摂氏13万度の中心星に照らし出されたコンパス座の惑星状星雲
sorae.jp / 2020年2月25日 23時23分
■今日の天体紹介:惑星状星雲「CVMP 1」
こちらの画像は、南天の「コンパス座」の方向およそ6500光年先にある惑星状星雲「CVMP 1」です。高温の中心星に照らし出されたガスによって描き出された形が目出し帽(スキーマスク)を連想させることから、「Mask nebula(マスク星雲)」と呼ばれることもあります。
惑星状星雲は、超新星爆発を起こすに至らない「太陽と同じくらい~太陽の8倍まで」の質量を持つ恒星が、赤色巨星から白色矮星へと移行する過程で大量のガスを放出した名残とみられています。放出されたガスが中心星の放つ紫外線によって電離され輝いたものが、惑星状星雲として観測される天体の正体です。
CVMP 1の場合、ガスの輝きから推定された中心星の表面温度は最低でも摂氏13万度。太陽の表面温度(摂氏およそ6000度)と比べて、かなりの高温です。とはいえ、白色矮星になった星は核融合をやめてしまうので、CVMP 1の中心星も数千年の時間をかけて徐々に冷たくなっていきます。
中心星が冷えてしまえばガスを電離させる紫外線も途絶えるので、惑星状星雲は輝きを失ってしまいます。ガスそのものも星間空間に向かって拡散し続けているので、惑星状星雲として観測できるのは1万年ほどの期間に限られます。誕生から138億年ほどが経ったとされる宇宙の歴史において、惑星状星雲はわずかな期間しか存在できない天体なのです。
また、惑星状星雲はさまざまな姿をしています。これは、ガスを放出した恒星の特徴(単独の星か、連星か、惑星があるか、赤色巨星のときにどのような自転をしていたか、など)がそれぞれ異なるためです。CVMP 1は砂時計やひょうたんのような形をしていますが、「NGC 7293(らせん星雲)」は目のような形、「NGC 6302(バタフライ星雲)」は蝶のような形、「Abell 33」は整った円形をしています。バリエーション豊かな姿で私たちの目を楽しませてくれるのも、惑星状星雲の特徴です。
この画像は、国際協力プロジェクトのジェミニ天文台が運営する2つの望遠鏡のうち、チリのセロ・パチョンに建設された「ジェミニ南望遠鏡」によって撮影されました。
関連:偶然が生み出したダイヤモンドリング。惑星状星雲と恒星のコラボ
Image Credit: The international Gemini Observatory/NSF’s National Optical-Infrared Astronomy Research Laboratory/AURA
Source: ジェミニ天文台
文/松村武宏
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