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赤外線で探る。タランチュラ星雲に漂う臭い

sorae.jp / 2020年2月19日 21時20分


この画像はNASAの「スピッツァー宇宙望遠鏡」が撮影した「タランチュラ星雲」という天体です。スピッツァーは赤外線を観測するため、画像ではその強さに応じて擬似カラーで着色してあります。

赤紫のような色(マゼンタ)の部分には「ダスト」と呼ばれるちりのような微粒子が存在し、そこから赤外線が放射されています。このダストの中に、「多環芳香族炭化水素」 (Polycyclic Aromatic Hydrocarbons = PAHs)と呼ばれる分子が存在していることが知られています。難しい名前ですが、地球では石炭や木、油の燃えかすなどに存在する物質です。マゼンタの部分は赤と青を組み合わせて表現されており、赤は波長8マイクロメートルの赤外線、青は波長3.6マイクロメートルの赤外線を表しています。これらの赤外線の観測により、タランチュラ星雲に存在する物質を推定するのです。

一方、画像全体に点々と散らばる光は星で、その多くは青と緑(4.5マイクロメートルの赤外線で、高温ガスが発しています)の組み合わせになっています。白っぽいところはこれら3つの波長がすべて含まれている領域です。

多環芳香族炭化水素は複数の分子の総称で、「ベンゼン環」という六角形のような分子構造が複数つながった形をしています。性質としてはあまり良い臭いのしないもの、焼いた食品の臭いとして感じられるものなど様々です。宇宙空間は真空で何もないようなイメージがありますが、こうした複雑な分子が存在することが20年以上前から確認・研究されてきました。日本では赤外線観測衛星「あかり」が2006年から2011年にかけて活躍しています。

スピッツァーは2020年1月30日に運用を終了したところですが、タランチュラ星雲はスピッツァー打ち上げ当初から何度も観測が行われ、赤外線で見える新しい姿が明らかにされてきています。

 

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Image: NASA/JPL-Caltech
Source: NASA
文/北越康敬

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