土星の衛星タイタンは何故1つだけ巨大?誕生シミュレーションで謎を解く
sorae.jp / 2020年3月11日 21時37分
現在全部で82個が知られている土星の衛星。そのなかでも最大の「タイタン」は、他の衛星よりもかなり大きな存在です。今回、ガス惑星においてタイタンのような「1つだけ大きな衛星」がどのようにして誕生したのか、その謎に迫った研究成果が発表されました。
■誕生した衛星が惑星に引き込まれなくなる「安全地帯」が存在していた?窒素を主成分とした濃密な大気を持つタイタンは土星の衛星のなかでも際立って大きな衛星で、2番目に大きな「レア」に対しておよそ50倍もの質量があります。今回、藤井悠里氏(名古屋大学)と荻原正博氏(国立天文台)はタイタン誕生の謎を解明すべく、誕生したばかりのガス惑星を取り囲むガスや塵の円盤(周惑星円盤)の精密なシミュレーションを行いました。
ガス惑星の初期の姿に関する過去の研究では、誕生したばかりのガス惑星を取り囲む周惑星円盤のなかで、木星のガリレオ衛星(※)ように「複数の大きな衛星」が誕生する可能性は示されてきたものの、タイタンのように1つだけ大きな衛星がどのようにして誕生したのか、その理由は謎のままでした。
※…木星の衛星「イオ」「エウロパ」「ガニメデ」「カリスト」のこと。
周惑星円盤の詳細な温度分布を反映したシミュレーションの結果、ガス惑星からその直径にして10倍~50倍ほど離れたところにガスの温度差によって生じた「安全地帯」のような場所があり、ここに入り込んだ衛星は円盤内のガスの働きによってガス惑星から遠ざかるような力を受け、円盤が消え去るまで存続し続けられる可能性が示されました。
いっぽう、この安全地帯に入らなかった衛星はガスの働きにより周回する速度が遅くなることで少しずつ惑星に近づいていき、最終的にはガス惑星に飲み込まれてしまいます。今回の研究成果は、土星におけるタイタンのような衛星がガス惑星の周囲に誕生し得ることを初めて示したものとなります。
藤井氏と荻原氏は、この結果をもとにタイタンの起源に関する研究が進展することに期待を寄せるとともに、太陽系外惑星の衛星が数多く見つかるようになれば、今回のシミュレーション結果についての議論も活発になるだろうとコメントしています。
Image Credit: 名古屋大学
Source: 国立天文台
文/松村武宏
この記事に関連するニュース
-
小惑星Bennuのサンプルから生命に関連した多様な有機化合物を検出 NASA探査機がサンプル採取
sorae.jp / 2025年1月31日 10時31分
-
太陽系は散りゆく巨大な星のかたわらで誕生した可能性 隕石の分析結果が示唆
sorae.jp / 2025年1月27日 21時15分
-
国立天文台の新天文学用スパコン「アテルイIII」始動! “理論の望遠鏡”で何が見える?
マイナビニュース / 2025年1月17日 19時57分
-
国立天文台、従来の説を覆す新タイプの大気を持つスーパーアースを確認
マイナビニュース / 2025年1月16日 17時40分
-
天文学、宇宙物理学においてスーパーコンピューターはどのように貢献してきたか?
sorae.jp / 2025年1月6日 11時4分
ランキング
-
1「走行中にドアをパカパカ」原付バイクを“あおり運転”した高級車が迎えた末路
日刊SPA! / 2025年1月31日 8時53分
-
2「お店からの評価はガタ落ち」20代のスナックママが伝えたい、“夜のお店”で「値切り交渉」をするべきではない3つの理由
日刊SPA! / 2025年1月31日 15時52分
-
3TKO木下、10年前のホテル連れ込みを謝罪も、“強制連行”は否定。青木歌音「内容があまりにも違いすぎ」と反論
オールアバウト / 2025年1月31日 12時25分
-
4親戚の結婚式で夫が放った“ありえない一言”に場が騒然「何も言うなとあれほど…」
女子SPA! / 2025年1月31日 8時47分
-
5自宅の防災セットに「ロングスカート」入れて! 警視庁が勧める理由とは?
オトナンサー / 2025年1月31日 16時10分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください