人工衛星をテストする「トゲトゲの部屋」が神秘的で美しい
sorae.jp / 2020年3月6日 11時0分
人工衛星は天文学だけではなく気象観測やGPSなど私たちの生活にも重要な役割を果たしていますが、打ち上げまでには様々な試験が行われます。そうした試験の中に、人工衛星の電気・電子部品が正しく動作することを確認するものがあります。人工衛星が電波や電気的なノイズを受けても問題ないか、また人工衛星内の複数の装置が互いに影響しないかなどをテストするものです。このような試験では、周囲からの電波・雑音があったり人工衛星自身が出す電波などが壁に反射したりすると解析が難しくなるため、それらを排除できる特殊な環境を用意する必要があります。
上の画像はESA(欧州宇宙機関)のテストセンターであるESTEC(欧州宇宙技術研究センター)が持つテスト環境「マクスウェル・テスト・チャンバー」で、オランダのノールトウェイクにあります。高さは9メートルほどもあり、内側はとげのようなものがびっしりと並んでいるのがわかります。これらは吸収材で、電気的・磁気的な信号や音を反射させないためのものです。一方で外部からの電気的・磁気的な影響を受けないようにできています(このような入れ物・空間を「ファラデー・ケージ」または「ファラデーのかご」と呼び、自動車の中にいると落雷の影響を受けないことと似ています)。このテスト・チャンバーに人工衛星を入れることで、人工衛星から発せられるものは周囲の壁に吸収され、あたかも無限の宇宙空間にいるような状況を作り出しているのです。
ここで行われる各種のテストはコンピューター制御により自動化されており、技術者たちの負担が軽くなるように設計されています。なお、名称の先頭にある「マクスウェル」はイギリスの物理学者「ジェームズ・クラーク・マクスウェル」から付けたものです。マクスウェルは電気・磁気に関する学問(電磁気学)に大きく貢献した人物で、私たちの現代の生活もマクスウェルたち物理学者の研究がなくては成り立っていないでしょう。マクスウェルは19世紀の学者ですが、現代のテスト・チャンバーに名前を付けられることからもその影響の大きさをうかがい知ることができます。
Image: ESA/Guus Schoonewille
Source: ESA
文/北越康敬
この記事に関連するニュース
-
これも銀河 ハッブル宇宙望遠鏡が撮影した“りょうけん座”の「NGC 5238」
sorae.jp / 2024年7月15日 20時19分
-
宇宙ゴミを出さない人工衛星を作る時が来た ESAが民間3社と衛星バス開発で契約締結
sorae.jp / 2024年7月15日 16時56分
-
リュードベリ原子センサーを搭載した観測衛星が切り開くリモートセンシング 「デジタル放送衛星」の活用でコストダウン
sorae.jp / 2024年7月11日 11時53分
-
被害額は約300兆円予想…!? すでに地球で発生している「太陽フレア」問題を無視してはいけない“納得の理由”
文春オンライン / 2024年7月10日 11時0分
-
日欧共同の地球観測衛星「EarthCARE」雲プロファイリングレーダーの初観測画像が公開
sorae.jp / 2024年7月1日 8時34分
ランキング
-
1ドラマ「西園寺さん」ヒットの予感しかない3理由 「逃げ恥」「家政夫ナギサさん」に続く良作となるか
東洋経済オンライン / 2024年7月16日 20時0分
-
2なぜ?「N-BOX」新型登場でも10%以上の販売減 好敵「スペーシア」と異なる商品力の改め方
東洋経済オンライン / 2024年7月17日 9時30分
-
3丁寧な言葉遣いで一見おとなしい人ほど陰湿攻撃がエグい…「目に見えない攻撃」を繰り出す人「6パターン」
プレジデントオンライン / 2024年7月16日 15時15分
-
4月々のスマホ代を「高いと感じる」…「2000円もすることに驚いた」「安いプランなのに高い」格安プランに乗り換える?
まいどなニュース / 2024年7月16日 19時45分
-
5「これは奇跡...」破格の1人前"550円"寿司ランチ。もうこれ毎日通いたい美味しさ...。《編集部レポ》
東京バーゲンマニア / 2024年7月16日 7時2分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)