があるとはいえ、太陽から30天文単位(太陽から地球までの距離の30倍)も離れたところを周回する海王星を詳細に観測するには、高度な技術が必要です。ヨーロッパ南天天文台(ESO)のパラナル天文台にある「超大型望遠鏡(VLT)」では、地球の大気によるゆらぎの影響を打ち消す「補償光学(Adaptive Optics)」と呼ばれる技術を利用することで、宇宙から天体を観測する「ハッブル」宇宙望遠鏡にも匹敵する、海王星の鮮明な画像を撮影することに成功しています。

超大型望遠鏡(VLT)において補償光学用のレーザー光が照射されている様子(Credit: ESO/F. Kamphues)

補償光学では、明るい天体などを目安に大気のゆらぎを測定し、望遠鏡の鏡面をリアルタイムに変形させることで、観測中の天体を鮮明に捉えられるようにします。VLTの場合、地球の上層大気にあるナトリウム層に向けて4本のレーザー光を照射して「レーザーガイド星」と呼ばれる人工の「星」を作り出し、これを目安にしてゆらぎの影響を打ち消しています。同様の手法は国立天文台ハワイ観測所の「すばる望遠鏡」をはじめ、さまざまな望遠鏡で利用されています。

なお、NASAが現在検討を進めているディスカバリープログラムの次期候補のひとつに、海王星最大の衛星「トリトン」の観測を目的とした「TRIDENT(トライデント)」があります。トライデントもボイジャーと同じように一回限りの接近観測を行う無人探査機ですが、もしもこの計画が採用されれば、海王星とその衛星の姿が再び近距離から撮影される日が来るかもしれません。

補償光学の効果を示した比較画像。左は補償光学あり、右はなし。左右とも超大型望遠鏡(VLT)にて撮影(Credit: ESO/P. Weilbacher (AIP))

 

Image Credit: ESO
Source: ESO
文/松村武宏

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